ここ数週間、Linux 関連ニュースサイトは、Microsoft がリリースするという Ubuntu 版 Office スイートの話題で持ちきりだ。これが何年か前のことだったら、Microsoft が Linux 向けのアプリケーションをリリースするなどありえないとして、一笑に付されたことだろう。だがここ最近の Ubuntu 人気の高まりとモバイルへの取り組みにより、Ubuntu はメディアのお気に入りの話題となりつつある。では、今回の噂は、Microsoft がついに Linux を認知したことの証拠なのだろうか? それとも、根も葉もないものなのか?

私個人としては、Ubuntu 版 Microsoft Office のリリースは、十分にありうると考えている。

Ubuntu 版 MS Office の Linux に与える影響とは

ここ数年、Microsoft は Linux へのバッシングを止め、その取り込みを図っているように見える。

Microsoft は、いまや Linux カーネルへの有力な貢献企業の1つ。Microsoft 製品が、そのオープンソースによる代替品よりも高品質であるという考えは捨ててはいないようだが、私が見る限り Microsoft は、Linux が侮れない勢力になりつつあるという現実を受け入れ始めているようだ。

Microsoft が Linux 版 Office を2014年にデビューさせるとしたら、まずは Ubuntu 版がリリースされ、他のディストリビューションがそれに続くことになるだろう。

Office for Ubuntu がレッドモンドのソフトウェアの巨人にとっての新たな収入源になることは間違いない。だが、それ以上に、Linux 世界へのメリットが大きいという事実を、我々は認めなければならない。Linux で Microsoft Office が使えないということに対しては、企業ユーザーの多くが不平をこぼし続けてきた。LibreOffice や Google Apps は多くの Linux ユーザーに Office の代替として利用されてはいる。だが、MS Office 形式で送られてきた文書ファイルをこれらのアプリケーション用に変換する際にはフォーマットが崩れるなどの問題が生じがちで、これを嫌う企業ユーザーは多かった。

Microsoft が Office for Ubuntu をリリースすれば、この事態は大きく変化することになる。Windows から Ubuntu に移行したがらない企業ユーザーの「MS Office がないから」という言い訳はもはや通用しなくなるからだ。もちろん、Microsoft Office が Linux 移行へのすべての障害を無くすわけではないが、それでも出発点としては十分だ。

Ubuntu 版 MS Office の LibreOffice に与える影響とは

企業ユーザーは、プロプライエタリな Office スイートは、見かけもよく、パフォーマンスも高く、より優れた機能性を提供してくれるものと信じて疑わない。私に言わせれば、リボンインターフェイスはひどいものだし、パフォーマンスはどっこいどっこいだと思う。だが、機能性についての言及は幾分かは真実を含んだものだ。LibreOffice にプラグインを追加したとしても、MS Office の提供する機能性と、バンドルされたテンプレートにはかなわないからだ。

The Document Foundation は最近、LibreOffice 4.0 をリリースした。もし、Microsoft Office for Ubuntu がリリースされたとして、LibreOffice 4.0 はエンタープライズ市場で企業ユーザーに選ばれるだろうか?

無理だろう。

私なら LibreOffice を選択する。だが、企業ユーザーは間違いなく MS Office を選択するはずだ。彼らは MS Office による膨大な文書資産を保有している。これらを捨てて LibreOffice に移行することは考えられない。

Ubuntu 版 MS Office の Google Apps に与える影響とは

LibreOffice とは異なり、Google Apps はすでに大手企業からの採用が進んでいる。これらの企業は、MS Office の代替として、LibreOffice ではなく、Google によるエンタープライズソシューションを選択したのだ。この事実から、MS Office が Linux に登場した場合、その最大のライバルとなるのは Google Apps であると私は考えている。

企業ユーザーは Linux の世界でも、Microsoft Office ではなく Google Apps を選択するだろうか?企業 IT の世界では、それはすでに起こり始めていることだ。Microsoft が Linux に参入する時期が遅すぎることを考えれば、Google は Microsoft Office の登場をなんら恐れる必要はないだろう。

Linux 世界における Microsoft の居場所とは?


Google は Linux 世界で Microsoft より若干先を行っている。とはいえ、企業ユーザーの多くはいまも Google Apps のようなクラウドソリューションではなく、パッケージ製品としてのオフィススイートを求めている。そして、そのような企業ユーザーの要求を、LibreOffice は完全には満たせていない。つまり、ここが Microsoft の居場所となるだろう。

一方で、Linux の個人ユーザーは LibreOffice の利用を継続するだろう。私自身も LibreOffice が好きだ。インターフェイスは古臭いものになりつつあるが、安定しており、私のしたいことはすべてできる。そして、無料だ。

このような世界での戦いを Microsoft はしたことがないはずだ。Microsoft は、新たに Ubuntu の個人ユーザーと対面したとき、それを Microsoft の顧客として獲得することが想像したこともないほど困難なものであることを知るだろう。