宇宙望遠鏡は、NASA のハッブル宇宙望遠鏡だけではない。

ESA(the European Space Agency:欧州宇宙機関)にも、ハーシェル宇宙望遠鏡がある。2009年5月14日に、ESA はハーシェルを積んだ「Arianne 5」(アリアン5)ロケットを発射した。ハーシェルの直径は3.5メートル、かつて宇宙を飛んだ中で最大の望遠鏡である。

ODBMS.ORG の編集長である Roberto V. Zicari 氏は2011年3月、ESA Herschel Scientific Ground Segment システムアーキテクト兼エンジニアの Jon Brumfitt 博士にインタビューしているが、それから2年経過した2013年8月、再び Jon Brumfitt 氏に会い、話を聞いた。

というのも、ハーシェルの「観測」任務は4月29日で終了しており、 Zicari 氏はその後のハーシェルについて聞きたかったからだ。

まず、「観測」任務終了の理由であるが、観測機器を冷却する液体ヘリウムが枯渇したため、観測不能となったのだ。観測機器を冷却するのは、熱雑音の影響を最小限にするためだった。ハーシェルは遠赤外線での操作により、通常の望遠鏡では見られない冷たい対象を見ることができたが、探知機も低温まで冷やす必要があった。

液体ヘリウムで機器は 1.7K(マイナス271℃)まで冷やされ、各探知機はさらに華氏0.3度、絶対零度近くまで冷やされた。それは、可能な限り低い温度だ。

ヘリウムの枯渇は観測終了のしるしだった。ハーシェルは、第2ラグランジュ点「L2」として知られる点を中心にした軌道にあったが、宇宙船はこの軌道に残すことはできないため、太陽の周りの「駐車」軌道に転送された。軌道に残すには定期的な補正作業が必要になるからだ。

その後、軌道上では通常できない制御技術のテストベッドとして使われた。6月17日に最後のコマンドが送信され、運用を終了した。最後のスラスタ噴射は6月17日で、燃料はすべて使い果たされた。

ハーシェルがもたらした宇宙からのビッグデータ
ハーシェル、Wikipedia から

だが、まだミッションは終了していない、と Brumfitt 博士は語った。

「天文学者に、ハーシェルが集めた品質の高い最終データのアーカイブ遺産を、来るべき数年間、供給しなければならない」

これまで、ハーシェル望遠鏡を使って得られた主要な成果について、 Brumfitt 博士は以下のような指摘を行った。

「ハーシェルは、星が形成される方法、星の生成とビッグバン以来の銀河の進展の歴史について、新しい視点を与えてくれた。若い星を取り囲む埃っぽいディスクに、大量の冷たい水蒸気が発見されたが、それは、他の水に覆われた惑星の可能性を示している。また、地球にある水の起源についての新しい証拠を示している」

「直径3.5メートルの反射鏡を持つハーシェルは、かつて発射された最大の宇宙望遠鏡だ。大きな反射鏡は、高感度のみならず高空間解像度で空を観察できるようにしてくれる。ある意味で、われわれの行う観察は、今まで見たこともないものを示している。われわれがこれまで行った約3万5,000の科学観察は、すでに科学雑誌に600枚の紙になり出版された。天文学者はこれから先、何年も、これらの結果を翻訳するという多くの仕事が待っている。それらは疑いもなく新しい発見につながっているだろう」

「約 3TB のデータが Versant データベースにあるが、そのほとんどは宇宙船からの生のデータだ。毎日受け取るデータは、データ処理パイプラインで処理され、イメージやスペクトルのようなデータの成果物は、天文学者がアクセスできるよう、アーカイブに置かれる。

データを処理するフトウェアは6か月ごとにメジャーアップデートされ、データ処理を改良、すべてが再処理される。データ処理は約35ノードのグリッドで稼働しており、各ノードには8コア、16GB から 256GB のメモリが搭載されている」

「このシステムでは1日あたりのデータの約40日分を処理できるもので、2、3週間ですべてを処理できる。アーカイブデータは FITS ファイル(天文学データの標準フォーマット)で格納される。アーカイブはデータを列記(カタログ化)するのにリレーショナルデータベース(PostgreSQL)を使い、関連データを見つけられるようにクエリできるようになっている。リレーショナルデータベースは約 60GB しかないが、成果ファイルは60TB を占めている。

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