去年の猛暑の夏にこれがあったらどんなにうれしかったか、というような「冷却ベスト」を、JAXA がメーカーと協力して開発した。「JAXA COSMODE」(JAXA 宇宙ブランド)で販売中だ。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、日本ユニフォームセンターが「冷却ベスト」を開発したそうだ。開発に協力した帝国繊維が、限定1,000着を5月30日から販売している。

JAXA 宇宙ブランドで「冷却ベスト」を販売
「冷却ベスト」

「冷却ベスト」は、チューブを張りめぐらしたベスト本体と、冷却水を循環させるポンプユニットから構成。備え付けのタンク内で氷で冷却された水が、ポンプによってチューブ内を通り、ベスト全体に届く。冷却水が、張りめぐらしたチューブを循環して身体を冷却するので、炎天下での熱中症対策に効果が期待されるそうだ。

「冷却ベスト」をつけなかった場合(左)、つけた場合(右)
「冷却ベスト」をつけなかった場合(左)、つけた場合(右)

JAXA ではこれまで、先端素材・縫製・被服設計・精密加工などの国産技術を集め、「次世代先端宇宙服の研究」を行っている。日本ユニフォームセンターは、「次世代先端宇宙服の研究」に2008年度から参加、ユニフォーム研究で培ったパターン設計や縫製技術で、冷却下着の研究をサポートしてきた。

宇宙服内は密封されているので、宇宙飛行士の出す熱を冷却しなければならない。そうしないと、どんどん温度が上がっていくのだ。そこで、宇宙服用の冷却下着には、冷却水を通すためのチューブがはりめぐらせられている。また、冷却下着と肌とを密着させ、汗を短時間で吸収、蒸発させることができる快適な仕様になっている。

今回の冷却ベストは、この、次世代先端宇宙服用冷却下着の研究成果を使ったもの。JAXA オープンラボ公募制度で、「宇宙用冷却下着の民生化に向けた検討及び改良の実施」として、日本ユニフォームセンターのビジネス提案が選定された。まず、消防分野に適した仕様の研究開発からスタートした。

ところで、宇宙服というのは、過酷な宇宙環境で使用されるものだ。その宇宙服の技術を応用した「冷却ベスト」が必要な環境が、この地球に出てきているということは、地球環境の専門家でなくても、もう少し気にしたほうがいいのではないだろうか。