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作戦勝ち!たった1秒の CM

佐藤 達郎
2011年4月12日 / 10:00
 
 
■30秒の CM 放映料が3億円と言われる米スーパーボウル。そこでたった1秒の CM が

アメリカンフットボールの全米チャンピオンを決めるスーパーボウル。アメリカで最も注目を集めるこのスポーツ大会のテレビ中継は、テレビ CM の放映料もケタ違い。30秒間の CM が3億円近い価格で販売され、50以上の CM がオンエアされるという広告界の一大イベントだ。年1回の CM フェスティバルとしても注目を集め、大衆紙はこの番組での CM の人気投票を行ったりする。そのため、毎年たくさんの広告主が、制作費にも巨額の費用をつぎ込み、数々の名作が生まれることでも有名だ。

2009年2月1日(日)、この世紀のショウに別の意味で、人々の度肝を抜く CM が現れた。なんと、たったの1秒で終わってしまうもの。ミラービール社のハイライフ・ビールの CM だ。このビールの配送人役の黒人男性が、両手を広げて商品名を、「ハイライフ!」と一言叫ぶだけ。なんだ、こりゃ?(実際には、番組の前後の時間帯で流されたようですが)

見てみたい方は、こちらをどうぞ。す〜ぐ終わっちゃうから、目のタマ、見開いて見て、ね。
http://www.youtube.com/watch?v=eLkfFhSophU

ビールの配送人役の黒人男性が、両手を広げて商品名を一言叫ぶ、たった1秒の CM

ビールの配送人役の黒人男性が、両手を広げて商品名を一言叫ぶ、
たった1秒の CM

*クリックして拡大

■テレビ CM は長いほど放映料が高い=効果が高い。しかし、思いっ切り逆手に取れば


このテレビ CM にはちゃんと意味があって、同じ配送人役が同僚と話している設定のウェブ上のビデオでキャンペーンが繰り広げられていた。そこで語られているのは、ざっとこんな内容だ。(アメリカではミラービールは庶民的なビールであることにも注意!)

「スーパーボールのテレビ CM 放映料、知ってるかい?30秒で3億だってよ、3億。馬鹿げてるよねぇ。我らがミラー・ハイライフ・ビールなら、そんなことにお金は使わないね。1秒でいいよ、1秒で。たとえばさ、"ハッ!"とか"ハイライフ!"とか」

このウェブ・キャンペーンと相まって、このミラービールの1秒 CM は、何億円もかけたスーパーボウル用テレビ CM の中でも、人気を博すものとなった。

通常、テレビ CM の放映料は、長ければ長いほど高い。つまり、長い放映料でたくさんのことが伝えられるはずだから、企業は高い放映料を払って長い放映枠を買う。スーパーボウルで言えば、3億円で30秒枠を買うのが通常だ。そこで、さまざまな“高額 CM”が人気を競う。

だが、そこで目立つのは並大抵のことではない。これでもかと繰り広げられるドギツいギャグ。映像美で感動を誘う大作。しかし、発想を変え、思いっ切り逆手に取れば、この1秒 CM のように、リーズナブルなコストで大きな人気を博すことが出来るのだ。

■ミラービール社作戦勝ちの1秒 CM。「枠」から変える=メディア・クリエイティブ

これは、もう、ミラービールの完全な作戦勝ち。しかも、単に奇をてらったわけではなく、「庶民派ビール」という商品のコンセプトにきちんと則ったキャンペーンとなっている。そして、「たった1回の放映のために50社が3億円を払う」として話題を集めるスーパーボウルという一種の社会現象をみごとに「批評」する形で、話題性を出すことにも成功している。

「30秒という枠」の中で一生懸命その出来を競うのが普通のところ、30秒というメディアの枠から考え直すようなクリエイティブを、一般には「メディア・クリエイティブ」と呼んだりする。広告用のメディアの在り方そのものからクリエイティブに考え直す、といった意味だ。

あるいは、もう少し幅広く、たとえば雑誌の見開きページの真ん中をうまく表現に活用したり、屋外看板が置かれた場所を上手く活用して、その場所ならではの表現案を考え出したりするのも、メディア・クリエイティブの一種だと言えるだろう。たとえば、マクドナルドの屋外看板で、太陽の動きを上手く利用し、日時計とメニューを関連づけたものなどが有名だ。

もちろん、テレビ CM 枠も「商品」なので、通常の商品からはずれたものを実行するのは並大抵ではないが、いま世界の広告界では注目されている手法だと言える。

■仕事でも恋愛でも就活でも、他人と同じ枠の中で勝負をせずに、枠から変えてみては?

たとえば、仕事。広告会社で言うと、競合プレゼン。広告主が3社とか5社とか複数の広告会社に対して、オリエンテーションという形で課題を与え、その解決策を競うというものだ。この競合プレゼンでよく言われるのが、「オリエン破り」が勝利を呼ぶケース。たとえば、オリエンでターゲットが男性社会人と規定されているのに、ターゲットを女子高生に絞って案を持っていくといったものだ。もちろん、なぜ女子高生に絞るのが良いのか?納得の行く説明が必要だが、こういった「オリエン破り」が勝利を呼ぶことも珍しくない。

たとえば、就活。史上希に見る就職難と言われる現在も、ベンチャーや中小企業では、目標の採用数に至らない会社も多いという。いわゆる大企業に視野を限るのではなく、ベンチャーや中小企業まで、就活の「枠」をはずして考えてみることは、けっして損にはならないように思う。

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●執筆:佐藤達郎

多くの国際広告賞審査員を経験した国際派クリエイター。海外広告に関する知見は日本でもトップクラス。

長年の広告会社勤務を経て、2011年4月に大学教授に就任。「広告界で培った知見、広告の持つ技やスキルは、畑違いの仕事や私生活にも活かせる」というのが持論。

ビジスパでは、一見謎に見えるが将来のヒントがてんこ盛りの優秀広告を紹介するメルマガ「“謎の広告”探偵団 -世界の広告スキルを学んで、仕事を私生活を充実させよう!-」を配信中。

ブログ ( www.satotatsuro.com ) も、どうぞ。
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※本コラムの内容は、ビジスパで配信しているメルマガを一部抜粋したものです。

記事提供:ビジスパ
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