バッファローは、次世代無線 LAN 規格 IEEE802.11ac(Draft)通信速度最大 1,300Mbps に対応した無線 LAN ルーター「WZR-1750DHP」を3月下旬に販売開始。今回、同機器を入手できたので、使用感や便利な機能についてレポートしたい。

IEEE802.11ac(Draft)最大 1,300Mbps 対応の無線 LAN ルーター「WZR-1750DHP」
IEEE802.11ac(Draft)最大 1,300Mbps 対応の無線 LAN ルーター「WZR-1750DHP」

■ 次世代無線 LAN 規格 IEEE802.11ac とは

IEEE802.11ac(以下、11ac)は、IEEE802.11n 標準(以下、11n)の後継となる 5GHz 帯のみを用いた次世代無線 LAN 規格で、米国電気電子学会(IEEE)により2013年末に正式な策定が予定されている。日本においては、2013年3月の電波法関連規則の改正により「IEEE802.11ac(Draft)」として使用できるようになった。これにより、従来規格の 11n と比べ、通信速度は約11.5倍(規格最大値)の高速化を実現。また、自宅や社内のデジタル家電や防犯装置、自動車など、複数のあらゆる機器を同時かつスムーズに無線 LAN で接続することも可能になった。

では、なぜ従来規格から飛躍的に通信速度が向上したのか。これには、帯域幅の拡大や変調信号の多値化、情報の無線伝送路を多重化する「MIMO 方式」の拡張によるところが大きい。従来の 11a では1チャネルあたり最大 20MHz、11n では最大 40MHz の帯域幅だったものが、11ac では 80MHz 〜最大 160MHz まで拡大。情報の通り道が広がり“太く”なったことで、データ伝送が効率化されている。

また変調信号の多値化により、11n では1つの信号に含まれる情報量が6ビット(64QAM)だったのが、11ac では8ビット(256QAM)に増加。1つの信号に含まれるデータ量が多くなったことで、帯域幅の拡大と併せて“太い通り道により多くのデータを流す”ことが可能になった。

無線 LAN は、情報を多重数して電波を送受信する「MIMO 方式」を採用するが、11n では最大4多重だったのに対し、11ac では最大8多重まで可能になった。データの通り道を太くするだけでなく、通り道そのものを増やすことで、一度により多くのデータを送受信できるようになったという。

11ac の3つの特徴「帯域幅の拡大」「変調信号の多値化」「MIMO 方式の拡張」のイメージ
11ac の3つの特徴「帯域幅の拡大」「変調信号の多値化」「MIMO 方式の拡張」のイメージ

バッファローでは、2013年3月の電波法関連規則の改正以前から、11ac 技術を採用した高速無線 LAN 親機/子機をいち早く販売。これまでは電波法関連規則の制約により帯域幅の拡大が行えず、通信速度は 600Mbps(規格値)が最大となっていたが、同規則改正によって帯域幅が 160MHz(バッファロー製品では 80MHz で採用)まで利用できるようになったため、今回最大 1,300Mbps(規格値)のモデル「WZR-1750DHP」と、最大 866Mbps のモデル「WZR-1166DHP」の2製品を投下した。

■ WAN 通信速度は既存の有線 LAN 回線とほぼ減衰なし

はじめに、「WZR-1750DHP」の外観をチェックしたい。市場に出回っている無線 LAN ルーターの多くはデザインを追求した製品が少ない印象があるが、本機は表面にマット処理を施し、前面・側面フレームには金属感あふれるメタリック塗装を行い、フラグシップモデルに相応しい高級感がある。また、正面下部に配された「BUFFALO」のロゴは通電時に白く点灯し、独自のアクセントを与えている。ネットワーク機器と言うよりは、お洒落なインテリアといった具合だ。

「WZR-1750DHP」の通電時。BUFFALO のロゴが白く点灯し、独自のアクセントとなっている
「WZR-1750DHP」の通電時。BUFFALO のロゴが白く点灯し、独自のアクセントとなっている

今回は WAN と LAN それぞれに関して、有線 LAN 接続の場合と無線 LAN 接続の場合の通信速度を比較した。なお、「WZR-1750DHP」を2台用意し、1台目を親機、2台目を子機として使用すれば、PC 内蔵の無線 LAN モジュールが IEEE802.11ac より古くても規格値 1,300Mbps の無線 LAN 環境を構築できる。

まず、japan.internet.com のオフィスに設置しているメインルーターと PC を有線 LAN ケーブルで接続した場合と、2台の「WZR-1750DHP」のうち1台をメインルーターに接続し、もう1台を子機とした場合とで速度を比較した。速度測定に用いたのは、USEN の回線速度・通信速度測定サイト「スピードテスト」で、それぞれ5回の測定の平均値を算出した。

結果は、前者が平均 47.1Mbps で後者が平均 45.9Mbps となり、無線 LAN が有線 LAN に劣らない十分な通信速度を記録した。実際に、双方の環境で Hulu や YouTube などの動画を視聴しても、どちらもフル HD 動画を快適に楽しむことができた。
メインルーターと PC を有線 LAN ケーブルで接続した場合と、2台の「WZR-1750DHP」のうち1台をメインルーターに接続し、もう1台を子機とした場合の速度比較グラフ
メインルーターと PC を有線 LAN ケーブルで接続した場合と、
2台の「WZR-1750DHP」のうち1台をメインルーターに接続し、
もう1台を子機とした場合の速度比較グラフ

自宅やオフィスで光回線を契約すると、外から引き入れた光ファイバーケーブルを光回線終端装置に繋ぎ、同装置に無線 LAN ルーターを接続するのが一般的だ。しかしこの場合、無線 LAN ルーターが負荷となり、光回線終端装置と PC を直に接続した場合に比べて通信速度が著しく低下してしまうケースも散見される。このように、無線 LAN ルーターがネットワークのボトルネックとなることは珍しくはないが、本機はハードウェアの作り込みが十分なされているのか、そのような現象は見られなかった。

■ LAN 通信速度は、IEEE802.11ac ならではの 600Mbps 以上を記録

さらに、メインルーターと PC を有線 LAN 接続した場合と、2台の「WZR-1750DHP」のうち1台をメインルーターと置き換え、もう1台を子機にした場合とで、LAN における通信速度も比較した。通信速度の算出にはまず、双方の接続環境で PC から japan.internet.com のオフィス内にある NAS から 2GB の動画ファイルを読み込み、完了するまでの時間を測定。それぞれ測定を2回繰り返して平均値を出し、速度を導き出した。

LAN 回線速度比較の接続図 上段:メインルーターと PC を有線 LAN 接続 下段:「WZR-1750DHP」2台をメインルーター(親機)と子機として無線 LAN 接続
LAN 回線速度比較の接続図
上段:メインルーターと PC を有線 LAN 接続
下段:「WZR-1750DHP」2台をメインルーター(親機)と子機として無線 LAN 接続

まず、有線 LAN 接続における転送完了までの所要時間は平均185秒で、通信速度は約 86.5Mbps だった。メインルーターの最大転送速度は 100Mbps(100BASE-TX)なので、それを考慮すれば比較的良好な数字となった。これに対して、無線 LAN 接続での所要時間は平均25秒で、通信速度は約 640.0Mbps となり、有線 LAN 接続時と比較して圧倒的に速い通信速度を実現していることが分かった。メインルーターそのものを最新の「WZR-1750DHP」にリプレイスすることで、WAN、LAN ともに十分な高速通信を実現することができるようだ。本機は、まだ自宅やオフィスで無線 LAN 環境を利用していない人にとって、数年先を見越した場合でも最適なルーターだと言えるだろう。

メインルーターと PC を有線 LAN 接続した場合と、2台の「WZR-1750DHP」のうち1台をメインルーターと置き換え、もう1台を子機にした場合のファイル転送時間とスピード
メインルーターと PC を有線 LAN 接続した場合と、
2台の「WZR-1750DHP」のうち1台をメインルーターと置き換え、
もう1台を子機にした場合のファイル転送時間とスピード

なおバッファローによると、「WZR-1750DHP」を 1Gbps 以上のインターネットサービスなどの高速光回線下で使用した場合、下り 900Mbps(5GHz 帯、DHCP 時)での通信も可能だという。例えば、3階建ての家において「WZR-1750DHP」を設置している1階で 915Mbps、2階で 651Mbps、3階で 539Mbps の通信速度環境も実現できるそうだ。

■ 動画・ゲームなど用途に合わせて通信の優先順位を制御「アドバンスド QoS 機能」

続いて、「WZR-1750DHP」に接続しているクライアント端末の通信帯域をコントロールできる「アドバンスド QoS 機能」を試してみた。QoS とは、特定の通信のための帯域を確保して一定の通信速度を保証する技術で、本機では、動画やゲームなど利用目的に合わせて通信環境のコントロールが可能だ。

「アドバンスド QoS 機能」の設定は、設定画面から行える。試しに設定画面から「ビデオの視聴」を選択して、クライアント端末を複数台(PC/タブレット/スマートフォン各1台)接続し、PC とスマートフォンでブラウジング、タブレットで YouTube の動画視聴をしたところ、動画の読み込みと視聴が快適にできると感じた。

また、「WZR-1750DHP」が発する無線 LAN に PC 3台を接続し、1台目は YouTube のフル HD 動画を再生、2台目は「ニコニコ動画」で動画再生、3台目は Vector で大容量のソフトウェアをダウンロードして、「アドバンスド QoS 機能」を ON にした状態と OFF にした状態で、通信の快適性にどれほどの違いが出るかを検証した。

その結果、「アドバンスド QoS 機能」を OFF にした状態では、3台目でソフトウェアをダウンロード開始後、2代目の動画再生は特に問題なかったものの、1台目のフル HD 動画再生が途切れて視聴がスムーズに行えなくなってしまった。一方、同機能を ON にして「ビデオの視聴」の優先モード選択したところ、1台目のフル HD 動画はコマ落ちすることなく快適に視聴できた。

なお「ビデオの視聴」以外にも、「ボイスチャット」「ゲーム」などの項目があり、「ビデオ」「会議」「ゲーム」など6つのカテゴリの優先度をきめ細かく指定できる手動設定にも対応している。

「アドバンスド QoS 機能」の設定画面
「アドバンスド QoS 機能」の設定画面

「アドバンスド QoS 機能」の詳細設定画面
「アドバンスド QoS 機能」の詳細設定画面

一般的な無線 LAN ルーターだと、クライアント端末からの通信要求に対する帯域の割当がランダムに行われるため、データ転送が効率的に行われず動画や音声が途切れることもある。しかし、「WZR-1750DHP」のアドバンスド QoS 機能を活用すれば、このような心配も無用と言えよう。

■ 素早くセットアップができる「AOSS2」機能/新しくなった Web UI

続いて「WZR-1750DHP」で提供される便利な機能や、新 Web UI について紹介したい。まず本機ではバッファローの独自機能「AOSS2」を使用し、無線 LAN 接続のセットアップが従来よりも容易に行えるようになった。

例えば、クライアント端末を「WZR-1750DHP」が発する電波に接続する場合、まず「WZR-1750DHP」の「AOSS ボタン」をランプが2回周期で点滅するまで約1秒間押し続け、本機のセットアップカードに記載の「iAOSS-xxxx」に接続する(xxxxは、個体により異なる)。次にブラウザから「AOSS2」キー(3桁の値)を入力すると、無線 LAN 接続初期設定が完了する。

この機能は PC/タブレット/スマートフォンそれぞれで利用可能で、また SSID の選択や暗号化キーの入力が不要となるため、煩雑な設定が苦手な人には持って来いと言えよう。

「AOSS2」キー(3桁の値)を入力すると、無線 LAN 接続の初期設定が完了する
「AOSS2」キー(3桁の値)を入力すると、
無線 LAN 接続の初期設定が完了する

そのほか設定画面は、従来の PC 向け UI から PC/タブレット/スマホに対応した新しい UI へ刷新。シンプルなアイコン表示で直感的に各メニューを選択でき、少ない工程で諸々の設定ができる。なお、スマートフォン向けに最適化された UI も用意されており、「アドバンスド QoS 機能」や「デバイスコントロール」などの主要機能を手軽に ON/OFF で切り替えが行える。PC をわざわざ起動しなくても、手元にあるモバイル端末から手軽に設定できるのは嬉しいポイントだ。

直感的に操作できる新 UI(PC 版)
直感的に操作できる新 UI(PC 版)

直感的に操作できる新 UI (スマートフォン版)
直感的に操作できる新 UI (スマートフォン版)
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以上、「WZR-1750DHP」の使用感や「アドバンスド QoS」、新しくなった UI について紹介してきた。これまで、無線 LAN ルーターは接続スピードが「遅い」、設定が煩雑で「使いにくい」というイメージがあったが、「WZR-1750DHP」は実際に使用して双方の面で快適だと感じた。「IEEE802.11ac」対応端末の本格的な普及を前に、まずはその土台にもなる無線 LAN ルーターから準備してみてはいかがだろうか。

■製品紹介 URL
http://buffalo.jp/product/wireless-lan/ap/wzr-1750dhp/