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テクノロジー

ナレッジマネジメントルネッサンス

高塚直樹
2007年4月18日 / 14:30
 
 
統治から協力、そして自律へ

これまでこのコラムでいろいろと考察してきましたが、各回のテーマはどれも、情報をいかに効率的に利用できるか、という観点が根底にあるものでした。その情報活用の場をエンタープライズと想定すれば、それは広義にはナレッジマネジメントに関係すると言えます。

かつての「ナレッジマネジメント」という取り組みはたしかに廃れましたが、そこで目指されたものは廃れてはいません。それどころか、ハードディスクやメモリーが大容量化し、ネットワークが高速化するにつれ、情報は奔流のように私たちの周りに溢れているのですから、今こそ情報の有効活用が重要なはずです。

なぜナレッジマネジメントが失敗したのかということは、そして Web 2.0 という潮流を経験した現在、別な可能性が育まれるのではないかということは、以前に考察しました。そのポイントは、情報提供を強制する管理的なアプローチは失敗したが、自律的な参加型のアプローチに期待できる、ということでした。繰り返しとなりますが、かつてのナレッジマネジメントの取り組みは「マネジメント方式」だったと言えます。

その後、ナレッジマネジメントという文脈とは離れて、コラボレーションという観点を重視した製品が登場してきました。複数の利用者がオンラインで協働するための仕組みを提供するものです。

こういった製品は、旧世代のナレッジマネジメントの管理型のアプローチを捨て、協力型のアプローチを採用した仕組みだと考えられます。しかしこれは、各利用者の自律的な活動がベースとなっているわけではなく、関係者の参加を前提としてコラボレーションするための場を提供する「ワークプレイス方式」です。

ところで、私たちの活動は、人との関係なしに完結することは確かに少ないでしょうが、ほとんどの作業は個人ベースで行われているはずです。ワークプレイスを訪れる時間は一日の作業時間の中でごく限られていて、それ以外の大部分を個人的な作業が占めているのです。

そう考えると、真に情報活用の効率を高めるためには、やはり、個人ベースの作業支援環境こそが重要となるのではないでしょうか。しかし、個人個人の作業を効率化することを最重要視した仕組みは、まだ登場していないのではないようです。

情報を統治しようとしたマネジメント方式、協力する場を提供して参加を要請するワークプレイス方式に対して、自律した個人の作業環境がコラボレーション環境へと連携するものを、仮にワークベンチ方式と呼び、そういう製品をナレッジワークベンチと呼ぶことにしましょう。




ナレッジワークベンチの土台、C3PO

ナレッジワークベンチに期待される要件を考えてみます。

ナレッジワークベンチでは個人を中心として考えることが大前提となります。しかし、それぞれの個人は、決して孤立しているわけではないことが重要です。そのために、複数の利用者が効率的に関係することをサポートする、“Co”で始まる3つのキーワードで表現される機能が、必要となるでしょう。

・Communication(コミュニケーション)
・Collaboration(コラボレーション)
・Coordination(コーディネーション)

以前触れましたが、コラボレーションはコミュニケーションの特殊解だとも考えられます。これまでのグループウェアなどの取り組みは、コミュニケーションを容易にするためのシステムという意味合いが強いものでした。

3つ目のコーディネーションは、複数の利用者、あるいはナレッジを効率的に結びつける調整機能を、ここでは表しています。個人を中心と据えるナレッジワークベンチでは、このコーディネーションという機能こそ重要になります。この機能によるサポートが不十分では、個人を尊重するというアプローチが逆に、分断された個人の集合に過ぎないという結果になってしまいます。

コーディネーションの実現には、「人」に注目することが重要になると思います。自然言語処理の高度化やセマンティック Web のような取り組みはあるものの、現在の技術レベルでは、人間の判断力や理解力をシステムが凌駕できるとは、当面、期待できそうにありません。

そのような技術の開発は重要でしょうが、今、実用に提供することを考えれば、まずは「人」というソフトウェアシステム外の材料を有効活用するアプローチを優先すべきです。

これまでにも、マネジメント方式ではノウフー(Know Who)、ワークプレイス方式ではコミュニティと参加者、あるいは SNS では友達の友達を辿ること、それぞれ「人」をノードとしたコーディネーションの方法が存在しました。

これらの方法のいい部分を踏襲し、さらに融合させることは可能ですし、協調フィルタリングなどの方法を導入することも有効なはずです。

3つの“Co”で象徴される機能が、複数の利用者の連携のために求められる一方で、情報を利用する際の、壁を意識させない工夫も必要となります。

以前、掲示板と Blog の違いを、情報が公開される「場」の違いで考えてみました。その観点を改めて見直すと、バーチャルな「場」は、情報の「公開性」(Publicness)と「所有権」(Ownership)によって決まると考えられます。

かつてのナレッジマネジメント的な取り組みでは、ほぼ全体に公開され、管理者に象徴される個人を超越した存在が情報を所有します。ワークプレイス的な取り組みでは、公開の範囲はより限定的になるでしょうし、何よりも、複数のメンバーが共同で情報を更新するという点で、所有権に特徴があります。

しかし、繰り返しになりますが、実際の業務では、個人的な作業の方が多いはずです。つまり、個人的に管理し、基本的に公開していない情報の操作が存在するのです。




ナレッジワークベンチでは、個人の活動を出発点とします。しかし、それらの個人の活動を孤立させずに必要に応じて効率的に連携させることが眼目となります。従って、所有権や公開性のタイプによって壁を作るのではなく、シームレスに操作可能な環境であることが必要です。




このシームレスな連携は、3つの“Co”機能によってサポートされるのです。

ナレッジワークベンチへの期待、新しいユーザーインターフェイス

アクセスが許可されている情報については、所有権や公開性によって断絶されることなくアクセスできること、それが何よりもまず、ナレッジワークベンチのインターフェイスには重要です。

デスクトップサーチの隆盛で実証されているように、アプリケーションを横断した情報アクセスの効用は明らかです。ナレッジワークベンチでは、そのアクセスの横断範囲を、ローカルディスク内のアプリケーションという観点を超えて広げるものとなります。

そして、その横断的アクセスの手段をサーチに限定するのではなく、以前に整理したように、本質的に異なる情報へのアクセス形態となる Discovery、Recovery、Call、Recall の4タイプの活動すべてを網羅したインターフェイスを提供するべきでしょう。しかも、それらの活動を効率的に連携できるインターフェイスを提供することで、さらに個人レベルでの情報の活用効率が向上するはずです。

そのための手段の一例として、やはり以前にこのコラムで述べたタグ付けのポテンシャルに、改めて着目すべきだと私は考えています。

こういったインターフェイスが実現されれば、情報へアクセスして活用する際の行動に、大きな変化が起きるかもしれません。個人作業なのか共同作業なのか、プライベートなものなのかパブリックなものなのか、あるいは情報アクセスの種類や手法の違い、データソースや形式、つまりアプリケーションの違いなど、これまで存在していてそれが当然と思われていたさまざまな壁はなくなり、そこにはただ、情報を活用する、というピュアな本質だけが残されるのです。

記事提供: アリエル・ネットワーク株式会社
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