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「ブランドをエンターテインメントにする」―キットカット×mixi 新商品発表会の舞台裏(後編)

japan.internet.com 編集部
2010年11月25日 / 08:00
 
ネスレ日本は、2010年9月1日に mixi アプリ「KIT KAT Town」上で、37年ぶりに大幅にリニューアルした「キットカット」のオンライン新商品発表会を開催した。この新商品発表会は、同社にとってはじめての「オンライン限定商品発表会」であっただけでなく、mixi においても前例のない、mixi ユーザー参加型オンライン商品発表会となった。

この企画でチャレンジしたコミュニケーション設計とは、そしてそのコミュニケーションをどのようなに実践したのか、ネスレ日本株式会社 コンフェクショナリー事業本部 マーケティング部長の竹内 雄二氏にお話を伺った。昨日の前編に続き、今回は後編となる。
発表会の様子。中央はイメージキャラクター赤木芽衣沙さん。
発表会の様子。中央はイメージキャラクター赤木芽衣沙さん。

● 期待してくれた人たちを、がっかりさせたくない

2010年9月1日22:00から開始された新商品発表会。キットカットの無料お試しクーポンのプレゼントなどに対して、mixi ユーザーの中で話題や期待が大きく膨らみ、発表会開始から1時間で約87万アクセスと予想を大きく上回る参加者が集中したことで、発表会にアクセスできない参加者が続出することになった。そのようなトラブルに対して、ネスレ日本はどのような姿勢で臨んだのだろうか。

今回この企画を実施するにあたって、竹内氏は事前に「全ての部署で企画を共有し、発生しうる状況に対してどう対処するか考えた」と振り返る。マーケティング部だけでなく、広報、コミュニケーション、品質管理、法務、広告代理店など、キットカットに関わる様々なスタッフがこの企画で行われることを共有し、発生するであろう状況にどう対応するかシミュレーションとリスクヘッジを徹底して行ったという。国内のみならず、スイスにあるネスレ本社とも連携したそうだ。

そして迎えた発表会。企画に関わったネスレ社員全員で発表会にアクセスし、また実際に社外のmixi ユーザーからも状況を聞き、mixi からの速報レポートも参考にしながら、その日の深夜には発表会にアクセスできなかった多くの参加希望者の存在をキャッチした。「スピードをもって、誠実な対応をしたかった。期待を膨らませた方々をがっかりさせたくなかった」と竹内氏が振り返るとおり、明けた翌朝には追加キャンペーンの実施を決め、更に抽選で1万人に無料クーポンをプレゼントすることにしたのだ。

消費者と企業が向き合うということは、企業は消費者の声に耳を傾けるだけでなく、消費者の期待や希望を真摯な姿勢で受け止め、その声に応え続けるということだ。このキャンペーンで生まれたひとつの「事件」によって、ネスレ日本の消費者に対する真摯な「顧客をおもてなしする姿勢」を目の当たりにすることができたのだ。

「キットカットは消費者から愛され常にそばにいるブランドを目指している」と竹内氏は話す。例えば、受験生応援キャンペーンなどが代表例だが、キットカットという商品・ブランドは常に消費者のそばにあり、食べる人に元気や勇気を与えられるような、特別な存在を目指しているのだ。

● 消費者の「愛情」は、ブランドにとって最大の喜び


このように、大盛況に終わった商品発表会だが、具体的にはどのような効果が生まれたのだろうか。ネスレの分析によると、開催前から行列に並んだ参加者は22万人を超え、発表会が開催された2時間の間で、予想していた参加者数の約10倍近くもの参加者数(ユニークユーザー)が集まったという。竹内氏によると、mixi 内での広告露出などは限定的だったということで、事前に行列に参加した人や発表会に参加した人たちによる mixi ボイスを通じて、友達のつながりを通じて参加者の輪を広げることができたのだ。

このような現象について、竹内氏は「用意した様々なアクティビティが、『友達に教えたくなる』という価値を持っていると評価していただいた」と語る。消費者のおもてなしを考えた企画によって、友達同士のつながりが大きな影響力を持つものだという確信を得たようだ。そしてこのような反響は売上にもつながっているという。

そして、竹内氏は「参加者からはキットカットに対する好意的なご意見をたくさん頂いた」とも振り返る。消費者がもつ商品やブランドに対する気持ちや愛着というのは、なかなかリアルな場面では表明できる機会が少なく、本来は消費者の心の中に眠っている存在だ。友達の間で「私はキットカットが大好きだ!」なんて話題はなかなか起きないものだ。それが、今回商品発表会の場で「キットカット」という商品の下に集まった参加者は、その「心の声」を大きな声で発言する機会を得たのだ。

一方で、企業にとってもその「心の声」を聴く機会というのは少なく、この商品発表会を通じてキットカットを愛している多くの人たちの生の声を聴くことができた。竹内氏は、「本当に嬉しかったし、これからのモチベーションになる」と喜びを語った。

● ソーシャルメディアマーケティングの「究極の目標」とは

竹内氏は、今回の商品発表会の成功要因のひとつに「赤木芽衣沙」というキャラクターの存在を挙げた。一般的に企業が商品を押し出したキャンペーンを展開すると、受け取る消費者の側に「押し付けられた」という感情が生まれてしまい、嫌がられることが多い。しかし、今回の商品発表会ではスポークスパーソンとして「赤木芽衣沙」が登場することによって、商品と消費者の間のクッションが生まれ、彼女の言葉、彼女の動かす企画によって商品が楽しいコンテンツになったのだ。同氏は、「消費者の方々に楽しんでいただけるものであれば、商品・ブランドはエンターテインメントになる」と語る。
イメージキャラクターの赤木芽衣沙さん
イメージキャラクターの赤木芽衣沙さん

商品の存在をあいまいにするイメージ訴求では本当に伝えたいメッセージが伝わらない。商品やブランドそのものを「楽しむ」というアプローチによって、今までにない新しくて楽しいブランド体験を消費者に提供することができたのだ。

また、今後のソーシャルメディアマーケティングについて、竹内氏は「ブランドとそのブランドのファンの方々とのつながりをより活性化していく」と語り、今回のような大規模なキャンペーン展開の枠組みを超えて、消費者の間でキットカットが語られ続けるような環境の構築を目指すとした。「話題やニュースがない時間でも消費者の間でキットカットについて自然に会話が生み出される場所というのは、シンプルだが企業にとっては究極の目標だ」と話す。

そのためには、企業は様々なチャネルを通じて統合型マーケティング戦略を実践しながら、ソーシャルメディアを通じて消費者との真摯な対話を続けることで、ブランドコミュニケーションのモデルを確固たるものにする必要がある。竹内氏は「キットカットのみならず、ネスレのあらゆるマーケティング活動のプラットフォームにしていきたい」と締めくくった。
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