NASA が開発に関わり、現代社会に欠かせなくなったものは、Tang とベルクロだけではない。NASA は、地上の IT 世界を作り変えるクラウドテクノロジーの登場にも重要な役割を果たしていた。

NASA で IT 部門の CTO を務めた Chris Kemp 氏は、NASA によるクラウドプラットフォーム開発で指導的な役割を果たした。Nova として知られる9,000行のオリジナルのコードは、OpenStack クラウドプロジェクトの基盤となっている。今では OpenStack は、IBM や Dell、HP や Cisco、AT&T や Intel などの大手ベンダーの支持を得ている。Kemp 氏は2011年に NASA を去り、現在は、 商業的にサポートされた OpenStack 搭載製品を広めるためのスタートアップ企業 Nebula の CEO を務めている。

InternetNews.com との独占インタビューで、Kemp 氏は、オープンソースクラウドの取り組みが始まった経緯と、NASA が既に受けている恩恵について語った。

OpenStack を生んだ NASA のスタートアップ精神
InternetNews.com との独占インタビューに応じた Kemp 氏

■ Google に触発された

Kemp 氏が2006年に NASA で働き始めたとき、彼は Google との提携事業を担当した。その時の経験が、コンピュータリソースの利用方法に関する Kemp 氏の考え方を形成した。Kemp 氏はこの経験について、次のように語った。

「Google との業務を通して、従業員1人1人が無限のコンピューティングリソースとストレージにアクセスできることが、どれだけ大きな成果をもたらすかということに気づいた。そして Googleで働く人々は、まさにそれを手にしていると実感していたのだ」

Google とは対照的に、NASA のエンジニアたちは、コンピューティングリソースに関しては、予算の制約を受けていた。Kemp 氏は、NASA のエンジニアに対して、コンピューティングリソースとストレージインフラへのアクセスを与えたらどうなるかを試した。「驚くべき変化が起きた」と Kemp 氏はこの試みを表現している。

Kemp 氏と NASA のチームは、他の組織でも同じシステムが使えるようにこれを広めていった。その試みはホワイトハウスにも注目されるものとなった。

■ スタートアップ CEO

NASA のクラウドコンピュートの取り組みを生んだ彼のアプローチは、スタートアップの精神から生まれた。Kemp 氏は、NASA で働く前は、Classmate.com などのスタートアップの業界で、幅広い経験を積んでいたと述べた。Kemp 氏は自らの経歴について、次のように説明した。

「私はずっと、創設者や CEOの役割を務めてきた。NASA にいた時は常に、自分の役割を事業家ととらえ、自分のチームをスタートアップ企業のチームと考えていたのだ」

Kemp 氏は 、スタートアップ企業のチームの場合と同様に、NASA のエンジニアのチームの意欲を刺激した。彼は組織全体から幅広く人材を探し、重要な役割を与えることで意欲を引き出そうとしたのである。彼はメンバーたちが、それぞれの役割の重要性を認識するように働きかけた。

NASA のクラウドコンピューティングのプロジェクトをオープンソースにし、OpenStack に移管する際に、Kemp 氏はさらに多くのことが可能であることに気がついた。そこで、NASA は2010年に、OpenStack プロジェクトのために、Rackspace と提携した。Kemp 氏は OpenStack の開発を支えた人々について、次のように語った。

「NASA では、我々はコミュニティを触発することができ、OpenStack の業績の多くは、宇宙計画に触発されている人々に支えられていた。彼らは、NASA が太陽系を探求するための手助けの一環として、コードを作ることで、プロジェクトに貢献したいと望んでいたのだ」

■ NASA で最も成功したプロジェクト

OpenStack は今日では、クラウド技術の基盤として、Cisco や Dell、HP やその他の組織から支持を受けている。OpenStack のプロジェクトはあまりに順調であるため、NASA の積極的な関与はもはや不要となった。

NASA はごく最近まで、OpenStack の取り組みの一環としてのコード作成を継続してきた。

Kemp 氏は OpenStack を、NASA で最も成功したプロジェクトだと指摘する。

「NASA はテクノロジーの商業化のために、何十億ドルもの資金を投じている。資金は宇宙計画のために投資されたものだが、それを米国の一般市民にも役立つものに作り変えようとしているのだ。OpenStack は NASA の歴史において、最も成功した副産物と言えるだろう」

OpenStack は3兆ドルの規模の新たな IT 市場を作り出し、企業がイノベーションを起こして人々の生活を豊かにする、全く新しい時代を到来させるものとなるだろう。OpenStack の成功は既に NASA に恩恵をもたらしている。NASA は、新たな開発をしなくても、OpenStack のクラウドサービスを買えばよくなった。

Kemp 氏は、今後の NASA と OpenStack の関わりについて述べた。

「Nova と Nebula のチームは、OpenStack を飛躍的に進歩させた。そのため、NASA は今では、Dell や HP、または他のホストの企業から、OpenStack のテクノロジーを買うことができる。NASA はもはや、このプロジェクトを育てる必要はなくなった。他の技術同様に、商用エコシステムからテクノロジーを手に入れればよいのだ」

Kemp 氏は、NASA がプロジェクトから身を引き、プライベートセクターが OpenStack と共にプロジェクトに参加できるようにしたことを、適切な対応だと評価し、次のように述べた。

「ミッション完了!」

「ミッション完了!」と述べた Kemp 氏
「ミッション完了!」と述べた Kemp 氏

Sean Michael Kerner
Sean Michael Kerner は、InternetNews.com の主任編集者。