Web は3月11日で25歳の誕生日を迎えたばかり。終わってしまうにはまだ若すぎる年齢だ。だが Web の生き残りには懸念材料が多すぎるのも事実だ。

オープンな Web は危機に瀕しており、その原因はモバイルアプリにある。これは、シリコンバレーの IT 業界関係者の間で共通した見解となりつつある。

その引き金となったのは、モバイル解析ベンダー Flurry による最新のレポートだった。同レポートは、スマートフォンユーザーはその利用時間の86%をアプリに費やしていることを明らかにしている。これに対し、Web 利用に費やす時間はわずか14%に留まっていた。

スマートフォンアプリが Web を衰退させる―ウェアラブルデバイスと音声アシスタントが衰退を加速させる
モバイルユーザーの Web 利用時間は、スマートフォン利用時間全体のわずか14%

一般大衆が Web を利用可能になったのは、Marc Andreessen 氏が Web ブラウザ「Netscape Navigator」を開発したところによるものが大きい。そのアンドリーセン氏の創設したベンチャーキャピタル Andreessen Horowitz の Chris Dixon 氏は、このままでは Web はニッチな用途でしか利用されないものになると警告している。アプリをダウンロードする前にサービスを試すためのものや、Twitter や Facebook のフィードからリンクされるコンテンツを消費するためのものでしかなくなるというのだ。

Web の利用が減少すれば、Web 開発への投資もされなくなり、Web の衰退にはさらに拍車がかかる。Apple や Google、それに Microsoft といった企業によって管理されるアプリの世界とは異なり、オープンな Web は、インターネットにおける実験やイノベーションをリードしてきた。その Web が廃れてしまえば、インターネットの世界からイノベーションが失われる可能性があると、Dixon 氏は恐れているのだ。

■ Web を衰退に導くのは、モバイルアプリだけではない

このような見解については、大げさと取る人もいるだろう。だが、Web を衰退に導くのは、スマートフォンだけではない。ウェアラブルコンピューティングも、Web を衰退させる原因の1つとなる。ウェアラブルデバイス上では、スマートフォン以上に Web インターフェイスの提供が困難なのだ。

Google によるウェアラブルデバイス「Google Glass」を例に取ろう。Google Glass にも Web サイトを表示する機能はある。だが Glass での Web 体験は悲惨なものでり、一度体験した人はもう Glass で Web を利用したいとは思わないだろう。これは、腕時計タイプのウェアラブルデバイス「Android Wear」でも同様だ。

Google のスマートウォッチ「Android Wear」Web サイトの表示には不向きだ (出典:Google)
Google のスマートウォッチ「Android Wear」
Web サイトの表示には不向きだ (出典:Google)

ウェアラブルデバイスとモバイルデバイス、そしてデスクトップデバイスでは、情報を検索したり、それを表示させたり、通信したりといった際に採用するモデルがそれぞれ大きく異なっているのだ。

天気を知りたいとしよう。デスクトップの場合、利用者は Web ブラウザのアドレスボックスに「weather.com」と入力する。検索サイトの検索ボックスに「天気」と入力する場合もあるだろう。続いて天気を知りたい地域を入力することになる。

同じことはモバイルでもできる。だが、モバイルの場合は Web ブラウザを利用する人は少なく、多くの人が天気アプリを起動するはずだ。そしてそのアプリでは、天気を知りたい地域を入力する必要はない。モバイルデバイスの位置情報機能により、利用者の現在位置にあった天気情報が自動で表示されるからだ。

では同じことをウェアラブルデバイスで実行するにはどうしたら良いだろう? 例えば、スマートグラスやスマートウォッチの場合だ。おそらくは、音声アシスタントがそのインターフェイスとなるはずだ。Apple の iWatch では、Siri が、Microsoft のスマートウォッチでは Cortana が主なインターフェイスとなるとうわさされている。

「Android Wear」でも、音声アシスタントを使用する(出典:Google)
「Android Wear」でも、音声アシスタントを使用する(出典:Google)

我々がデスクトップ上で Web ブラウザを利用してやってきたことは、スマートフォン上ではアプリで、そしてウェアラブルデバイス上では音声リクエストで実現されるのだ。

ウェアラブルデバイスと音声リクエストという来るべきトレンドは、Web をさらに窮地に追いやるものとなる。これまでのように、情報が欲しい際に Google などで検索し、表示された検索結果から自分で適切な Web サイトを選択し、そのサイトから必要な回答を得る、といったやり方は時代遅れになるからだ。

■ウェアラブル革命は、音声アシスタント革命と同時にやってくる

ウェアラブル革命は、音声アシスタント革命と同時にやってくる。そして音声アシスタントは利用者に対し、検索結果のリストという“選択肢”ではなく、自ら判断した“回答”を利用者に提供する。

例えばウェアラブルデバイスで「ファレル・ウィリアムス の『ハッピー』を聞きたい」と指示したとしよう。デバイスは、すぐにその曲を流してくれる。“Web をサーフィンして YouTube サイトにその曲があるのを見つけ、それをクリックする”といった“選択”は、そこには存在しない。

ウェアラブルデバイスでスケジュール管理をする場合も同じだ。我々はデバイスに向かい「ミーティングを火曜日から水曜日に変更してくれ」と指示する。このとき、Web ブラウザで Yahoo!や Outlook、Google のカレンダーを表示したり、カレンダーアプリを起動したりする必要はない。

シリコンバレーの IT 業界関係者は、アプリによって Web が衰退するのではないかと恐れている。だが、ウェアラブルと音声アシスタントは、Web の衰退をさらに加速するのだ。

■より管理された世界に

IT 業界関係者は、モバイルアプリの世界が Web に比べ、クローズドであることを懸念している。Google や Apple それに Microsoft によって管理されているからだ。

だが、ウェアラブルデバイスと音声アシスタントの組み合わせでは、我々はさらに管理されてしまう。

彼らは我々に、まるで子どもにスプーンでご飯を食べさせるかのように、我々の欲しい情報を与えてくれる。だが同時に、彼らの望むソリューションを我々に押し付けてくるだろう。例えば、Microsoft の音声アシスタント「Cortana」にスケジュール管理を依頼すれば、カレンダーアプリは当然 Microsoft のものとなるだろう。Google の音声アシスタントに音楽を聞きたいとリクエストすれば、曲は Google Play からダウンロードされることになる。

これらはすべて、Web の未来についての懸念材料だ。人々がモバイルアプリを利用すればするほど、オープンな Web は衰退していく。そして、ウェアラブルデバイスと音声アシスタントがさらに普及すれば、Web 衰退のスピードもさらに早まるのだ。

私がいまここで述べていることを信じられないという人も多いだろう。多くの人々は、音声アシスタントは単なるおもちゃに過ぎず、実用にはならないと信じているからだ。

だがタイムマシンで10年前に戻り、「10年後には PC はスマートフォンとタブレットで置き換わっている」と信じさせることはできるだろうか? 10年後の人々は Web サーフィンをやめ、安くて小さなアプリを使用するようになっていると説得することは可能か? おそらく無理だろう。そんなことはだれも信じないはずだ。

私は、ウェアラブルと音声アシスタントの時代は確実にやってくると信じている。そしてこのトレンドは、人々が繋がったり、情報をやりとりしたりする方法を根本的に変えてしまうと考えている。

Web が完全に消えてしまうことはない。だが、一般の大多数の人の Web 離れは今後さらに加速していく。その主な理由は、現時点ではモバイルとモバイルアプリにある。そして、ウェアラブルと音声アシスタントの時代が本格的に到来すれば、Web 離れはさらに加速し、Web は一部の人のものになるだろう。

Mike Elgan
Mike Elgan は、Elgan Media の CEO。internet.com の他、Computerworld、Cult of Mac などの IT 関連メディアに寄稿している。