NASA ジェット推進研究所(JPL)チーフ エンジニア Brian Muirhead 氏は、Black Hat セキュリティカンファレンスで8月1日、イノベーション成功のコツについて述べた。

【Black Hat 2013】NASA チーフエンジニア:「失敗を恐れるな。だが、失敗はするな」
Brian Muirhead 氏
(出典:JPL)
Brian Muirhead 氏は、NASA のロケット科学者。火星探査機の実現に向けた技術の進化をリードしてきた人物だ。

Muirhead 氏は Black Hat の聴衆に向け、「マーズ パスファインダー」宇宙探査機の設計、開発責任者となったときのことを語った。彼の上司は、Muirhead 氏に対して次のように指示したという。

「失敗を恐れるな。だが、失敗はするな」

失敗を恐れず、積極的にリスクを取る。だが、失敗することは許されない。これは、Black Hat に参加しているセキュリティ専門家全員が直面している課題だろう。セキュリティ分野での失敗は、企業の信頼失墜を招きかねない。

だがこれが、NASA の重要な行動原理の1つなのだという。

Muirhead 氏の任務は、簡単なものではなかった。Muirhead 氏と同氏のチームがパスファインダーを火星に着陸させるまで、火星関連のミッションは30ほどあったが、成功したのはそのうちわずか8つだった。

Muirhead 氏は、「火星着陸は、とても困難なことだった」と述べた。

イノベーションへの必要条件とは

NASA であれ一般企業であれ、イノベーションの実現には、多くの必要条件がある。

Muirhead 氏による必要条件リストのトップには、強い責任感をもった人物の確保がある。自分たちの取り組みに当事者意識を持ち、任された領域のプロセス向上に努力を厭わない人物を集めることが、成功へのカギとなると、Muirhead 氏は述べた。

リスク管理もイノベーション実現に向けたコアな構成要素だ。

「NASA で我々はリスクの高い仕事に取り組んでいる。これは、Black Hat に参加している人たちも同じだろう」

Muirhead 氏は、宇宙船を他の惑星の表面に着陸させるほどリスクの高いことはないと述べた。2012年8月、NASA JPL は、過去最大の探査機「Curiosity」の火星着陸に成功した。このとき NASA JPL は、Curiosity をスカイクレーンでつり下げるという「イノベーション」の実現により、大型火星探査機の着陸を成功させている。

「Curiosity」着陸イメージ図 (出典:JPL)
「Curiosity」着陸イメージ図
(出典:JPL)

成功へのカギとは?

Muirhead 氏は、NASA のミッションおよびあらゆるタイプのイノベーションにおける成功のカギは、テストし、テストし、そしてテストをすることだと述べた。

「失敗しないためのコツは、可能な限り数多くのテストを実施することだ」

Muirhead 氏はまた、開発チーム全体との効率的なコミュニケーションも重要であると強調した。

リーダーシップと素早い意思決定プロセスも重要な役割を果たす。Muirhead 氏によれば、成功している組織は間違いなく、強いリーダーシップと優れた意思決定プロセスを持っていると述べた。

「リーダーシップは、組織における接着剤と潤滑油の役割を果たす。接着剤は、物事や人を1つに束ねる役割をする。潤滑油はさらに重要だ。これは、人々の仕事をスムーズにする」

Muirhead 氏は最後に、会場のセキュリティ専門家に対し、次のメッセージを伝えてセッションを終えた。

「(セキュリティへの取り組みでは)失敗を恐れずに、だが失敗はしないで頂きたい」

Sean Michael Kerner
Sean Michael Kerner は、eWeek および InternetNews.com の主任編集者。
(この記事は、8月1日付け英文記事の抄訳です)