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台頭する「ブラグラマー(Brogrammer)」たちと、どう付き合えばよいのか?

Eric Spiegel
2012年5月17日 / 10:40
 
 
「あんなポスターは、フラタニティハウス(米国の大学のソーシャルクラブ)以来見たことがない」

私は妻と夕食を取りながら、自分の新しい職場の初日の話題で妻のお腹を一杯にしつつあった。その創業間もないスタートアップは、従業員こそ少ないが顧客は急増しており、私はそこで顧客サービスの管理担当者として採用され、かなり興奮していたのだ。

採用面接を受けたとき、私は開発者たちの作業スペースには入らなかった。勤務初日、CEO が社内を案内してくれたときに、私はそこに初めて足を踏み入れることになった。

社員の平均年齢は25歳といったところだろうか。全員が男性だった。

私が最初に握手をした開発者は、チームリーダーの Jason。ボルティモア・オリオールズの帽子を前後逆さにかぶり、短パンで T シャツ。素足にスニーカーを履いていた。T シャツには、女性の体のラインがわかるシルエットと「Coders Do It Better」という文字がプリントしてあった。

私は、「面白い T シャツだね」と話しかけてみた。

Jason は、真剣な表情で「どこが面白いの?」と聞き返してきた。

気づまりな沈黙が続いたあと、Jason は「ちょっとからかってみただけだ」と言い残し、椅子の向きを変えて自分の机へと戻っていった。

Jason の部屋の壁へと視線を移したとき、私の目は大きく開いていたに違いない。そこには、真っ赤なフェラーリの上に横たわった、真っ赤なビキニの女性のポスターが貼ってあったのだ。ポスターには「Red and Juicy」と書かれていた。

CEO は私を部屋から連れ出した後も、ポスターについて何も言及しなかった。私は、CEO はあれを大目に見ているのだろうと判断せざるを得なかった。

だが、あのポスターは、不愉快なものだった。そして、これが私が「ブラグラマー」の世界へ踏み込んだ第一歩となった。

台頭する「ブラグラマー」

おそらくは、私は中年の域に差し掛かり、少しばかり考えが保守的になりつつあるのだろう。私は、20代でプログラマーとして働き始め、以来ずっと男性ばかりの集団で働いてきた。だが、これまではあのようなポスターを目にすることはなかった。人事部が黙っていなかったからだ。

この話を妻(妻は人事担当として働いている)にしたとき、妻はため息をついてこう言った。

「そのうち、訴えられるわね」

これは「ブラグラマー」文化を端的に示した出来事と言えるだろう。

私は最近、ブラグラマーが台頭しているという CNN の記事「In tech, some bemoan the rise of 'brogrammer' culture(IT 業界は「ブラグラマー」文化の台頭を嘆く)」を読んだ。ブラグラマーとは、映画「ソーシャルネットワーク」でも紹介された、若い男性を中心としたこれまでとはまったく違うタイプの技術者たちのことだ。

ブラグラマーとは、「プログラマー(Programmer)」と「ブラ(Bro)」から作られた造語。「ブラ(Bro)」とは、親しい間柄での挨拶で使われる「よお」とか「兄弟」といったニュアンスの言葉だ。

ブラグラマーは、「ナード」や「ギーク」などと呼ばれれてきた従来の「プログラマー」とは、その容姿からも一線を画す。多くは体をジムで鍛えており、腹筋は割れている。仲間たちと共通するタトゥーを入れたがる傾向にある。ギークは眼鏡をかけていることが多いが、ブラグラマーはデザイナーズサングラスを好む。好きな音楽は Dave Matthews や Jack Johnson。ギークは腹が減ったらハンバーガーを食べるが、ブラグラマーはプロテインを飲む。ポロシャツの襟を立て、夜な夜な仲間と連れだってビールを飲み歩く。

CNN は、最近の IT 系のスタートアップ企業にはこのような容姿の、野蛮なメンタリティーを持つ技術者が集まりがちだと報じている。

ブラグラマーに対する反発

ともかく、私はこの会社での勤務を開始した。あの派手なポスターはまだ貼られている。若い男性ばかりの集団では、こういうことは珍しいことではない。だが、ここはソーシャルクラブとは違うのだ。何かをしなければならない。

まずは私は、女性社員を雇うことから始めてみることにした。採用された Jane は20代前半の女性で、会社のリラックスした雰囲気が気に入ったと言ってくれた。

だが、Jane も私同様、採用面接では開発者の部屋に足を踏み入れてはいなかったのだ。

Jane が入社した最初の週、彼女と私は開発者チームと会議室にいた。Jason は仲間のブラグラマー達と軽口を叩きあい、最近捨てた彼女の話題で盛り上がっていた。だが、Jane のいるこの場でその話題がふさわしいわけがない。

私は彼らの会話を遮りこう言った。

「Jason。捨てた女の話は別の機会にしてくれ。仕事の話をしようじゃないか」

Jane が入社して1か月ほど経ったころ、Jane は一緒にランチをとらないかと提案してきた。どうも、何か話したいことがあるようだ。私がハンバーガーにかぶりついたそのとき、彼女はこう切り出してきた。

「仕事はとても気に入ってます。でも、あの女性差別的な環境で働くのはもう我慢できません」

私の胃はキュッと縮こまり、食欲は消え去ってしまった。いつかはこの日が来るだろうとわかってはいたのだが、今日まで何の行動も起こさずに来てしまっていたからだ。

Jane は、社内のもう1人の女性のことも心配だとも語り始めた。この会社の CFO は女性だ。

Jane は「CFO は、『男っていうのは、そういうものなのよ』って言ったんです。信じられます?」と説明した。

ランチの間中、私は必死で彼女を落ち着かせるよう努めた。この件で CEO と話をすることも約束した。彼女は、事態が変わるかどうか、様子を見ると言ってくれた。

さて、私が CEO にこの話を切り出すと、彼はただ笑ってこう言ったのだ。

「おいおい、頼むよ。おれたちの文化を理解しなきゃいけないのは、彼女のほうだろ?男ってのはそういうものなんだから」

なんてこったい。CEO と CFO はすでにこの件で話し合っていたに違いない。

私は反論した。

「これは大きな問題に進展するかもしれませんよ。女性差別問題です」

だが、CEO は信じなかった。

「うそだろ?あいつらは、最高の製品を作っているし、おれたちに大金を稼がせてくれているんだぜ。Jane がここを気に入らないというなら、彼女が去るべきじゃないのか」

言い忘れていたが、CEO はまだ20代の後半。開発者たちよりもちょっとばかり年上という年代だ。このように感じても不思議ではない。

私は CEO を諦め、Jason と直接話をすることに決めた。私はある晩、Jason 以外が皆帰宅した後で、開発室へと足を踏み入れた。

「Jason、ちょっといいかな?」

Jason はデュアルモニターからは目を離さず、「あぁ」とだけいった。

私は彼に Jane の件を説明し、今後我々が企業として成功していくには、「Red and Juicy」のようなポスタ―は剥がすべきだと主張した。

Jason はタイピングをやめ、ねむたそう目で私を見た。あくびをし、栄養ドリンクを振りながらこういった。

「ポスターは剥がさないよ。剥がせというなら、おれは会社を辞めるね」

その後も説得を続けてみたが、ついに私は諦めた。Jason は、自分が CEO に認められており、望むことは何でもできることを知っていたのだ。

現実的な調停

私にとって(そしておそらくは会社にとって)ラッキーだったことは、その翌日に CEO が投資家を呼び、社内を見せてまわったことだ。

その投資家は、女性だった。

驚いたことに、社内にはその女性投資家を気遣って、事前にポスターを剥がそう考えたものは皆無だったのだ。おそらく、ブラグラマーたちは、女性差別的なものを壁に貼りつけることは、許容範囲だと考えたのだろう。その会社に、明るい展望さえあれば。結局のところ、投資家にとって重要なのは、資金を増やせるかどうかなのだから。

だが、彼らのその考えは間違いだった。

投資家は、非常に落ち着いた態度で CEO に説明した。もし、資金を調達したいと考えるのであれば、あのポスターは剥がすべきであると。彼女は、自分の資金は有効に使いたいと考えており、裁判沙汰で無駄に浪費するのは望まないと語ったのだ。

翌日、Jason のポスターは剥がされた。偶然にも(おそらくはそうではないのだろうが)その日、Jason には大幅な昇給があった。このため、Jason は会社を辞めることはなかった。

Jane の怒りは鎮まった。時折、ブラグラマー達の会話は、女性差別ぎりぎりのところに踏み込んでしまうことはあるけれど。でも、この文化は、男性がソフトウェア開発の分野を支配している限り、根本的に変えることは難しいかもしれない。

Jason は、ビキニのポスターの代わりに、スターウォーズのポスターを貼ることにしたようだ。

ありがたいことに、ポスターの中のレイア姫は、あまり露出の多くない衣装をまとってくれている。
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