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テクノロジー

Eclipse が与えたものと可能性

山靖之
2007年4月26日 / 09:00
 
 
■Eclipse とは?

技術者と会話をしていると、 よく Eclipse という言葉を耳にすると思いますが、 それを聞いた管理者の方々は、 Eclipse が何者なのかを正確に理解していない場合があると思います。 いまさら Eclipse って何? とは聞き返しづらいと思いますので、 ちょっとおさらいしてみましょう。

Eclipse を一言で表すとすれば、 統合開発環境(開発者用ツール)の汎用的なフレームワークです。

フレームワークとは、言わば“土台”のようなもので、 それそのものでは”完成品”とは言えず、 その土台の上に何かを載せることで、 はじめて目的を達成するための完成された道具になります。

つまり、Java 開発ツールとして利用されている“完成品”は、 開発者用ツールの“土台”である Eclipse の上に、 Java 開発をするための様々な機能を載せた状態といえます。

現在では、 「Eclipse = Java 言語の開発ツール」という意味で使われることが多いのですが、 柔軟な拡張機能を持つ Eclipse は、 他の言語(PHP、C++ など)の開発環境も利用可能なので、 Java 専用の開発環境という認識は、 厳密にいう正しいとは言えません。

柔軟な拡張性を実現している理由は、 Eclipse のアーキテクチャ(構造)にあります。 Eclipse のアーキテクチャは、 Eclipse Platform という“土台”と、 プラグイン(拡張部分)で構成されます。 Eclipse Platform は、 プラグインによる機能拡張を行う際の接続仕様を公開しているために、 容易に新たな機能を追加できるのです。

その結果、Eclipse 用の様々な機能が、 世界中の開発者によって開発されるようになりました。

また、土台となる Eclipse 自体、 オープンソースソフトウェアとして、 EPL(Eclipse Public License)というライセンス利用許諾の範囲で、 開発者が自由にダウンロードして利用することが可能です。

豊富な機能にプラスして、 手軽に入手できることが、 ここまで広く普及した理由であると考えられます。

Eclipse の構造
*クリックして拡大


■Eclipse の歴史

元々、Eclipse は IBM が自社の統合開発環境として1998年に開発を開始しました。 その後、2001年11月にオープンソース化し、 複数の企業とともに「Eclipse Board of Stewards」を設立しました。 そして2004年4月に現在の「Eclipse Foundation」(非営利組織)に Eclipse に係わる全てを移管することになりました。

IBM は Eclipse の開発に、4,000万ドルの費用を投じたと言われております。

巨額の開発費用をかけて開発したソフトウェアを、 オープンソース化する行為は、 その当時ビジネスの観点で非常に注目を集めました。

しかし、結果的には、当時、 複数企業から商用プロダクトとして販売されていた Java 向けの統合開発環境(IDE)ツールが、 今では、その多くのシェアを Eclipse に奪われてしまいました。

さらに、Eclipse は、 これをベースにして新たな商用製品を開発することが可能であるため、 IBM も Websphere ブランドの IDE 製品をリリースしました。

その製品は現在、Rational ブランドの製品として販売されており、 Java の IDE の勢力図を大きく変化させたことは間違いありません。 

■Eclipse が与えた自由

Eclipse では、 開発ライフサイクルの広範囲をカバーするプラグインを利用することが可能です。

例えば、UML モデリングツール(設計工程で必要になる機能)、 コーディングスタイルチェックツール、単体テストツール、 負荷テストツール、ソフトウェア構成管理ツールなどが利用可能になります。

これらのツールと同じ機能のものは商用の製品としても入手が可能ですが、 すべてを揃えるには、 それなりの投資が必要となります。

つまり、Eclipse で利用可能なツールが豊富であるために、 開発者はツール入手の際に、 無償/有償の選択の自由を得たことになります。

開発プロジェクトに投資可能な絶対額は、 プロジェクトの規模に応じて変化します。 通常、大規模プロジェクトのほうが、 小規模プロジェクトに比べて投資可能な絶対額は大きくなります。 よって、小さいプロジェクトでは、 開発ツールには多額の投資をせず、 プロジェクト規模を鑑みた投資額の決定が必要となります。

開発組織の立場からすると、 組織が小さい時には開発環境にかける投資額は少なく、 組織規模が大きくなるに従って徐々に投資額を大きくしていくことが望ましいでしょう。

しかし、商用製品の導入を前提に考えると、 当初からの投資額が大きくなってしまい、 その結果、組織規模が小さい時には、 ツール導入による開発環境整備が充分に実施できない状況になってしまいます。

Eclipse によって、開発環境に必要な各種機能を少ないコストで揃えることができ、 開発組織の拡大状況をみて、商用製品の導入を検討するなど、 開発組織の投資計画にも自由度を与えた結果となっています。

■開発環境を標準化することの効果

前述のとおり、 Eclipse は開発ライフサイクルの広い範囲をカバーできます。 これを実現するためのプラグインは多数存在し、 どのプラグインを使用するかは、利用者が自由に選択できます。 一般的には、ひとつの開発プロジェクトで利用するプラグインは統一化されています。

理由は、 プロジェクト全体の統制面から、 開発工程ごとに、どのようなツールを使い、 どのように作業を進めるかを標準化する必要があるからです。

例えば、開発者が実施する、 設計→コーディング→テストなどの一連の作業を、 統一的なユーザーインターフェイスを使うことによって、 各作業工程をシームレスに実施可能にします。 開発工程ごとに個別のツールを利用する環境と比較して、 開発者の作業効率を高める結果となります。

また、開発は多くの場合、チームによって実施されます。 その場合に、 新たに参加した開発者に開発環境について教育するコストは、 以前と比較して減少していると思われます。 これは Eclipse がデファクトスタンダードとなったことで、 あらためて Eclipse の利用方法などについて教育する必要性が低くなったことが理由といえるでしょう。 

■Eclipse がもたらしたもの

では、 従来は商用製品として導入していた開発ツールが OSS として無償で入手可能になったことで、 企業に対して何をもたらしたのか、 について整理してみます。

−開発者に対して
 ・開発に用いる様々なツールが統合環境で動作
 ・豊富なプラグインがあるので、開発者が好みのツールを選択可能
 ・その結果として開発効率が向上
−プロジェクト管理者に対して
 ・開発ライフサイクルをカバーするプラグインにより品質向上が図れる
 ・開発者のスキル格差を抑制
 ・プロジェクト原価の圧縮に寄与
−経営層に対して
 ・ITガバナンスの視点からのソフトウェア品質向上
 ・開発プロジェクトに対するツール投資抑制
 ・開発環境に必要な資産の原価償却費の増加抑制


以上のことが、 利用者に様々な効果を与える理由となっていると考えられます。 

■新たな可能性

ここまで、 Eclipse を統合開発環境のフレームワークと位置づけて説明をしてきましたが、 新たな可能性として注目したいのは、 クライアントアプリケーションのプラットフォームとしての Eclise です。

すでに IBM 製品(Lotus Expeditor)は、 クライアントの GUI 機能を Eclipse ベースのアプリケーションとして実現しております。 数年前からアプリケーションの GUI を Eclipse プラットフォームで実現している例はありましたが、 今は、 高度なユーザービリティが求められる傾向がより強くなっています。

高度なユーザービリティ要求に応えるには、 Web ブラウザでの実現可能性には限界があり、 クライアントアプリケーションのプラットフォームも、 選択肢のひとつになってきたと考えられます。 その時の有力なプラットフォームのひとつとして、 Eclipse があげられるのではないでしょうか。

これらの背景から、Eclipse の普及はさらに促進されることが予想されます。

記事提供:サイオステクノロジー株式会社
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