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ソフトウェア開発におけるインタラクションデザイン(5) (1/3)

株式会社 SRA 先端技術研究所 中小路 久美代
2011年9月22日 / 22:00
 
 
アプリケーションソフトウェアはもちろんのこと、最近は組込機器の多くもインタラクティブ(対話形)になってきました。インタラクティブなシステムにおいては、「機能品質」に加えて「操作品質」がシステムの善し悪しの決め手となります。この流れに伴って、システムと利用者のやりとりをデザインする「インターフェイスデザイン」も「インタラクションデザイン」という考え方に進化しています。

本シリーズでは、より高い操作品質を実現するための「インタラクションデザイン」について、数回にわたり解説したいと思います。

前回書いたように、デザインという営為は、創造性を伴う極めて人間的なアクティビティです。手順に従って処理をすれば答えが出てくる、といったようなアクティビティではありません。インタラクションをデザインしていくにあたっては、自分の中のデザインプロセスを動かしてくれるようなツールや表現を使うといった工夫が重要になります。

私たちは、アプリケーションシステムのためのインタラクションのデザインを行うにあたっては、次の3種類の情報や表現、ドキュメントを使ったり作り出したりしていくことで、デザインプロセスを進めやすくなるだろうと考えています。

(1)考えを進めていくための材料になるようなもの
(2)考えるべきポイントをきちんと押さえるためのガイドとなるもの
(3)デザインした結果を記録し伝えるためのもの

インタラクションのデザインプロセスにおいて作り出すものを、ここでは広く「ドキュメント」と呼ぶことにします。これは「デザインアーティファクト」と呼ばれたりすることもあります。ここでドキュメントと呼ぶものは、印刷して配布できるようにフォーマットされたようなフォーマルなものに限らず、書き貯めたスケッチや、使うべき用語のリスト、参考にしたウェブページとそのURL、参照するソースコードや筐体設計書の断片、やりとりしたメールなども広く含んだものです。

以下に、これら3種類のドキュメントを、順に説明していきます。

(1)考えを進めていくための材料になるようなもの

考えを進めていくための材料になるようなドキュメントとしては、デザインの対象となるプロダクトのアイディアを理解したり、現状のプロダクトの状態を把握したり、これまでの経験でわかっている問題点を理解したり、日頃から考えているアイディアを書き出したりしたようなものがあります。

例えば、既存プロダクトを改善するようなインタラクションをデザインするのであれば、

(ア)既存プロダクトの全スクリーンショットを撮ったもの
(イ)これまでに指摘されてわかっている問題点のリスト

などです。また、

(ウ)そのシステムの機能やインタフェースで利用される用語を分類したリスト

も重要です。プロダクトのコンセプトからデザインしようという時には、

(エ)面白いなと思っている既存技術のリストやデザインしようとするプロダクトとは直接関係ないけれどなんだか気になっているガジェットのリスト

などを利用します。

それぞれについてもう少し詳しく説明してみます。

(ア)既存プロダクトの全スクリーンショットを撮ったもの

既存プロダクトの全スクリーンショットを撮るにあたっては、できるだけ網羅的に、大量に、パラパラ漫画のような形態で見ていけるようになっていることが望ましいです。ユーザの典型的な操作手順に従って、全ステップをもれなく撮ることで、ユーザーが既存システムとどのようにインタラクションをしているのかを、ムービーのように体験することができます。

同じサイズ、同じ解像度でとっておき、ファイル名で順序が決まるように作っておくと、例えば Mac OSX であれば、preview で前後しながら流して見ることができます。Windows であれば、画像ビューアなどでスライドショーとして何度も流して見る感じになるかと思います。高速で、何度も行き来して見られることが重要です。通常、何百枚、時には何千枚になるかもしれません。

(イ)これまでに指摘されてわかっている問題点のリスト

問題点のリストは、例えばそれまでにヘルプデスクに報告されている問題点であったり、自分たち自身でプロダクトを使ってみて気になっている点であったりをためてリストにしたものです。

この場面を直したい、これらの一連の流れがおかしい、この状況でこの操作がわかりにくい、といったように、レベルを気にせず多くの事例を挙げておくことが望ましいと考えます。何百個という単位でこれがあるのであればグルーピングといったことを考える必要があるかと思いますが、何十個といったレベルであれば、プロジェクトメンバーで、つらつらと眺めておくだけでも大いに効果があると思います。

(ウ)そのシステムの機能やインタフェースで利用される用語を分類したリスト

用語分類リストは、意味や定義が決まっている業界用語、自社で意味を与えた独自のフレーズ、日常的に使われている、説明する必要があまりないような言葉、といったくくりで整理したものです。

名詞のみならず動詞についても作成しておくことで、どの用語を今自分たちが使っているのかを自覚しやすくなります。

インタラクションデザインをする上で、用語を分類し使っていくことの重要性はあまり認識されていないように思います。デザインを進めていく上で、プロジェクトのメンバー間で意思決定をおこなったり優先順位づけをおこなったりするにあたっては、漠然とした機能やインタラクティビティ、デバイスなどを指し示す用語を用いると、誤解を招きやすく不要な混乱の原因となりがちです。

特に既存プロダクトの改善といった状況では、ある特定の機能の固有名詞(e.g.「一発選択機能」といったようなもの)を使って、現状のプロダクトを指しているのか、これから作ろうとするもののことを指しているのか、あるいは機能の一部を指しているのか、統一がとれないままに、プロジェクトメンバー間で不毛な議論が白熱したりします。使用する言葉の統一は、プロダクトが出来上がったときのマニュアルを作る上でも、また、外部の部署との情報交換を行う上でも非常に重要です。

(エ)面白いなと思っている既存技術のリストやデザインしようとするプロダクトとは直接関係ないけれどなんだか気になっているガジェットのリスト

面白いなと思っている既存技術のリストのWebページのスナップショットや、デザインしようとするプロダクトとは直接関係ないけれどなんだか気になっているガジェットの写真などは、コンセプトをデザインしていく際の、鍵となる言葉や状況、視点などを、プロジェクトメンバー間で共有していくためにとても有益です。各自が持ち寄ったものを説明しながら、その際に出てくる言葉や図形表現をきちんと記録したり、文章として表現したりしていきます。それを表現するのに適した構造を作っていったり、共通して現れるボキャブラリ(語彙)を整理していったりすることになります。

(2)考えるべきポイントをきちんと押さえるためのガイドとなるもの

デザイン作業を進めていく上で、考えるべきポイントがいくつかあります。多くの場合デザインに携わるひとたちは自分でそれらのポイントを把握しています。しかし、実際にデザイン作業に携わっていくうちに、それを忘れてしまったり、他のことのほうが重要なように思われてきてポイントをポイントとして思わなくなってしまったりすることがあります。このことは、多かれ少なかれ、デザインが人間的な知識活動であることにおいて避け難い人間の性質であると思います。

これを避けるためには、考えるべきポイントを忘れないように、自分たちで自分たちをごまかしてしまわないように、自分たち自身で自分たちの考える道筋をきちんと覚えておくようなドキュメントを準備する必要があります。

鍵になると思っている面白いインタラクティビティのスケッチや、ここがポイントだと思っている場面を表したストーリ、デザインしようとしているプロダクトが利用されているような状況を説明する4コマ漫画、あるいはカードやダイアグラムを利用した機能や概念の整理、といったドキュメントが、このような役割を果たします。

以下で、考えるべきポイントがきちんと押さえられなくなってしまいがちな状況を2種類取り上げ、その際にどのようなドキュメントを使えばよいかということを説明します。
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