米国 Apple は昨日、新製品発表イベントを実施、iPad Air を含む複数の製品を公表した。

Apple の iPad Air 発表イベントは、Microsoft を攻撃するイベントでもあった
Apple が発表した iPad Air

だがこのイベントは、旧敵である Microsoft を攻撃するためのものでもあった。Apple は iPad Air の発表イベントで、Microsoft を最大の敵と見なしていることを示したのだ。

この日 Apple が打ち出したメッセージは明確で、誤解しようのないものだった。Apple CEO である Tim Cook 氏は、昨日のイベントで次のように語っている。

「Microsoft は混乱している。彼らは一時、ネットブックを追いかけていた。いまは PC をタブレットにしようとしたり、タブレットを PC にしようとしたりしている。Microsoft が次に何をするのか、誰にもわからない」

Apple のエンジニアリング VP である Craig Federighi 氏は、次のように述べて Microsoft を皮肉った。

「コンピューターに何かをさせるために、何百ドルも費やさなければならない時代はすでに終わっている」

Apple の上級 VP である Eddy Cue 氏は、スクリーンに Microsoft Office 365 を投影しながら次のように述べた。

「中には、アプリを利用するためだけに、相当な額の料金を要求する企業もある」

そして Apple は最新の OS X Mavericks が無料で提供されることを公表したのだ。iOS は、言うまでもなく無料だ。これに対し Microsoft の Windows 8 の価格は、119.99 ドルから199.99ドルの間の価格で販売されている。

このように、昨日のイベントで Apple 幹部たちは、一貫して Microsoft への攻撃を続けた。

■Apple による Microsoft 攻撃のキーワードは「無料」

Apple はハードウェアの販売で利益をあげている。また、OS X や iOS を利用する顧客が、iTunes から映画や音楽を購入することでも利益をあげることができる。

OS X 単体の価格は今回、無料となった。だがその価格は、実は Apple のハードウェアやサービス、それにコンテンツに転嫁されているのだ。

これに対し、Microsoft の Windows 部門の売上は、そのおよそ65%が Windows ソフトウェアの売上に依存している。Microsoft が Windows を無料にし、その価格を他に転嫁することは困難だろう。

Apple はまた、iLife と iWork プロダクティビティスイートも無料で提供すると発表した。

Microsoft の Office 365 Home Premium の年間利用料金は、99.99ドル(約9,700円)。10年間これを利用すれば、Microsoft に対して1,000ドル(約9万7,00円)近い金額を支払うことになる。

これに対して、Apple のプロダクティビティスイートは無料だ。もちろん、Microsoft Office ははるかに機能が豊富であり、プロフェッショナルユースには欠かせないものだ。だが、Apple の代替ソフトウェアははるかにシンプルで使いやすく、ほとんどの利用者には十分なものなのだ。

■Apple はなぜ Microsoft を最大の敵と見なしたのか?

Apple はなぜ Microsoft を倒すべき敵だと見なし始めたのだろうか? 私は、その理由は2つあると考えている。

1つめの理由は、Microsoft 自身が弱っているということだ。Microsoft の CEO である Steve Ballmer 氏は今年8月、近日中に CEO を退任すると発表した。

Ballmer 氏が退任を発表したことで、Microsoft の CEO ポジションは政治的に「レーム・ダック」状態に陥っている。退任が決まっているリーダーの言うことを聞く人は少ないからだ。Microsoft 社員の士気を高め、団結させる Ballmer 氏の CEO としての力は、限定されたものになりつつある。

ボクシングでは、敵の息があがり、弱っていると感じたならば、ラッシュをかける。Apple は、Microsoft が弱っているいまこそ、Microsoft を倒す最大のチャンスだと見たのだろう。

2つめの理由は、Microsoft が Apple のビジネスの直接の競合になりつつあることだ。Microsoft は Surface を自社ブランドで販売し始めた。また、Nokia の買収も決定している。

Apple と Microsoft は長く、友人でもあり敵でもある「フレネミー(frenemy:friend+enemy)」の関係を保ってきた。両社は競合しつつ、提携もし、相手のプラットフォームに対して自社製品の提供を続けてきた。例えば、Apple は Windows 向け iTunes を提供しているし、Microsoft は Mac 向け Office を提供している。

Microsoft はこれまで、ソフトウェアを OEM とエンドユーザーに販売してきたが、ハードウェアを販売することはなかった。だがこの従来型 PC ビジネスは、Apple iPad のようなタブレットの登場で落ち込みを見せ始めている。この変化に対する Microsoft なりの回答が、古い Microsoft のビジネスモデルを捨て、Apple のモデルを導入し、ハードウェア、ソフトウェア、サービス、コンテンツの販売を開始することだった。

この意味では、Google は Apple のより大きな競合相手にみえる。だが、実際には、Microsoft こそが、より直接の競合となっている。

Google はスマートフォン OS の分野で大きなシェアを持っており、支配的な地位にある。だが、このこと自体は、Google に直接の利益を与えていないだけでなく、Apple の売上を奪ってもいない。Android が搭載されているデバイスの多くは、ノーブランド、ゼロマージンの安価なデバイスであり、その利用者が Google Play ストアにアクセスすることはあまりない。これらのユーザーは Google の顧客とは呼べないし、Apple は意識さえしていない。

だが、Surface タブレットや Nokia のスマートフォンを購入する顧客は、Apple が追いかけている顧客層と重なっている。Microsoft デバイスのシェアが上昇すれば、Apple のシェアはその分下落する。デバイスの売上が下落すれば、将来のアプリの売上や、サービスの売上、コンテンツ販売による売上の減少に繋がる。

そして、これが Apple が Microsoft を敵と見なした理由なのだ。

Mike Elgan
Mike Elgan は、Elgan Media の CEO。internet.com の他、Computerworld、Cult of Mac などの IT 関連メディアに寄稿している。
(この記事は10月23日付け英文記事の抄訳です)