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『売れない時代に売る』ための、マーケティング戦略5つのポイント

佐藤 義典
2011年2月22日 / 10:00
 
 
日本は「低成長」の時代に突入し、2010年代、長期的に見れば「売れない時代のまっただなか」にいます。

筆者は、日本企業の不調の原因は何か、を一言で言えば「マーケティング不足だ」と答えます。「売る努力が不足している」、つまりは「売れない時代」に適した経営ができていない、という意味です。

「そんなことは無い」という声が聞こえてきそうですが、例えば、3,000億円の設備投資は新聞に載りますが、3,000億円の「売るための投資」は聞いたことがありません。3,000億円の設備投資をするなら、300億円の「売るための投資」はした方が良いですよね?売れなければ、その3,000億円の設備投資がムダになってしまうわけですから。

原因がそうなのであれば、解決策も明らかですよね?「売れない時代にあった経営」すなわち、「売れるものを考え、作り、売れるように売る」という当たり前のマーケティングをすれば良いのです。

「売る」ためには、お客様の立場に立って考え、作り、販売する、という当たり前のことを地道に行うしかありません。当たり前のようで、このことは現在の「経営戦略論」などに意外に抜けていることです。有力な経営戦略論でも、「売れない時代」すなわち「どう売るか」という視点が薄いのです。その経営戦略論を顧客視点で補足したのが、筆者が主張する「戦略 BASiCS」です。

■戦略 BASiCS とは

戦略立案・実行のための考える枠組み(フレームワーク)で、経営戦略の要素を5つに分類し、要素間での一貫性・具体性を確保することにより、成果の出る戦略立案ができるように考えられたものです。

基本的には、筆者がその経験・知識をもとに、3C(Customer, Company, Competitorという3つの要素で考えるフレームワーク)を改良・発展させたものです。

5つの経営戦略要素とは、以下の5つです。
---------------------------------------------
1)Battlefield(戦場・競合)
2)Asset(独自資源)
3)Strength(強み・差別化)
  i
4)Customer(顧客)
5)Selling message(メッセージ)
---------------------------------------------

5つの要素の頭文字をとり、戦略の基本、という意味と、覚えやすさ(=実戦しやすさ)という観点から、BASiCS(ベーシックス)と名付けました。真ん中の「i」は語呂合わせですが、integration(統合)の頭文字でもあります。マーケティング戦略・経営戦略の要素はこの5つでほぼ網羅的にカバーされます。

以下、BASiCS を簡潔に説明いたします。

「戦略 BASiCS」。マーケティング戦略・経営戦略の要素はこの5つでほぼ網羅的にカバーされる

「戦略 BASiCS」。マーケティング戦略・経営戦略の要素は
この5つでほぼ網羅的にカバーされる

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1)Battlefield(戦場・競合)
戦場は、戦いが起きている場所のことです。この場合は…お客様のアタマの中なんです!そして、競合とは、その際にお客様のアタマの中に浮かんだ「選択肢の集合」です。「競合」というと、同業他社のようなイメージを持たれるかもしれませんね。そういう場合もありますが、必ずしもそうだとは限りません。あくまで「勝敗を決めるのはお客様」なのです。

例えば、マクドナルドに行くとしましょう。

「マクドナルドの競合は何ですか?」と聞くと、「モスバーガー、ロッテリア、フレッシュネス…」という答えが返ってきます。が…お客様は「マックにしようか、モスにしようか…」と考えるでしょうか?

「お客様のところに伺う前に資料整理をしたい」という「目的」であれば、その際の「他の選択肢」(=競合)は、ドトールコーヒーだったりスターバックスだったりしますよね。お客様がマクドナルドに行く目的であるところの「お客様のところに伺う前の資料整理」が本来の「戦場」なのです。

マクドナルドに行く「目的」が戦場で、いわば「価値戦場」ですね。お客様が「価値」を求めてマクドナルドに行くわけです。そしてそこで「競合」(お客様がどちらにしようか迷う)が起きるわけです(ここでいう「目的」「価値」は、いわゆる「ニーズ」のことです)。

2)Asset(独自資源)
3)Strength(強み・差別化)
「強み・差別化」とは、要は「お客様が、競合ではなく自社を選ぶ理由」です。

強み・差別化の「実体」は、4P(売り物・売り方・売り場・売り値)として現れることになるでしょう。が、「お客様が、競合ではなく自社を選ぶ理由」ですから、基本的にはお客様のアタマの中にあるものです。いくら性能的に素晴らしくても、それがお客様にとって「選ぶ理由」とならなければ、意味がありません。

例えば、マクドナルドの強みは何でしょうか?こう聞くと、「安い、早い」という答えが返ってくることが多いです。確かに「安い、早い」は、「お客様がマクドナルドを選ぶ理由」かもしれません。が…誰と比べて、でしょうか?確かに、モスバーガーやロッテリアと比べると早い、安い、かもしれません。が……吉野家と比べて安い、早い、と言えますか?

「競合が誰か」がわからなければ、強みが何かは定義できません。当たり前のように見えて、案外そう認識されていないので注意しましょう。「強み」を考える前に、「競合」を考えておく必要があるのです。

「自社の強みを競合が長期的にマネできない理由」が「独自資源」です。

「低価格」というのはマクドナルドにとっての1つの強みですよね。お客様が「マックのほうが安いから」という理由でマクドナルドに入ることがあるでしょう。では、なぜそれを競合はマネしないのでしょうか?

マクドナルドには3千店以上の店舗が国内にあり、規模の経済が効きます。また、優れたマニュアルやハンバーガー製造マシンがあり、誰でもハンバーガーを素早く作れますから人件費を抑えられます。このような「規模の経済」「マニュアル」「設備」が「独自資源」です。マクドナルドにはこれがあるからこそ、「低価格」という「強み」が競合にはそう簡単にはマネできないわけです。

4)Customer(顧客)
顧客が4番目に来ていますが、実際には BASiCS の中核を為すのは「顧客」、お客様ですね。「戦場・競合」(=お客様の選択肢の集合)を選ぶのも、「強み」(=お客様が選ぶ理由)を決めるのもお客様です。最終決定はお客様の手に委ねられます。ここで、セグメンテーション、つまり、お客様を分けます。なぜ分けるかというと、人によって「ニーズ」が違うからですね。

同じ人でも、時と場合によってニーズが違いますから、セグメンテーションはニーズで切ることが重要です。そして、それと「戦場・競合」の定義は重なります。ニーズ・戦場・セグメンテーションは一体的に考えるべきなのです。

ニーズが違えば「戦場・競合」が変わり、そしてそれに応じて「強み・差別化」が変わる、というダイナミックな関係なのですね。

5)Selling message(メッセージ)
通常の経営戦略論としては、ここまでの「戦場・競合」「独自資源」「強み・差別化」「顧客」で終わってもいいのですが、実際に戦略が「成果」を出すためには、「実行」が必要です。実行しなければ成果は出ません。実行段階ですべきことを統括するのが「メッセージ」です。「メッセージ」とは、ここまでの「戦場・競合」「独自資源」「強み・差別化」「顧客」を統括し、具体的な4P(売り物・売り方・売り場・売り値)に落とし込むものです。そして、メッセージの下に4Pの一貫性を保ち、戦略を実行していきます。

これは、当たり前のように聞こえるでしょうが、いざやってみると大変に難しいことがおわかりいただけると思います。他社の戦略の事例などを参考にしながら、自社にあてはめていくのが考えやすいですね。

(ビジスパのメルマガでは、この戦略 BASiCS を使って、リアルな事例をもとに、誌上コンサルティングのような形式で使い方を解説しています) 


■きちんと考え、きちんと実行した人が売れる時代


80年代までが「作れば売れた時代」、90年以降が「売れない時代」だとすると、筆者は、現在が「きちんと考え、きちんと実行した人が売れる時代」だと考えています。

口で言うのはカンタンですが、難しいです。難しいからこそ、やりがいもあると思います。そう信じて、頑張ってまいりましょう!

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●執筆:佐藤 義典

 
●執筆:佐藤 義典

マーケティング戦略の立案・実行支援を中心に活躍する人気マーケティングコンサルタント。

佐藤氏が提唱する戦略立案フレームワーク「戦略 BASiCS」は、急速に支持を得つつある。ベストセラー「図解 実戦マーケティング戦略」(日本能率協会マネジメントセンター:画像)や、2万人メルマガ「売れたま!」の著者としても知られる。

ビジスパでは、実在の会社を題材に、戦略 BASiCS を用いてマーケティング戦略の立案・実行方法を学ぶメルマガ「事例でわかる! 実戦マーケティング戦略ワークブック」を好評配信中。

3月23日、ビジスパとプレジデント社の共催セミナー【これからを生き抜く力〜経営戦略・マーケティングに強くなる〜】で講演予定。
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※本コラムの内容は、ビジスパのメルマガおよび一部抜粋したものです。

記事提供:ビジスパ
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