次の文中にある「Amazon」を「Microsoft」で置き換えれば、今回の Oracle と Microsoft による提携の概要がわかるだろう。

「Amazon と Oracle は、スケーラブルで信頼性が高く、コスト効率の高いビジネスアプリケーションプラットフォームを提供する」

これは、Amazon Web Services の Web サイトにある声明だ。Oracle アプリケーションを Amazon クラウドに移行させた場合のメリットについて書かれている。

Oracle と Microsoft が、かつては軽視していたクラウド分野で提携を結ぶ
6月24日、米国 Microsoft CEO の Steve Ballmer 氏、米国 Oracle プレジデントの Mark Hurd 氏、Microsoft プレジデントの Satya Nadella 氏は、Microsoft Azure クラウドサービス上で利用可能となった、Oracle による多くのサービスとアプリケーションについて語った。

だがちょっと待って欲しい。Microsoft は 自社製のデータベース「SQL Server」を販売している。最近、SQL Server はクラウドフレンドリーな「SQL Server 14」 へとアップグレードされたばかりだ。その際のプロモーション文書では、Microsoft は Oracle のデータベースを次のように評していた。

「SQL Server のデータベースあたりの管理コストは年間1,605ドル。Oracle Database では年間7,385ドルで、460%も割高となる」

Oracle も自社製のパブリッククライド、プライベートクライド、それにオンプレミスのプラットフォームを保有している。Oracle はこれらについて次のように述べている。

「Oracle は、エンタープライズグレードのクラウドソリューションで、幅広い選択肢を提供する。これには、ソフトウェアアズアサービス(Software as a Service:SaaS)、プラットフォームアズアサービス(Platform as a service:PaaS)、そしてインフラストラクチャアズアサービス(Infrastructure as a Service:IaaS)が含まれる」

そう、これらはすべて真実だ。だが、時代は変化している。

Oracle と Microsoft による提携の内容は、下記のプレス発表にある通りだ。

「今回の提携により、顧客は Windows Server Hyper-V と Windows Azure で、Oracle ソフトウェアを利用可能になる。顧客は、Windows Server Hyper-V または Windows Azure で、Java、Oracle データベース、Oracle WebLogic Server を利用可能となり、Oracle からのフルサポートを受けられる」

Microsoft Azure クラウドにおける Oracle ソフトウェアのライセンス契約は、Amazon クラウドでのそれとまったく同じになっている。

両社が提携した理由を、私は次のように見ている。Oracle の売上は2期連続でフラットだった。このため、以前はクラウドは大きなビジネスにならないと主張していた同社は、ここに来てクラウドビジネスへの足掛かりを得る必要がでてきた。このため、Microsoft という巨大な船に乗り込むことを決めたのだ。

Microsoft は巨大な船だ。だがこの船は1990年代、インターネットへの進出に出遅れた経験を持っている。同社はその後、全力でインターネットへの取り組みを行い、遅れを取り戻した。Microsoft は現在、そのときと同様、全力でクラウドコンピューティングへの取り組みを行っているように見える。

企業分野におけるクラウドコンピューティングは、収益という観点から見れば、未だ初期段階にあるというのは事実だ。だが、企業の CIO や技術分野のマネージャが、自社のインフラにどのクラウドアーキテクチャを導入すべきか判断を始めているのも、また事実なのだ。

Oracle や Microsoft といった伝統的なソフトウェアベンダーは、クラウドへの対応を急ぎはじめた。だが、早い段階からクラウドに取り組んできたベンダーやスタートアップ企業は、ソフトウェアの箱売りやサービスで収益をあげてきた企業が、クラウドプレイヤーへと変化するのは、簡単ではないと主張している。また、プロプライエタリなソフトウェアに囲い込まれていた企業顧客が、同じ轍を踏むことはないだろうとも述べる。

一方で、セキュリティやプライバシー、それにコンプライアンスに不安があるとしてクラウドへの移行に乗り気ではなかった企業顧客は、Oracle や Microsoft などの伝統的なソフトウェアベンダーが、企業の要求を満たしたクラウドを提供し始めていることに注目しているのも事実だ。そのような企業は、クラウドベンダーやスタートアップ企業よりも、今回提携を結んだ Oracle や Microsoft のソリューションを選択するかもしれない。

Microsoft と Oracle による提携は、クラウドの世界では、敵同士でも友になるという、最新の、そして最大の例となるだろう。この提携がいつまで続くのかは見ものだ。クラウドというゲームは、まだ始まったばかりだからだ。

Eric Lundquist は、投資会社 Ziff Brothers Investments の技術アナリスト。