2月に入り弊社でも IT エンジニアの新卒採用に関連して2015卒の学生さんとお会いする機会が多くなってきました。

今でこそインフラエンジニア兼採用担当として中途・新卒共に応募者の方とお会いしていますが、学術を卒業してビジネスへと転向するという就職活動行為については人一倍の思い入れがあります。博士課程修了まで様々な学生を見てきたというだけではありません。事業仕分けに遭ったり予定されていたポスドクのポジションが無期延期となったりしたために博士課程修了式にて提出した進路先「未定」のやたらと白い進路届け、それを受け取ってフリーズした事務方の顔、式典と謝恩会の合間に人材紹介エージェントに立ち寄るというシュールなスケジュール、そして謝恩会での教員達の苦笑いは忘れられません。学術での評価とビジネスでの評価の違いに悩んだこともありました。今回は私自身の経験も交えつつ、2014卒/2015卒の学生さんたちとの話しを振り返りつつ、IT エンジニアを志望する新卒就職先選びについて何回かに分けてお話ししたいと思います。

高専、専門学校、学部、修士、博士と様々な境遇の方が居られるわけですが、どの学校であっても「学校で学んだことを生かした就職をしたい!」という思いが強い方に多くお会いします。私もそう思った時期はありました。しかし採用する側になって多くの方を見ていると、頑なになりすぎて損をしている方を多々見かけます。今回は学術からビジネスへと転向する就職活動中の皆さんへ何かヒントになればと思います。

本コラムでは IT 業界について基礎研究を中心とした学校、及び一部企業の R&D 部門を指す学術インターネットと、一般の消費者が利用する商用目的のビジネスインターネットとの2つに分けて話をしたいと思います。特に日本国内においてこの2つのインターネットの生まれは同じでしたが、後に別物になっていったということをまずはお話ししましょう。日本のインターネットの生い立ちと前回記事でも触れた IT 業界の変遷を図に示します。日本でのインターネットの起こりは日本の学術組織を中心として構成された研究用コンピュータネットワークである JUNET になります。AT&T Jens、IIJ が商用インターネット接続サービスとしてスタートしたのが1992年ですからここを分岐点としましょう。つまり日本のインターネットの根幹は学術ネットワークだったため、初期の学術インターネットとビジネスインターネットの親和性は非常に高かったわけです。

学校では教えてくれない就職先選び
学術インターネットとビジネスインターネットの歩みと乖離

以後、Windows95 を皮切りに商用インターネット接続サービスは大躍進を遂げていきます。急増するユーザーだけでなく、IT 革命ということで官からの後押しも強くありました。ユーザーに提供されるラストワンマイルに関してもダイアルアップ、ISDN、xDSL、光ファイバと目まぐるしく変わっていきました。IT バブルと呼ばれたこの時期、こうしたトラフィックの増大やインフラの革新に特にビジネスインターネットはてんてこ舞いだった時期です。

当時、産学協同という言葉が持てはやされたこともあり、ビジネスインターネットに身を置く企業が学術機関と協力関係にあることが多くありました。企業が持つ手持ちの様々な意味でのリソースが手一杯であり、需要が見込める新しい技術のための R&D をする場として学術機関との連携が求められていた時期と言えると思います。この当時、学術インターネットで活躍した人たちが ISP やネットワーク機器ベンダーといったビジネスインターネットへと、スムーズに就職していくケースも多く、人材交流の場も多く見られた時期でした。

やがてブロードバンドが普及、基礎技術の根本的な革新も一段落し、一般の消費者がインターネットユーザーの大部分を占めてくると需要に変化が見られました。「お客様が乗っていない場所」に対する需要の拡大です。2004年頃をピークにちらほらとそうしたネットワーク利用を目的とした共同研究が見られました。こうした動きは私の周りでは少なくとも2006年まで続いた印象です。

その後、長引く不景気とリーマンショックにより産学連携事業にも低迷が起こりました。最新機器で構成された広帯域ネットワークが存分に利用できることがウリだった学術機関でも、機材更新が難しくなってきました。あわせて前回記事でも触れたように IT 業界のトレンドが技術屋主導から消費者主導にシフトしていったことにより、機材が常時広帯域で接続できることが最重要であり消費者が居ないことが求められていた時代から、マーケティングやビッグデータのように消費者が使っていることそのものが重要な時代へと、需要が遷移していったのです。

現在でも一部の教育機関では今でも意欲的に産学連携ができていますし、学術に身を置きながらもビジネスインターネットへの適応力が高い学生も居ます。しかし多くの場合は図のように、学術インターネットとビジネスインターネットは乖離が進んでいます。

また、学術インターネットからビジネスインターネットへの世間の比重の推移により、社会の流れは格段に早くなりました。特にその中心部である IT 業界ではしばしばドッグイヤーと形容されます。具体的には7倍の早さということなのですが実際に IT 革命の浮き沈み、SNS バブル、事業仕分け、ソーシャルゲームバブルなどを観察してみるとそれくらいのタイムスパンで流行廃りが巡っています。サーベイから始まり設計・実装・評価・論文執筆・査読を経て採録されるまでが半年から1年掛かる基礎研究の世界である学術インターネットとは良くも悪くもスピード感が異なってしまっているのがビジネスインターネットです。

このような状況の中で、取り組んできた分野と関連性の深い企業の R&D 部門への就職や、時流に乗った産学協同研究への参画経験などの特殊な例を除き、学校時代に行ってきた内容から離れたくないという頑なさは往々にして選択肢を狭めていることに繋がってしまいます。面接や書類応募時には「何ができるか」ということ以上に、その過程である「どう達成したか」「何を経験したか」「どういった問題に直面し、どう解決したか」が主張できるとうまくポテンシャルを持っている人材として伝わることが多いです。特にこの観点は専門性が高くなるほど当てはまりますので、経歴に反して内定に結びつかないと悩んでいる方に特に振り返って欲しいポイントです。

今回は学術インターネット OB の観点を中心に新卒就職活動についてお話ししましたが、次回は中途採用の現場を交えてお話しする予定です。

執筆:株式会社ネットマーケティング 久松 剛
記事提供:株式会社ネットマーケティング