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実はこれから本格化する?「家(ウチ)飲み」に見る、ネットとリアルの融合

株式会社ワールド・カフェ 代表取締役 笠原 造
2009年10月26日 / 12:00
 
 
■ネットとリアルを融合したマーケティング
「ネットとリアルの連携や融合」ということは、ずいぶん前から言われている。小売店がネットを活用してリアル店舗と連携するといったことは、今や当たり前のように行なわれるようになった。

TSUTAYA のように、携帯でクーポンの配布や新商品などの情報を配信して、店舗へ誘導し購買を促進するという、「ネットでの販促からリアル店舗へ誘導」というパターンはもちろんのこと、ネットスーパーのように、店舗で販売している商品をネットから注文してもらい店舗から即日配送するという「リアル店舗からネット販売へ」というパターンも増えてきた。

しかし、業態別に見ると、小売店における事例が多いが、メーカーや卸についてはまだそれほど多くない。また、マーケティングのプロセス別に見ると、販売における事例は多いが、市場分析、商品企画・開発、ファン醸成などにおける事例はまだ少ないようだ。

今回は、卸が市場分析、商品企画・開発、ファン醸成などにおいて、ネットとリアルを連動させて行なっているマーケティング事例を紹介し、ネットとリアルの融合の拡がりについて述べたい。

■2,000人が集まったリアルイベント
全国の有力な蔵元約80社、酒販店約1,800店が参加する日本名門酒会(本部:東京都中央区)は、ネットとリアルを融合したマーケティングを展開し、新しい日本酒ファンの開拓や様々な日本酒の飲み方を提案して、日本酒復活に取り組んでいる。

同会は、10月23日に都内のホテルで「日本酒天国2009東京大試飲会」を開催した。日本酒ファン約2,000名を集め、全国51社の蔵元が350種類以上のお酒を出品するという大規模な試飲会だが、同会が運営する日本酒のコミュニティ&ショッピングサイト「日本酒天国.com」でチケットを販売したところ数時間で完売になるという、すさまじい人気ぶりで、当日も大盛況だったという。

同会は、従来から、「地酒ブーム」や「海外における日本酒ブーム」を仕掛けるなど、日本酒復活を目指して様々な取り組みを行なってきているが、現在は、「家(ウチ)飲みブーム」を仕掛けている。

今回の「日本酒天国2009東京大試飲会」においても、ネットとリアルを連動させた「家(ウチ)飲みブーム」醸成の仕掛けが随所に見られた。

■「家(ウチ)飲み」ブームについて
ニフティによると、2009年1月〜6月までの「家飲み」に関する Blog 記事投稿数は、前年同期比で約5倍になっており、ニフティの検索サービス「@search」においても「家飲み」に関する検索回数は、同期間の比較で約6倍となっている(ニフティ プレスリリース)。

また、アサヒビールが今年3月に実施したインターネット調査によると、全体(6,038人)の約8割が「家飲み派」であり、4割がほぼ毎日、9割が週一回以上の頻度であることがわかった。また、「家飲み」の最も多かった支持理由は、「リラックスできる」であった(アサヒビール 旬の話題データバンク)。

「日本酒天国.com」は、本年4月7日のオープン以来、順調に会員が増え(現在約3,200名)、投稿数も約1万件/月あり、活発な交流が行なわれているが、投稿の大半が「家飲み」についての日記が中心となっていることから、公式コミュニティ「ウチ飲み推進委員会」を立ち上げ、「家飲み」に関する情報交換を行なっている。

同サイトが7月に実施したアンケートにおいても、「家飲み」推進派が6割を超えた。「家飲み」の魅力については、「リーゾナブル」は3番目で、「気軽さ」が1位、「自分流のこだわりで飲める」が2位となっており、単に安上がりということではなく、気軽に自分のペースで飲めるということを重視していることがわかった。また、日本酒の種類については、純米酒の人気が非常に高かった。

■「顧客との共創」がポイント
日本名門酒会では、このような生活者のニーズに合わせて、「ウチ飲み純米酒シリーズ」を7月より発売したが、発売以来、2万本以上を販売しており、通常の企画ものと比較すると3倍以上という異例のスピードの売れ行きとなっているという。

また、「日本酒天国.com」の「家飲み」に関する投稿から、器についてもこだわって楽しんでいる様子がうかがえたことから、「家飲み」用のオリジナル酒器「UCHINOMI」シリーズを新たに開発し、当日会場にて先行販売を開始した。

UCHINOMI シリーズ
UCHINOMI シリーズ
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リアルイベントも活発で、「日本酒天国.com」の会員向けに、日本酒のきちんとした知識とテイスティング、料理とのマリアージュなどを体験しながら楽しく学べる「日本酒天国スクール」を開催したり、季節限定のお酒の楽しみ方を紹介する「夏生選手権」や「ひやおろし試飲会」を開催するなど、日本酒ファンの醸成や飲み方の提案にも注力している。

今回のリアルイベント「日本酒天国2009東京大試飲会」においては、様々な名酒と共に蔵元が選んだこだわりの肴を紹介、さらに、これからの「家飲み」シーンの楽しみ方として、「樽酒」や「湯煎でのお燗酒」なども紹介した。

さらに、今回「日本酒天国.com」で募集した「ウチ飲み川柳」の優秀作品を決める投票をイベント会場で実施した。「日本酒天国.com」のネットでの投票と併せて最優秀作品を決定するという。また、イベント会場では、出品されたお酒の人気投票も実施したが、入選したお酒は「日本酒天国.com」でも紹介され、販売される予定である。

ウチ飲み川柳(日本酒天国.com)
ウチ飲み川柳(日本酒天国.com)
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イベント会場では、「日本酒天国.com」の会員同士がハンドルネームの名札を付けたり、サイトで当日来て行く服を知らせるなどして、出会ったり、「日本酒天国.com」に積極的に参加している蔵元ブースに会員が集まるなどして、オフ会としても非常に盛り上がり、文字通り、「日本酒天国」を楽しんでいた。

このように、ネットとリアル双方で、人が集まり交流する場を築き、その声に耳を傾けてウォンツやニーズを発見し、サポートしていくことで、調査分析、商品企画・開発、販促、販売、ファン醸成といったマーケティングの流れを顧客と共に自然につくり上げている。

これから本格化するネットとリアルの融合は、「顧客との共創」がポイントとなるであろう。


執筆:株式会社ワールド・カフェ 代表取締役 笠原 造
監修:株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役 斉藤 徹
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