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ハートビート:スーパーで電化製品を買う日が来る【上】

鈴木一之
2002年12月13日 / 00:00
 
 
【小売業界にまたもや変革の波】

12日の新聞報道によると、スーパーのイオンはデルコンピュータと業務提携して、イオンの家電売り場でデルのパソコンを販売することになった。イオンとデルが共同で企画した10万円パソコンをまず「ジャスコ」の5店舗から始めて、来年2月までに順次50店舗に常設販売ブースを拡大。最終的には200店舗で販売するという。スーパーの主要顧客は女性。その女性客に向けて15インチ液晶モニター付きのイオン専用10万円デスクトップ型パソコンを店頭に並べる。

デフレの進行をもっとも直接的に受けるスーパー売上高は、長期にわたる減少傾向が続いている。日本チェーンストア協会が発表した10月のチェーンストア販売額は1兆1560億円で、前年同月比-2.7%の減少。4カ月連続の減少となった。今年6月には1998年11月以来、実に43カ月ぶりという前年比での売上プラスに転じたのだが、その増加幅はわずか+0.1%に過ぎない。

しかも6月にスーパー売上高がプラスに転じたのも、サッカー・ワールドカップが開催されたため、外食をせずに自宅で夕食を食べる人が増えることによって、食料品分野の売上が増加したという特殊要因に寄りかかっている。そもそも1998年11月の前年実績越えも、消費税の5%分還元セールの影響で前年比+0.5%の増加と微増しただけであり、販売単価の低下にまともに直面している全国スーパーマーケットの苦境は一向に変わっていない。

そしてその間にマイカル、壽屋が破綻し、ダイエーが経営危機に直面した。大手スーパー各社は売上挽回策として、こぞって食料品と衣料品売り場の活性化に力を入れている。スーパーの売上高を構成する最大品目が食料品(51%)であり、次が婦人服・子供服・紳士服・身の回り品などの衣料品(19%)となっているためである。イオンのように家電売り場に新機軸を打ち出す例はまず聞いたことがない。スーパー売上に占める電化製品の割合は4%に過ぎない。

【スーパーで家電製品を購入する人はどれくらいいるか】

いまやスーパーで家電製品を購入する人は稀有な存在になっている。ロードサイドには家電量販店が立ち並び、大量仕入れ、大量販売による価格決定力はメーカーではなく販売サイドが握っている。もはや安く仕入れて安く販売する家電量販店に、スーパーの家電売り場が対抗し得るはずもなく、家電売り場はスーパーにとってお荷物でしかなくなっている。ダイエーは10月に家電売り場を、家電量販店最大手のヤマダ電機に移管することで正式に合意した。

だからこそイオンとデルコンピュータとの業務提携が光るのだが、イオンは今回のデルとの提携と同じような関係を、船井電機とも結んでいる。今年8月にイオンと船井電機は、イオン専用ブランドによる低価格家電製品の開発・販売で提携した。10月から7980円の高音質VTRとビデオ一体型テレビ「テレビデオ」(価格未定)を投入して、ゆくゆくは人気のDVDプレーヤーも店頭に並べてゆく。従来からイオンは船井製の低価格家電製品を取り扱っていたが、この提携によって取り扱い金額を一気にこれまでの4倍に引き上げる。他社製品よりも30%は安い製品を提供することで、イオンは2年後には専用ブランドでの売上を50億円に持ってゆく計画である。

【ウォルマート=船井電機、ダイエー=ヤマダ電機】

フナイといえばすぐに米国のウォルマートを思い浮かべる。売上高が28兆円にも達する世界最大の小売業・ウォルマート。船井電機はそのウォルマートの軒先を借りて低価格の家電製品を売りまくっている。売上高の3分の1はウォルマートからあげている。世界中で4000社にも及ぶウォルマートとの取引先の中から優良業者に贈る「インターナショナル・サプライヤー賞」の46社に今年は選ばれた。家電メーカーでの選出は船井電機だけである。

そしてイオンからもウォルマートがたちまち連想される。ウォルマートの標語「エブリディ・ロウプライス」はそのままイオンの標語でもある。スーパーが好んで立地する首都圏の人口流入地域をあえて避けて、競争相手の少ない、あるいは競争のまったくいない地方都市を選りすぐって出店する。体育館のような巨大店舗、そこにIT技術を駆使して徹底したコスト削減を追求する。メーカーとの直取引を好み卸業者を通さない。すべてが低価格販売に直結している。

そして現在、船井電機は取引先の絞り込みにかかっている。船井電機はピーク時には国内企業200社との取引があったが、それを現在は60社に落としており、来年からはこれをさらに半分の30社にまで絞り込む計画である。ウォルマートで学んだことをそのまま日本に持ち込み、大量に販売できるだけのセリングパワーを持った量販店だけに自社製品の販路を特化させる。船井側としては大量生産によるコストダウン効果が得られ、販売店に選ばれたヤマダ電機、ケーズデンキ、イオンなどは売れ筋商品を手にすることができる。

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