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ソーシャルマーケティングは「戦略」ではなく「姿勢」である -- 丸美屋「がんばれ!!おかわりラボ」が生み出した世界観とは

japan.internet.com 編集部
2011年8月30日 / 10:00
 
 
食品メーカーの丸美屋は8月2日、同社のロングセラー商品「麻婆豆腐の素」の発売40周年を記念して、Twitter を活用したソーシャルマーケティング企画「がんばれ!!おかわりラボ」を開始した。マーケティング施策に Twitter を取り入れるケースは様々な企業のブランドコミュニケーションやセールスプロモーションで見られるが、同社が考えた「Twitter の活かし方」そして「ソーシャルマーケティングの目的」とはどのようなものなのだろうか。丸美屋食品工業株式会社 広報宣伝室の古山氏にお話を伺った。
丸美屋食品工業株式会社 広報宣伝室 古山氏
丸美屋食品工業株式会社 広報宣伝室 古山氏

● 親しみやすいコンテンツで「元気な家族の食卓」を生活者と共に考える

「がんばれ!!おかわりラボ」とは、マーボー所長、おかわり研究員、マボンナ研究員とアシスタントのレンゲ君の4人のキャラクターが登場する架空の研究所(ラボ)で、4人のキャラクターたちは、生活者の声を元に「家族の食卓を元気にする」という目標のため日々研究をしているという設定だ。キャラクターたちはそれぞれ Twitter アカウントを持っており、思い思いの"ラボの日常"をツイートしているのが特長となっている。また、生活者300名を対象に「家族の食卓」をテーマにしたモニター調査を行っており、その結果も随時公開しているほか、最近ではモニターを集めた「おかわり座談会」というイベントも開催して、その模様も近日公開予定だという。
ユニークなキャラクターたちが登場する「がんばれ!!おかわりラボ」
ユニークなキャラクターたちが登場する「がんばれ!!おかわりラボ」

このコンテンツの背景について古山氏は、「生活者と一緒に『家族の食卓』を考える場所を作りたかった」と語る。同氏によると、「麻婆豆腐の素」を購入した生活者から多く聞かれるのが「家族が喜んでくれる」「子供が喜んでくれる」という声だという。また、「麻婆豆腐の素」によって家族の食卓に「おかわり」の言葉が出るのもまた、お母さんの喜びや家族の団らんにつながり、明るく楽しい『家族の豊かな食卓』に繋がっているのだそうだ。「がんばれ!!おかわりラボ」はこのような背景を受けて、生活者の声を元により豊かな家族の食卓を生み出すことを目的にしているのだ。

そして、その手段として Twitter というソーシャルメディアと、「麻婆豆腐」を擬人化したキャラクターを設定したことについて、古山氏は「生活者の身近にあるメディアを活用すること」と「生活者の目線で情報を共有できる親しみやすい設定にする」ことを意識しているのだという。古山氏が話すコンテンツの目的を実現するためには、従来型の情報発信ではなく、「生活者の声を代弁する」キャラクターの存在が必要だ。また、自社サイトで発信するだけでは話題の広がりに繋がりにくい。そこで親しみやすいキャラクターを、生活者に浸透している Twitter というツールと結びつけることで、目的を実現するための世界を生み出したのだ。

個性的なキャラクターたち。ちなみに、マボンナ研究員の頭の黄色いとろみは、同社の「麻婆豆腐の素」についている“とろみ粉”なのだとか。
個性的なキャラクターたち。ちなみに、マボンナ研究員の頭の黄色いとろみは、同社の「麻婆豆腐の素」についている“とろみ粉”なのだとか。

また、この考えに基づいて商品を宣伝として一切登場させていないという点も特徴だ。それどころか、自社の存在さえキャラクターの中では"第三者"として描かれている徹底ぶりとなっている。

古山氏は、「このコンテンツは4人のキャラクターの個性や『ラボ』の世界観を楽しんでもらうことを通じて、『より豊かな家族の食卓』を一緒に考え、共有できる場にする」というひとつの目的に徹したいと語る。企業や商品を全面に押し出すのではなく、親しみやすいキャラクターたちと一緒に「家族の食卓をもっと楽しもう」という雰囲気を生み出し、その手段のひとつとして同社の製品に関心を持ってもらえれば良いと考えているのだ。

● 「単なる情報発信では、何も変わらない」〜Twitter を、より Twitter らしく活用する

その意図がはっきりと見て取れるのが、「がんばれ!!おかわりラボ」の最大の特徴である4人のキャラクターによる Twitter 4アカウント同時展開という試みだ。マーボー所長、おかわり研究員、マボンナ研究員とレンゲ君の4人は Twitter で日常生活、ラボでの行動や感じたことを思い思いにツイートしているが、4つのアカウントはそれぞれ独立して展開されており、企業サイトの URL の記載もなければ、他のキャラクターに対する"@"をつけたツイートもない。純粋に彼らキャラクターの「素のつぶやき」を掲載しているのみだ。
4つの Twitter アカウントの内容は「がんばれ!!おかわりラボ」のウェブサイトで一覧できる
4つの Twitter アカウントの内容は「がんばれ!!おかわりラボ」のウェブサイトで一覧できる

古山氏はこの意図について、「Twitter は人と人の繋がりの上に成り立つものだ」という認識を示した上で、そこでツイートされるものは「自分と人の繋がり」や「自分と場所の繋がり」が連想できるものでなければならないと語る。

つまり、4人のキャラクターが発信するツイートは、それぞれのキャラクターのありのままの姿であり、今いる場所がどこかを連想させたり、誰と一緒にいることで生まれたツイートなのかを連想させるものでなければならないのだ。そして、「どこにいるのか」「何をしているのか」「会話の相手は誰なのか」「一緒にいるキャラクターはどんな性格なのか」など、ツイートの内容から連想される様々な情報やキャラクターの存在に興味をもってもらうことによって、そこから「がんばれ!!おかわりラボ」の世界に加わってもらいたいと考えているのだ。「単なる企業の情報発信では従来と何も変わらない。Twitter を、より Twitter らしく使うことが重要だ」(古山氏)。

企業のプロモーションに Twitter を使う場合、一方的な情報発信だけに留まってしまったり、自社サイトへの誘引を意識しすぎてしまったりすることで従来のプロモーション手法との差別化をはかれないケースも多く見られるが、「がんばれ!!おかわりラボ」は旧来のプロモーション手法にこだわらず、Twitter だからできる役割やそこでどのような体験を生活者に提供するかという主題を明確にしているのだ。

● シナリオを元にしたキャラクター設定の徹底が、「愛情」を生み出す

しかし、4人のキャラクターたちの Twitter を同時に展開し、キャラクターの個性やストーリー生み出すという作業は決して容易なものではない。古山氏に運用面での工夫を聞いたところ、「シナリオの全体像が重要だ」と語った。4つの Twitter アカウントは丸美屋の担当者、制作会社の担当者で協力して運用しているそうだが、4つのアカウントから発せられるツイートにそれぞれの担当者の私情を入れてしまうと、コンテンツの世界観が崩れてしまう恐れがある。

そこで、4人のキャラクターがどのようなストーリーを生み出すかというシナリオを皆で事前に作り、そのシナリオに基づいて各キャラクターたちがツイートする体制にしているという。それぞれのキャラクター設定に一貫性を持たせ、それを徹底することにより、架空のキャラクターに「人格」が生まれ、愛着をもって接することができるようになるのだ。

一方で、ソーシャルメディアはひとつのツイートから予期せぬ事態が発生することも想定される。発生したときに企業としてどのように対応すべきか、あるいはそのような事態を避けるために視聴者がどのような心情でツイートを読み、どのような感情を抱くかという点については常に考え、あるいは実際に発信されたツイートに対する反応を確認しているという。

● ソーシャルマーケティングは「戦略」ではなく「姿勢」である

最後に、同社のソーシャルマーケティングの今後について聞いた。古山氏は今後様々な商品のソーシャルマーケティングを展開しながら、従来の情報発信型(B to C)ではなく「企業と生活者が一緒になり新しい価値を生み出す」という「B with C」の構造を生み出したいと語る。今後も同社の様々なブランドで企業と生活者が良いコミュニケーションをはかれる場所を生み出していく方針だ。

また、業界には「マーケティング戦略」という言葉があるが、ソーシャルマーケティングは企業が一方的に仕掛ける「戦略」ではなく、企業が生活者と共にあるということを示す「姿勢」であるとも古山氏は語る。

今回展開した「がんばれ!!おかわりラボ」に関しても、ページビューや Twitter のフォロワー数といった定量的な KPI 以上に、「生活者と同じ目線、同じ感覚で『豊かな家族の食卓』を考える」という姿勢を明確にし、生活者に親しみやすい世界感を生み出すことが最も重要だと考えているのだ。そこから生活者の心に生み出された共感や発見、キャラクターへの愛情は、いずれ同社の製品を手に取る機会や、その製品によって生まれる暖かい「家族の食卓」へと繋がっているはずだ。

「がんばれ!!おかわりラボ」はオープンからまだ1ヶ月足らずだが、商品を一切告知していないにも関わらず、既に Twitter 上では同社の製品について前向きなツイートをするユーザーが現れ始めているという。古山氏は、「多くの方々が『がんばれ!!おかわりラボ』の世界に共感し、好意的な意見を寄せてくれることが一番の喜びだ」と締めくくった。
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