Ubuntu の主要な商業的スポンサーである英国 Canonical が、中国へと向かっている。

Canonical は、中華人民共和国工業情報化部(Ministry of Industry and Information Technology:MIIT)と提携を結び、中国向け Linux OS のリファレンスアーキテクチャの構築を目指す。同社はこのプロジェクトの一環として、北京にある国防科学技術大学(National University of Defense Technology:NUDT)の CCN オープンソースイノベーションジョイントラボにも参加するという。

同プロジェクトから最初にリリースされるのは、中国ユーザー向けに開発される Ubuntu Linux 「Kylin(麒麟)」。これは、4月の Ubuntu 13.04 リリースと同時にデビューする予定だ。

Ubuntu Kylin が提供する中国独自機能としては、中国語入力機能や中国対応カレンダーの搭載の他、百度やタオバオといった中国 Web サイトとの統合サポートなどがあげられる。

Canonical CEO である Jane Silber 氏は、InternetNews.com に対し次のように語った。

「今回の提携は、数か月にわたる交渉の末に実現したものだ。Canonical による現地チームはかなりの規模のもので、中国の OEM 企業に対して Ubuntu をプリインストールした PC を製造し、Ubuntu を小売市場で販売するよう働きかけてきた。こういった働きかけにより、政府機関を含む企業向け市場で Ubuntu のシェアは高まりつつあり、中国コミュニティも成長を見せている」

現時点では、Canonical が中国市場でどの程度の売上を得られるのかはわからない。だが、中国市場における Ubuntu のチャンスは大きいと言えるだろう。Silber 氏は次のように述べた。

「我々は、デスクトップ市場に限らず、モバイルやクラウド市場においても、Ubuntu が中国で成功する可能性は非常に高いと考えている」

中国における Linux

Canonical による今回のプロジェクトがスタートする以前にも、中国では Linux が利用されてきた。

2004年には、Linux Foundation の前身である OSDL が中国に設立された。当時、中国の Linux 市場は TurboLinux が支配し、中華人民共和国鉄道部などでも利用されていた。

Oracle が支援する Asianux も中国での Linux の成長に寄与した。

また、Novell が提供する SUSE Linux Enterprise Server は、Microsoft Windows 環境との相互接続ソリューションにより、一時期中国では群を抜くシェアを得ていた。

Canonical も中国市場では新参者というわけではない。Silber 氏は、Canonical が中国で最初に従業員を雇ったのは、2006年だったと述べた。

「共同作業には、いくつもの困難があった。それには、異文化によるビジネス慣習の違いといったものを超えたものもあった」

困難の例として Silber 氏は、Ubuntu Kylin の開発を Ubuntu コミュニティでオープンに行うこと自体をあげた。Silber 氏は、Kylin のエンジニアを昨年末にコペンハーゲンで開催された Ubuntu Developer Summit に参加させたという。また、Kylin エンジニアには、仕様書とコードを Ubuntu のこれまでの慣習に従って書くよう依頼したと述べている。

「オープンソースプロジェクトの多くは、世界各地からの貢献で成り立っている。だが、実際には、貢献者は1つか2つの地域に集中している。中国と共同作業をすることで、我々は我々独自の開発スタイルやそれをオープンに維持することを、米国や欧州のタイムゾーンと言語から、他の地域へと拡張していく必要があることを再認識した。今回、Canonical は中国と共同作業を実施したが、今後は他の地域からの参加が増加することを期待している」