米国パロアルトに本社を構える Pica8 の CEO 兼創設者の James Liao 氏が、6月12日から14日に開催された「Interop Tokyo 2013」のために来日した。

Interop Tokyo 2013 では、企画コーナー「SDN ShowCase」が設けられ、SDN(Software-Defined Network)に関するさまざまなデモンストレーションが行われたが、Pica8 は、SDN の重要な一部である OpenFlow に完全対応する L2/L3 スイッチを開発、販売する会社だ。

OpenFlow は、ネットワーク全体の経路制御をコントローラ(ソフトウェア)で一元管理し、スイッチではデータ転送機能のみを実行するという、SDN を実現するための重要な技術のひとつ。

Pica8 は2009年に創業された、データセンター向け SDN ソリューション開発会社。現在の顧客数はすでに160社にのぼり、業績を急激に伸ばしている。本社はシリコンバレーのパロアルトにあるが、開発部門は中国北京にある。現在の従業員数は四十数人。

Pica8 の目指すところは、ハードウェアに依存しないスイッチシステムによる、オープンな、真にソフトウェアが規定するネットワーク(Software-Defined Networking:SDN)だ。ハードウェアにはコモデティ製品を使い、コストを低減し、ソフトウェアによって、データセンターのネットワークに柔軟性と拡張性をもたらすことができるという。

japan.internet.com のインタビューに応じた、James Liao 氏は、以下のように語った。
「既存のネットワークでは、Cisco や Juniper など大手数社のネットワーク機器が支配的であり、ビデオ配信会社、検索エンジン会社、調査会社と、異なる業界であっても同じハードウェア、同じアーキテクチャ、同じソフトウェアを使ってきた。違うのはサイズだけだ。また、ネットワークの制御は管理者が手動で行っているが、1人が管理できるのはせいぜい数十だ」

IPv4 から IPv6 への移行、SNS の隆盛、テキストデータから映像データ、M2M、モバイル機器の増加と多様化で、データ量は爆発的に増加しており、ビッグデータの処理をめぐって、ネットワークは今大きな変化に直面している。

SDN 分野で今何が起きているか、Liao 氏は以下のように説明する。

「SDN は、下から、データプレイン、コントローラ、アプリケーションと、3つに分類できるが、当初注目されたのはコントローラのレイヤーだ。ここには多くの企業が参入し、Cisco や IBM など大手ベンダーも  OpenDaylight プロジェクトを開始している。これらのベンダーはその上のアプリケーションのレイヤーにも関わっているが、ネットワークの実際の問題は、データプレインのレイヤー、ハードウェアにある」

ネットワークに変革を――スイッチのハードをホワイトボックスにする Pica8 の挑戦
SDN の分類

Liao 氏によると、既存のネットワーク機器は、かつてのメインフレーム同様だ、という。メインフレームはクローズドのブラックボックスで、柔軟性に欠け、独自設計の CPU とそれに合わせて開発された独自のアプリケーションで動いていた。

ところが、1990年代から2000年にかけて、コンピュータ業界のサーバー分野では大変化が起きた。CPU に Intel を使うコモデティ化された PC サーバーが一挙に普及、メインフレームと UNIX を駆逐した。このサーバー分野で起きたものと同様の変化が、ネットワーク分野でも起きる、と Liao 氏は確信している。

「現在のネットワークで、メインフレームと同様の構造を Cisco のネットワークに見ることができる。独自の ASIC(application specific integrated circuit) チップ、独自のシステム、融通の効かない独自のアーキテクチャ、管理ツールがすべてひとつの統合ソリューションで制御されている。しかし、次の10年間で、ネットワーク業界もサーバー同様コンポーネント化が進んでいく」

Pica8 は、ホワイトボックスを製造するベンダーを管理しながら、Linux などのソフトウェアをホワイトボックスにインストールし、出荷するまでの全体を統合して行っている。現在、実際に使っているホワイトボックスは限られているが、来年からは、さまざまなホワイトボックスを使用できるようにすることを計画している。これが実現すれば、市場が一挙に広がる。

「Pica8 のスイッチ OS は Linux ベースであり、仮想化ソフトウェアで ASIC を管理するので、ハードウェアにどういうチップを使おうが、管理できるようになる。L2L3 のスイッチや OpenFlow エージェント、アプリケーションも、ユーザーが独自に開発できるようになる」

ところで、Facebook の「Open Compute Project」であるが、大規模なデータセンターをいくつも抱える Facebook も、このプロジェクトで Pica8 と同様のことを考えているそうだ。

また、日本では SDN に対する取り組みが特に進んでいるそうだが、それは、背景に、2011年3月の東日本大震災や津波で起きた大規模停電によるネットワーク被害があるという。柔軟なネットワークであれば、停電になっても、それ以外の地域にデータを送り、サービスを再開することができるだろう。

Pica8 の CEO 兼創設者の James Liao 氏
Pica8 の CEO 兼創設者の James Liao 氏