IBM Research の研究者たちは、世界で最も小さい映画を公開した。その映画では、事物を構成する最小単位が主人公になっている。「原子」だ。

「A Boy and His Atom(少年と原子)」と名付けられたこの映画は、130個の原子を正確に配置して撮影された、およそ250フレームの画像によって構成されるストップモーション(コマ撮り)ムービー。Guinness World Records(ギネスワールドレコーズ)により、世界最小と認定された。

IBM、世界最小の映画の主人公に「原子」を指名
IBM Research による映画「A Boy and His Atom」
原子(左)と少年(右)が楽しく遊ぶ様子が描かれている

同映画は、主人公が1つの原子と仲良くなり、楽しく遊ぶ様子を描いている。少年と原子は、踊ったり、キャッチボールをしたり、トランポリンの上を跳ねたりする。

世界最小の映画「A Boy And His Atom」

IBM Research の主任研究員である Andreas Heinrich 氏は、声明の中で次のように述べている。

「原子を捕え、配置して人や物の形を作り、オリジナルの映画を原子レベルで製作することは、まさに科学と呼べるもので、これまでにない新しい研究だった。IBM では、研究者は単に論文を読むだけでなく、実践をしている。この映画は、原子スケールの世界を共有するための楽しい方法だ」

この映画を製作するために、IBM は同社が発明した「Scanning Tunneling Microscope(走査型トンネル顕微鏡)」を利用して原子を動かした。IBM Research の研究員である Christopher Lutz 氏は、次のように説明している。

「このノーベル賞を受賞したツールは、原子で構成された世界を視覚化可能にした最初のデバイスだ。重さは2トン。摂氏マイナス268度で動作し、原子の表面を1億倍以上に拡大できる。温度、圧力、振動を正確にコントロールする能力を保有しているという点で、IBM Research は原子を非常に正確に動かせる数少ない場所の1つとなっている」

この映画を製作したチームは、世界最小のストレージの研究も行っている。同チームは1ビットの情報をわずか12個の原子に記録可能な方法を発見した。これに対し、現在我々が通常使用しているコンピューターや電子機器では、1ビットのデータを格納するのに、およそ100万個の原子が必要とされるという。この技術の商用化に成功すれば、爪の先ほどのサイズの小さなデバイスに、過去に世界で製作されたすべての映画を保存することも可能になると、IBM Research は説明している。

この次世代の原子スケールメモリ技術は、ビッグデータ時代の膨大な量のデータ保存に活用可能だとという。Heinrich 氏は、次のように説明している。

「データの作成と消費が大規模なものになっていくにつれ、データストレージにはさらなる小型化が要求されている。やがては原子レベルまでの小型が要求されるようになるだろう。IBM は、新しいコンピューティングアーキテクチャにおける新たなデータ保存方法の構築で、この映画を製作したのと同じ技術を適用していく」