仮想通貨ビットコインの大手取引所「Mt.Gox(マウント・ゴックス)」が、保管していた顧客のビットコイン約75万枚を盗まれたとして、破産を宣言した。Wall Street Journal は、ビットコイン75万枚の価値を4億7,300万ドル(約479億円)と見積もっている。

Mt. Gox は終わった だがこれでビットコインが終わったわけではない
Mt. Gox に危険な兆候が表れ始めたのは2月7日。同社はビットコインの引き出しを停止した。2月10日には、「取引展性(Transaction Malleability)」として知られるビットコインのプロトコルの問題により、アタッカーによる攻撃を受けているとしていた。

2月24日、Mt. Gox の Web サイトには、次のメッセージが表示された。

「Mt. Gox の運営とビットコイン市場に関する最近の報道と、それに対して起こり得る反応を踏まえ、サイトと利用者を保護するため、当面すべての取引を停止することを決定した」

2月26日には Mt. Gox CEO である Mark Karpeles 氏が、同氏が現在も日本に留まり、問題の“解決”に向け尽力していると同社の Web サイトで説明した。

だが、この件を“解決”することなどできないだろう。今回の件は、ビットコインに対する信頼を大きく損ねるものとなった。

ビットコイン取引所のセキュリティ

米国サンフランシスコで開催された RSA カンファレンスでは2月27日、「How to Hack Bitcoin(ビットコインに対するハッキング方法)」と題するセッションが実施された。このセッションでは、IBM の Etay Maor 氏と、BioCatch の Uri Rivner 氏がビットコインの盗難を壇上で実演してみせた。

ビットコインに対するハッキング方法
ビットコインに対するハッキング方法

両氏によるデモは、ビットコインの盗難が容易であることを聴衆に示した。両氏は「Spyeye」と呼ばれるマルウェアを利用。1人の保有するビットコインを、わずか数秒でもう1人が盗んで見せた。

両氏は、Mt. Gox を含むビットコイン取引所の多くには、基本的なセキュリティ管理システムさえ導入されていないと断言した。

「ビットコイン取引所は、どこもアタッカーのいいカモだ」

ビットコインの将来

Mt. Gox の大失態は、ビットコインの市場に長く影を落とすものになるだろう。だが、ビットコインの終わりを告げるものにはならない。

Napster を覚えているだろうか?

Napster は、デジタル音楽ファイルの交換所を運営していた企業だ。だが、その初期のモデルは間違っていた。Napster の初期モデルでは、利用者に音楽ファイルの違法なダウンロードを許可していたからだ。

だが、音楽をデジタル形式で簡単にダウンロードするという考え方自体は間違っていなかった。

Napster が破綻したとき、これでデジタル音楽は終わると考える人もいたが、実際にはそうならなかった。むしろ、そこからデジタル音楽ビジネスが本格的にスタートしたのだ。

同じことがビットコインにも言えるだろう。Mt. Gox の台頭は、ビットコインに対する信じられないほどの巨大な需要によるものだ。だが、Mt. Gox の失敗は、ビットコイン自体の失敗ではない。そうではなく、ビットコイン取引所が未成熟であり、セキュリティが不足していたことの表れなのだ。

他の起業家は、Mt. Gox の失敗から多くの教訓を学ぶだろう。今回の件で財産の一部を失った人に対しては気の毒に思う。ビットコイン市場が傷ついたことも残念だ。だが、これでビットコインが死んだわけではない。

Sean Michael Kerner
Sean Michael Kerner は、eWeek および InternetNews.com の主任編集者。