慶應義塾大学は7月16日、センサなどを身につけること無く、電波を用いて人の転倒・転落を検出するシステムを開発したと発表した。これにより、センサ装着の煩わしさや監視カメラによる心理的負担無しに、高齢者などの見守りが可能になるという。

今回開発したシステムは、同大学理工学部情報工学科の大槻知明教授の研究グループによるもの。

同研究グループでは、電波を用いた行動識別の研究を行っており、電波を用いた「行動・状態識別センサ(アレーセンサ)」と、車のスピードや球速を計測するときなどに用いられている「ドップラーレーダ」を利用した転倒・転落監視システムを開発。それらのセンサにより、空間の電波の伝わり方の変化と、転倒・転落によるドップラーシフトをそれぞれ検出し、センサなどを身につけること無く、人の転倒・転落を検出することが可能だという。

実際、センサから直接見える場所での転倒を95%以上、物陰など直接は見えないところでの転倒も85%以上の確率で検出することに成功。なお開発した転倒・転落監視システムは、アレーセンサ単独で構成することもできるという。

慶大、電波で人の転倒・転落を検出するシステムを開発
転倒によるドップラーシフトの変化(ドップラーレーダ出力)

転倒による伝搬の変化(アレーセンサ出力)
転倒による伝搬の変化(アレーセンサ出力)

厚生労働省の国民生活基礎調査(平成22年度版)によると、高齢者(65歳以上の人)の要介護の直接原因(ほぼ“寝たきり”の直接原因)の約1割が骨折・転倒によるものだという。また、1年間に高齢者(同)の5人に1人が転倒を経験しているそうだ。

転倒を速やかに検出することは、生命や後遺症の観点から重要とされ、これまでにセンサを身につけるシステムや監視カメラを用いたシステムなどがあったが、装着の煩わしさや監視カメラによる心理的負担等が問題となっていた。

今回の研究成果は、7月17日〜19日にアクトシティ浜松で開催される電子情報通信学会知的環境とセンサーネットワーク研究会、9月8日〜11日にロンドンで開催される IEEE International Symposium on Personal,Indoor,Mobile and Radio Communications(PIMRC2013)において発表される予定。

また同研究グループは今年度、開発したシステムの実用化に向けて、その有効性について住友電気工業と共同で検証していく予定。