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ベストバイの Twitter 活用術(前編)〜従業員2,100人が、たった1つのアカウントで生活者と対話する

ループス・コミュニケーションズ 取締役副社長 福田浩至
2010年3月16日 / 12:40
 
 
1月、ヤマダ電機は、Twitter の活用を開始した。図は、そのアカウントの一覧表だ。国内の家電量販店で最も積極的に Twitter を使っている企業だろう。

ヤマダ電機の公式 Twitter アカウント一覧
ヤマダ電機の公式 Twitter アカウント一覧
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ページの最後には「上記アカウント以外は当社が公式に認めるものではありません。当社を連想させるアカウントにはご注意下さい」と明記されている。公式アカウントは合計17件。オフィシャルアカウント@yamada_official 以外は、地区ごと(首都圏は店舗ごと)に別々に用意されている。

それぞれのアカウントで管轄店舗のタイムセール情報などを配信している。LABI 仙台店では、店員さんの氏名(苗字)を明記しての Tweet も見られる。読んでいて、親近感もわいてくる。方や、図のように某紳士服店のチラシ広告を彷彿とさせる、ユニークなプロモーションが展開されることもある。

ヤマダ電機の Twitter を活用したユニークなプロモーション
ヤマダ電機の Twitter を活用したユニークなプロモーション

このように、アカウントによって独自の工夫にがあったり、Tweet の多さにギャップがあったりするが、全社的な取り組み方針・ポリシーは明快だ。すべてのアカウントのプロフィール欄には、「ヤマダオフィシャル Twitter に関するご意見は受け付けておりません。ご了承ください」との記載がある。

要するに、情報発信のためのツールとして活用していることがわかる。店舗関係者との対話ができないので、あえてフォローしない読者も多いせいか、follower が500件に満たないアカウントも結構ある。following 数もすべてのアカウントで16件。他の公式アカウントを登録しているのみだ。

Twitter は双方向のコミュニケーションツールだ。折角、生活者と対話ができるインフラがあるのに、対話しないのは勿体無い。直接生活者と対話することで、ロイヤルカストマーを獲得できる可能性もある。しかし、大規模な家電量販店で、そのような使い方をするリスクは想像に容易い。

少し考えても、

・応対する店員によって回答内容に矛盾があった場合に収集がつかなくなるのではないか?
・敵情視察目的の競合店の問い合わせにも対応して、情報を与えることにならないか?
・丁寧な応対をするには、相当のコスト(人件費)がかかるのではいか?
・会話をしたから、営業的・ブランディング的な効果がどの程度あるのか?
・クレーマーが増長する機会を与えないか?
・何の関係ない一企業の一サービスに、顧客対応窓口を委ねることは、情報管理上もサービス提供責任上もよろしくないのはないか?
・対応要員を育成する時間も余裕もない。現場は反発するのではないか?
・業務として実施する場合、例えば夜間や休日のツイートは残業扱いとしなければならない。労務管理上も問題があるのではないか?

等々、心配事は尽きない。このあたりの懸念点に解をもたないと、とても Twitter を活用した対話に踏み切ることはできないだろう。

しかし、15万人を超える従業員を抱える世界最大の家電販売チェーン「ベストバイ」は踏み切った。アカウント名は@twelpforce。follower 数は2万4,000人強と世界最大の家電販売企業にしては控えめだ。Tweet 数は2万4,000件を超える。

@twelpforce のタイムライン
@twelpforce のタイムライン
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アカウントの設立が、昨年の7月中旬なので8か月程度の「若い」アカウントだ。平均すると100件/日程度のツイートがなされている計算になる。アカウント立ち上げ時期には、テレビ CM も作っている。今も YouTube で視聴できる。青い作業着を着たベストバイの社員で満員のスタンド。ひとりの人がフィールドから質問を投げかける。即座に大勢が手を上げる。そのうち、何人かが交互に立ち上がり、回答する。

@twelpforce のテレビ CM
@twelpforce のテレビ CM

質問する人・質問内容・回答する人が変わる3パターンの CM 映像が用意されている。サービスのコンセプトを理解するには大変わかり易い。要するに@twelpforce は、生活者の質問に大勢の従業員が回答するためのアカウントだ。

ベストバイは、何の準備も無しに@twelpforce をスタートしたのではない。@bestbuy という Twitter アカウントを2008年11月にスタートさせている。現段階では2009年1月以降のタイムラインのみが確認できる。

立ち上げ当初の Tweet を読むと「商品のディスカウント情報を配信」したり、「マーケティングマネージャの募集」をしたり、「従業員がどのように活用すればいいか問いかけたり」している。一貫性もなく、誰に向かって発信しているのかも定かでない。いろいろ試行錯誤をしてた様子だ。

このアカウントで9か月の経験を積み、2009年7月に@twelpforce を立ち上げている。以降、ホームページや Facebook のファンページ、ブログ、先のコマーシャルなどのメディアでの Twitter アカウントの案内は、すべて@twelpforce となっている。この結果、図のように@bestbuy から@twelpforce にシフトしてきている。

@twelpforce と@bestbuy のフォローワー数の推移比較(赤色:@twelpforce、水色:@bestbuy)
@twelpforce と@bestbuy のフォローワー数の推移比較
(赤色:@twelpforce、水色:@bestbuy)

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@twelpforce と@bestbuy のツイート数の推移比較(赤色:@twelpforce、水色:@bestbuy)
@twelpforce と@bestbuy のツイート数の推移比較
(赤色:@twelpforce、水色:@bestbuy)

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現在の@bestbuy は広報などの情報配信用(といってもそれほど Tweet は多くない)に使われている模様だ。そして、@twelpforce は生活者と従業員の対話(質問に対する回答)に特化した使われ方をしている。前出のヤマダ電機は店舗・地域ごとのアカウントを用意している。ウォルマートも、カテゴリー別に13個のアカウントを用意している。

これに対して、ベストバイの生活者との対話用アカウントは@twelpforce 一つだ。昨年12月、ベストバイのソーシャルメディアマネージャの John Bernier 氏はインタビューで、2,100名の従業員が@twelpforce に参加していると話している。2,100名の誰が答えてもよいのなら、ひとつの質問に100人がバラバラの回答するかもしれない。質問する方も混乱するだろう。誰も答えないのであれば、放置される質問も出てくるだろう。普通に考えたら収集つかなくなるのが関の山だ。

ベストバイのソーシャルメディアマネージャの John Bernier 氏
ベストバイのソーシャルメディアマネージャの
John Bernier 氏

John Bernier 氏はインタビューの中で、運用を軌道に載せたポイントとして、

・80%準備ができた段階で、@Twelpforce をスタートしたこと。
ソーシャルメディアポリシーを準備したことで、2〜3か月の準備期間で2,100名もの従業員が参加するこをと可能にしたこと。
・社員同士、相互に助け合いながらソーシャルメディアのエキスバートに育っていったこと。
connecttweet を活用して、大勢の従業員がひとつのアカウントで Tweet できるようにしたこと。

を上げている。実際のところどのような対話がなされているのか?

次回は、引き続き twelpforce のツイート内容の分析結果や運用ルール、仕組みについて紹介する。


【当コラム執筆は、Looops Communications 副社長 福田浩至 (twitter アカウントはこちら) が担当しています。ご意見、コンタクトなどお気軽に twitter アカウントにどうぞ】

記事提供:株式会社 Looops Communications(ループス・コミュニケーションズ)
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