米国電気電子技術学会(IEEE:The Institute of Electrical and Electronics Engineers)は、ナノサイズから中型までの小型ロボットに、将来、人間の生活に変化をもたらす画期的な用途が期待できる、という予測を発表した。

発表によると、体内から健康を監視して薬物を投与するナノロボット、捜索救助チームに重要な情報を提供する蛇型ロボット、また食の安全に関連する問題の発生を最小化する機能を持つ監視専用ミニ小型ロボットなどが、ヒトの寿命に大きな影響を与えるようになるそうだ。

IEEE フェローで南カリフォルニア大学のロボット工学と組込みシステムセンター(Center for Robotics and Embedded Systems)の創設者でもある Maja Mataric 博士は、次のように述べている。

「ロボットのサイズと人間によるロボット受容の関係は、ロボット工学の分野で常に研究されているテーマだ。これまでの研究から、人体の75%未満のサイズのロボットであれば、広く受け入れられることがわかっている。この知見に基づき、現在は、近い将来の我々の生活を向上させるさまざまな用途に使用される小型ロボット技術の開発の躍動期にあるといえる」

■ロボットが注射、血管も掃除する

病気とヒトの免疫系の異常を監視するミニモニター、人体に注射する微小サイズのナノロボットの開発が進んでいる。微小サイズのナノロボットは、疾病や栄養素を人工知能で自動的に見分ける。複数のナノロボットを使うと、ロボットが人間の身体の内面の健康状態を把握できるようになる。

IEEE メンバーでフリーのロボット専門家、Antonio Espingardeiro 氏は、次のように述べている。

「健康の監視と維持を担うこの超小型ロボットが、2030年までに寿命の延長に寄与することが有望視されている。ロボットは、疾病の検出や動脈内の清掃だけでなく、インシュリンなどの薬物の投与も行うようになるだろう。こうした機能を組み合わせることで疾病を初期段階で特定して処置できるため、長期間人体を正常に機能させ続けることができる」

将来ミニロボットが人間の平均余命を延長する―IEEE 予測
がんと闘うマイクロボットのイメージ(出典:IEEE)

■ヘビ型ロボットで災害被害者を削減

ビルの崩壊、自然災害、核関連災害後の被災者の安全確保には、捜索救出ミッションが極めて重要。靴箱より小さいサイズでヘビのように動くことができる小型ロボットなら、瓦礫の中を進んで被災地の初期構造をスキャンしたり、人命の探索や大気の安全性を評価するなど、重要な機能を実行できる大きなメリットになる。

緊急情報科学センター(Center for Emergency Informatics)のディレクターで、Fast Company により、テクノロジー分野で最も影響力のある女性に選出された IEEE フェロー、Robin Murphy 博士は、次のように述べている。

「捜索救助ミッションでは多くの場合、初期救援隊は元々の被災者と同程度の危険を背負うことになる。2030年には、捜索救助活動に小型の地上ロボット、ドローン(無人機、AUV)、遠隔操作の水中探査機(水中 ROV)を利用、死者を50%削減し、最大で2倍の迅速な経済復旧が可能になるだろう」

■食品製造もロボットが監視

公衆衛生と安全性リスク管理ソリューションを主導するグローバルプロバイダー、NSF International は、毎年32万5,000人が、食品媒介性の疾病で入院している、と算出している。

食の安全に関連する問題発生を最小化するために、食品製造プロセス全体の動作条件と周囲条件を監視する専用ミニロボットが開発されている。IEEE メンバーで、ニュージャージー工科大学(NJIT)の機械および経営工学科の教授、Paul Ranky 博士は、次のように述べている。

「魚に含まれる鉛の量、チーズの熟成過程における湿度、ワインの発酵段階における酸性度のいずれの分析でも、ミニロボットは味や質の向上だけでなく、食品媒介性疾病の可能性を最小化するのに必要な深い洞察をもたらしてくれる」

■次世代レベルのロボット工学に必要な形態形成

現在、エンジニアは、ロボットの形状を目的にあわせて変化させる方法を探っている。Antonio Espingardeiro 氏は、次のように述べている。

「技術面ではまだ研究が必要だが、理論的には、形態形成ロボットは球体にも、一時的には橋にも、潰れて小さくもなり、引き伸ばされて障壁を作ることもできる。この技術の将来的な用途としては、建設、製造、交通管理、捜索救助の分野での応用が考えられる」