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EIP の究極は、多分、ポータルでなくなる

高塚直樹
2007年2月21日 / 09:00
 
 
EIP の存在理由

エンタープライズ向けのコラボレーションツールにカテゴライズされるソフトウェアをリストアップしていくと、おそらくそこには、EIP(Enterprise Information Portal:エンタープライズ インフォメーション ポータル)という言葉が入っているのではないかと思います。

ところが、数年前に世に登場したときからこれまで、私は、EIP というものを実はよく理解できないままでいます。EIP とは、どういう効果を期待されているものなのか、そして、その期待に応えるために、どういう機能を提供すべきものなのか。その疑問についての解答を、いまだに私は見つけられずにいるのです。

もちろん、実際の EIP 製品を通して、EIP に対してどのような機能が一般的に期待されるのかを想像することはできます。しかし、あくまでも機能は手段であって、目的ではないはずです。その機能を提供するということでしか、EIP の存在理由を説明できないとすれば、それは自己目的的なおかしな理屈になってしまいます。

そんなはずはないという思いから、今回は、EIP の存在理由、その目的について、改めて考えてみることにしました。

古典的な入口?

Yahoo!などのインターネット上のポータルサイトをヒントに、エンタープライズのイントラネットにも、入口としての Web ページを用意することで、イントラネット内の各種リソースへのアクセス効率を高められるはず、という発想がそもそも EIP の出発点だったのでしょう。

散逸しがちなイントラネット内の各種リソースへの単一のエントリーポイント、すなわち情報へのハブの役割を担う存在は、なるほど便利そうです。しかし、それだけであれば、リンク集的な Web ページがあればいいだけにも思えます。それをあえて EIP と呼ぶ必然性はあるのでしょうか。

また、Yahoo!などのポータルサイトは、リンク集的なディレクトリ情報だけでなく、ニュース記事、天気予報、株価情報などを掲載したり、乗り換え案内サービスを提供したり、さまざまな情報サービスが提供されるようになっています。同じように、EIP も単なるリンク集ではなく、さまざまな情報を掲載することにこそ価値を見出すのでしょうか。

インターネットの商業ポータルサイトは、より多くの利用者に訪問してもらい、より長い時間、サイトに滞在させることで、広告の価値を高めることが目的となっています。一方、EIP は、イントラネット内の各種リソースへ効率的にアクセスするための手段のはずです。そう考えれば、入口に長く留まらせてしまうことは、本末転倒になってしまいます。

EIP は、必要な情報の所在へ、利用者をさっさと送り出してあげるべきなのです。

主観的な世界の縮図?

次に考えられる可能性は、利用者個々の事情に応じて必要となる各種の情報を、ポータルの中にコンパクトに集約することの価値です。ここには、2種類の価値が含まれています。

・利用者自身によって最適化できる
・一箇所で必要な情報すべてにアクセスできる

前者のパーソナライズ機能は、喜ばしいものです。お仕着せではなく、多様な利用者のニーズを満たせるのですから、誰からも歓迎されるはずです。しかし、それも、後者の価値が満たされて初めて意味のあるものです。最適化する内容そのものに価値がなければ、パーソナライズすること自体にも大きな意味はありません。

では、ポータルは、本当に一か所で必要な情報すべてにアクセスできるものなのでしょうか。

例えば、Yahoo!などのポータルサイトのパーソナライズ機能を利用しているから、Web の閲覧はそのページだけで済ませている、という人はそうそういないでしょう。もちろん、インターネットの広がりと、エンタープライズ内のイントラネットの広がりは明らかに次元が異なります。

もしかすると、EIP では、後方に広がっている世界を、ポータルの中に圧縮して提供できるのかもしれません。ただしそれも、そもそもその程度の圧縮率で済むのならば、一か所にまとめることの意義は薄いという矛盾もはらんでいるように思えます。

もう一点、私が個人的に疑問に感じるのは、一か所に表示されていて、常に目に入っていなければならないような情報が、そんなにあるとは思えないということです。私たちは、ダッシュボードとかコクピットと呼ばれる場所で、さまざまな計器に目を凝らしながら危険な夜間飛行をしているパイロットではありません。

データソースやアプリケーションに分断されない究極の世界

そうは言いながら、最近の EIP ソフトウェアでは、ポートレットと呼ばれる小窓を通して、さまざまなソースの情報や機能にアクセスできるようになっています。エンタープライズならではの特徴として、ERP などの業務アプリケーションの UI もポートレットで表示したり、バックエンドのデータソースに対する BI ツールの UI もポートレットで表示したりすることまでもカバーすることが指向されているようです。

なるほど、業務を遂行するために ERP などの業務アプリケーションは重要なことが多いのでしょう。その操作を、他の“重要な”情報と合わせてコンパクトに並べられたら、便利かもしれません。

ただ、それほどコンパクトにすべてが並べられるのか、という疑問はやはり残ります。もしそれが可能であるならば、これまでのウィンドウを占有していた各アプリケーションの UI は、いったい何だったのでしょう。すべてがポートレットという小窓で完結するという前提は幻想だと、私には思えます。

そもそも、Web アプリケーションである EIP のウィンドウの中に、小さなポートレットで複数のアプリケーション画面を表示するというのは、Windows などの OS の中に複数のウィンドウでそれぞれのアプリケーションを表示するのと、何が違うのでしょうか。

ウィンドウが分かれるのが問題だとすれば、タブブラウザーで複数のタブでそれぞれのアプリケーション画面を表示すればいいのではないでしょうか。

この疑問は、人間の意識をホムンクルスという小人の存在で説明しようとすると、そのホムンクルスの意識の説明としてさらに小さなホムンクルスが必要となってしまい、論理が無限後退してしまうことを思い起こさせます。

ポートレットをただ並べるのは、アグリゲーションにすぎません。さまざまな世界への便利な入口という存在から、さまざまな世界を並列に並べる大窓という存在を経て、EIP に本当に求められるものは、データソースやアプリケーションに分断されずに、さまざまな世界を統合操作できることなのではないでしょうか。

もちろん、その“統合”は、個人的な世界観によって各利用者独自に構築されるものです。多様な情報のパーソナルなインテグレーションのための仕組みが実現されれば、きっと、それはもう「ポータル」という単純な「入口」を表す名称は似つかわしくない、新しい何かとなってしまうはずです。

記事提供: アリエル・ネットワーク株式会社
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