物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点と理化学研究所環境資源科学研究センターの研究員らは、植物の細胞内におけるセシウム分布を可視化する方法を世界で初めて開発した。セシウム除染用植物の開発促進が期待できるという。

福島第一原発事故により環境中に放出されたセシウムの除去法として、植物に土壌や水中のセシウムを吸わせて除染する「ファイトレメディエーション」が注目されていた。同手法は汚染土壌を撤去しないため、コストや環境負荷、廃棄物が少なく済むというメリットがある。

一方、既存の植物では吸収効率が低く、効率的にセシウムを吸う植物の開発が急がれていた。しかし、植物細胞内でのセシウムの輸送や蓄積のメカニズムがほとんど解明されていないため、品種改良など開発に必要な基礎的知見が不足していた。

シロイヌナズナ子葉の蛍光イメージ
シロイヌナズナ子葉の蛍光イメージ

今回開発した方法は、「セシウムグリーン」という蛍光プロープを使用して炭酸セシウム粒子をマイクロメートルレベルの分解能で検出し、細胞内部のセシウム分布を可視化するというもの。同手法を用いてシロイヌナズナの細胞内のセシウム分布を観察した結果、セシウムは子葉の細胞内の液胞に蓄積する傾向があることがわかった。また、セシウムグリーンは安全な非放射性セシウムなため、特殊な実験設備が要らず、汎用性が高い手法だという。

この手法により、セシウムの植物への輸送/蓄積メカニズムの解明や、ファイトレメディエーションに適する植物の選別/品種改良の促進が期待できる。