米国 Microsoft の新 CEO である Satya Nadella 氏は CEO に指名された直後、従業員に向けて E メールを送り、Microsoft はクラウドとソフトウェア製品ラインを通じてより良いサービスを顧客に提供できるようその歩みを加速しなければならないと述べた。Microsoft はその後、クラウドサービス「OneDrive」や、Web ブラウザから利用できるソフトウェア製品「Office Online」を発表し、Nadella 氏による新方針に沿った前進を見せている。

だが Nadella 氏は Xbox 部門に関しては、ここまでなにも言及してこなかった。

21世紀を迎えた2001年、Microsoft はゲーム業界に参入。ソニーや任天堂に挑み、セガのドリームキャストが撤退した穴を埋めようとした。初代の Xbox こそ市場に受け入れられることはなかったが、Xbox 360 は世界数百万のユーザーのお気に入りのエンターテインメントデバイスとなった。また、オンラインサービス「Xbox Live」は他のオンラインゲームサービスからの羨望の的となっている。

その Nadella 氏は、Microsoft から贅肉をそぎ落とす目的で、Xbox 部門を他社に売却するのではないかとうわさされている。一部報道では、Nadella 氏による Microsoft の将来ビジョンに Xbox がフィットしておらず、価格さえ折り合えば Xbox 部門を切り離したがっているとも伝えられた。

Microsoft は Xbox を売却しない:そう考える10の理由

だが、Nadella 氏はこの判断については慎重を期すべきだ。たしかに、ゲームは Microsoft のコアビジネスであるエンタープライズ向けサービスとはフィットしていない。だが Xbox は Microsoft にとって非常に重要な部門であり、同社がよりモバイルハードウェア市場に方向転換するにしても、安易に売却はできないものだ。

ここではその理由を述べたい。

1. Xbox を買収できる企業は多くは存在しない

Xbox ブランドの価値を正確に算出することは難しい。だが、Xbox が毎年数十億ドルの売上を上げていることを考えれば、買収額はかなりのものになるだろう。そのような大規模な取引で、適切な売却先を見つけることは容易ではない。

1. Xbox を買収できる企業は多くは存在しない

2. Xbox は、リビングルームへのリンク


リビングルームは、大手 IT 企業の主戦場となっている。Google はリビングに Chromecast で進出した。Apple は Apple TV を保有している。Roku を含むその他の企業も、テレビにエンターテインメントを持ち込むハードウェアを提供し、リビングへの参入を続けている。

2. Xbox は、リビングルームへのリンク

Microsoft は Xbox ですでにこの戦場における主要なプレイヤーとなっている。これを切り捨てるのは、あまりにも惜しい。

3. ゲーム産業は今後もさらに成長が続くと予想される

NPD による最新のリサーチによれば、ゲーム業界全体の売上は、今後数年間でさらに大きく伸びると予想されている。消費者は新しいコンソールを購入したいと考えており、ソフトの売上も上昇が見込まれる。

 3. ゲーム産業は今後もさらに成長が続くと予想される

そのような時期にゲーム分野を切り捨てるのは、市場で一二を争う人気コンソールを持っている Microsoft にとって、良いタイミングではない。

4. 赤字続きのコンソールを購入できる企業はあるのか?

Xbox 部門の売上は力強い。だが Microsoft は、コンソールを1台売るごとに赤字を計上していると言われている。販売が好調であったとしても、利益がでない製品を買収できる企業はそれほど多くはないだろう。

4. 赤字続きのコンソールを購入できる企業はあるのか?

この状況は、いずれは改善されると考えられるが、当面は Xbox One 開発コストは高すぎて、Xbox 部門の買収を正当化できる企業はでてこないと考えられる。

5. Nadella 氏は、ハードウェアを重視している

Satya Nadella 氏が Microsoft の将来プランにおいて、Xbox One が重要なデバイスであると直接言及したことはない。だが同氏がハードウェアの重要性を認識していることは間違いないだろう。

5. Nadella 氏は、ハードウェアを重視している

Xbox は、ソフトウェアの巨人が唯一成功したハードウェア製品であり、その売却は意味をなさない。

6. Microsoft は「Gears of War」の権利を買収したばかり


Microsoft は今年1月、アクションゲーム「Gears of War」シリーズの権利を買収した。もし Microsoft が Xbox 部門を売却するつもりだとしたら、この動きは説明がつかない。

6. Microsoft は「Gears of War」の権利を買収したばかり

少なくとも外部からは、Microsoft は Xbox コンソールに対するゲームライブラリの増強を継続しているように見える。

7. Microsoft には、一般消費者を惹きつける製品が必要

Microsoft は、一般消費者市場では取り残されつつある。消費者は、Apple や Samsung のデバイスを購入し、Microsoft の製品は店頭の棚に残されたままになっている。

7. Microsoft には、一般消費者を惹きつける製品が必要

Microsoft には一般消費者を惹きつける製品が必要であり、その目的を果たすには Xbox 以上の製品はないのだ。Xbox は一般消費者に向けた商品であり、Microsoft による OneDrive などのサービスと密接に統合されている。Xbox は一般消費者を Microsoft のサービスに引き戻すための、最善のデバイスだ。

8. ゲームコンソール市場は Xbox に有利な状況に

ソニーの PlayStation 4 は、ゲーム市場でのトップセラーだ。だが、任天堂の Wii U は自滅しつつあり、Microsoft はゲーム市場での PlayStation の唯一の競合となっている。

 8. ゲームコンソール市場は Xbox に有利な状況に

確かに、アジアではソニーの強さが目立つが、欧州市場では Xbox は長期間に渡って大きな成功を収めている。ゲーム市場は、Xbox に有利な状況になりつつあるのだ。

9. Xbox Live は大きな資産だ

Microsoft にとっての Xbox Live の重要性は、いくら強調しても強調し過ぎることはない。Xbox Live は単なるオンラインゲームプラットフォームではなく、Microsoft による多くのサービスへのゲートウェイだ。

 9. Xbox Live は大きな資産だ

Microsoft の Xbox Live は、ホームエンターテインメントの最前線であるデジタルコンテンツへのアクセスを提供する。Microsoft が PC やクラウド向けに提供しているサービスとも統合している。Xbox Live はあまりにも重要であり、これを Microsoft が手放すことなど考えられない。

10. Xbox を買収できるのは、Microsoft の競合企業

もしかしたら、これが Xbox 売却の最大の障害になるかもしれない。数十億ドルを払い、Xbox 部門を買収可能な企業は、Google、ソニー、Apple といった、Microsoft の競合相手ばかりなのだ。Xbox がこれら企業の手に渡れば、それは Microsoft の戦いを不利なものにするだろう。

10. Xbox を買収できるのは、Microsoft の競合企業

もちろん、これら以外の企業が Xbox の買収に手をあげる可能性がないとは言わない。だがその可能性は低いだろう。Microsoft が Xbox を Google、Apple、ソニーに売却するとはとても思えない。

Don Reisinger
Don Reisinger は、フリーのコラムニスト。Ziff-Davis の Gearlog.com でのデビュー以降、Computerworld、InformationWeek などに数多くのコラムを寄稿してきた。現在は eWeek の他、CNET、LA Times でコラムを執筆している。