Finance

ファイナンス

日本的意思決定のメカニズム

岡崎良介
2004年10月26日 / 00:00
 
日本人は先人に学ぶのが好きである。故事にもあるとおり、温故知新、だの、天の下に新しきものなし、等といってひたすら過去にあった例を探そうとする。あるいは海外での例を探す。要するに模範解答を探すやり方である。しかしそれでは相場には勝てない。

信じられないのは、相場を戦う運用機関のほとんどが、過去のパフォーマンスがこれから先も継続すると仮定して長期の運用計画を立てていることである。

これは、日本株がさらに下がり続けるということであり、長期金利がまたさらに低下し続けるという予測を持っているのと同じだ。

我々の国民年金等がこうした見通しに基づいて運用されているというのは何とも滑稽な現実であるが、そこには極めて日本的な形式主義が働いている。

実際、過去のパフォーマンスに基づく予測を用いれば全く恣意性を排除できるし、煩雑な仕事から解放される。責任の回避にはもってこいだ。更に、このやり方であれば、先輩の功績を傷つけることもないし後輩もまた自分の仕事を踏襲してくれる。

過去の延長線上に未来を描くというのは、まことに年功序列的システムには好都合な戦略である。

経済学では予測を、明るいものも暗いものも全てまとめて“期待”という言葉で表現している。そしてこの“期待”は、入手できる情報を全て駆使して完全に合理的に判断して作られた“合理的期待”と、過去がこうだったから今後もこうであろうと、流された形で作られた“適応的期待”の二つに分かれる。

この流された形で作られた“適応的期待”に基づき無難な選択をするというのが、日本的意思決定である。

悲しい事実であるが、何らかの形で組織に属し、そこで集団的意思決定に参加されたことのある方なら皆似たような経験をお持ちではないだろうか。人数が増えたからと言って全体の能力が向上することはない。

むしろ意思決定の場においては、能力の低い人にも分かる論理が展開されてしまうため、極めて陳腐な結論に落ち着くことが通例である。

元々勝負事というのは一種の狂気めいたこだわりがないとできないものだが、そんな人間は一人でいい。大きな判断を要する仕事には分業は向かないのである。

ところが機関投資家のほとんどがこうした“適応的期待”に基づいて陳腐な投資行動をおこなうために、市場ではとんでもないことがおこってしまう。確かにトレンドが継続する相場でこれを追いかけていく必要があるときには“適応的期待”に基づく戦略は長い目で見れば有効となるが、木は天までは育たない、と言うことわざにもある通り、相場には何年かに一度、転換点はつき物である。これに対応できない。

転換点において重要な役割を果たすのが、決まってヘッジファンドに代表される欧米の投資家達であるが、実際に会って話しをすれば分かる通り、彼らは何も特別な分析方法や天才的な相場観を持っているわけではない。

ただ日本人と違い、流れに流されず自分達なりの“合理的期待”と、ある種の“常識”を持っている。

勿論、欧米の投資家が転換点でいつも大儲けをしている訳ではない。しかし統計にも表れている通り、過去の相場の転換点において、いつも高値で買い安値で売っているのは日本の機関投資家=ファンドマネージャーであったのだが、残念なことに昨今インデックス化の波が日本中を飲み込み、本当にリスクを取れるファンドマネージャーがいなくなってしまったため、もう勝つことはない。

どう考えても個人投資家の出番が時代の要請である。欧米の鬼っ子たちに負けないためにも、“合理的期待”に基づく意思決定ができる個人投資家の成長がこれからの相場形成のためには望ましいし、また機関投資家達の行動がパターン化されてきた今日においては、それを利用して大きく飛躍するチャンスである。

じきに大統領選挙が終わる。先例にとらわれず思い切った行動を取られたい。(記事執筆:岡崎良介)

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