E-コマース

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フー・イズ・新規顧客?

佐藤 尚規
2003年6月9日 / 00:00
 
 有力サイトの購入コンバージョン率は、取り扱い商品にもよるが平均すると2%前後とされている。サイトに100人誘導することができれば、およそ2件の注文が得られるという計算だ。一定以上のユニークユーザ数を確保できているサイトでは、このコンバージョン率が短期間に急激に変動することは考えにくい。自社サイトにおけるコンバージョン率が把握できていれば、目標の売上を達成するには、あとどれくらいサイトに人を誘導すればいいかを試算できる。

 購入客の一部がリピーターとなり、さらにリピーターの一部がヘビーリピーター、つまり優良顧客となる。よく「売上高ないし利益の80%は20%の優良顧客によってもたらされる」と言われるが、優良顧客の数を増やし、売上を伸ばすには顧客数全体を増やさなければならない。他社に数字で差をつけるためには、結局のところ「新規顧客」獲得力が必要ということになる。

 IT バブルが最盛期だった1999年頃、アメリカの有力サイトにおける新規顧客獲得コストの平均は30ドルとも40ドルとも言われた。いくら顧客囲い込みを優先するとはいえ、3回のリピート注文によって得られる利益を先払いするようなコストをかけていては経営が成り立つはずもない。事実、マーケティングコストの負担に耐え切れずに破綻するドット・コム企業が相次いだ。

 幸い、ここ数年で新規顧客獲得コストは大きく低下している。インターネット広告の料金(クリック単価)が下がったこともあるが、アフィリエイト・プログラムやサーチエンジンのキーワード広告など、コンバージョンに直接結びつきやすいプロモーション手法が確立されたことも貢献しているといえるだろう。

 それにしても、「新規顧客」という言葉には魅力的な響きがある。1996年頃、ウェブサイト開設の提案を行う時に、この言葉をよく利用させていただいた。ウェブマーケティングによって、従来の販促活動ではリーチし得なかったグループの中から顧客を獲得できる可能性が生じる、これこそ本当の意味の「新規顧客」ですよ、などとプレゼンしていたものである。

 ネットにおけるプロモーションは、どちらかといえばアクティブユーザをターゲットにしたものが主流になっている。ウェブアンケートで、オンラインショッピングの経験の有無を質問すると、おおむね8割以上の人が「経験あり」と回答する。懸賞サイトなどで情報を検索してウェブアンケートに回答する層と、オンラインで商品を積極的に購入する層はかなり重なっているといえる。

 初回購入のインセンティブを提供すれば、オンラインショッピングに長けているアクティブユーザを呼び込むことは比較的容易かもしれない。しかし、彼らは簡単に他のサイトへもなびいていってしまう。ネットでの新規顧客獲得競争は、他のサイトでも購入した経験を持つ人たちを奪い合っているのが実情だろう。

 獲得コストは高くつくかもしれないが、ウェブアンケートで「オンラインショッピングの経験なし」と回答する2割弱の層を狙ってみるのもいいかもしれない。もし、彼らに購入してもらえたとすれば、他のサイトでも一切買い物をしたことのない「新規顧客」を獲得できたことに他ならない。

 新規顧客獲得コストが低下する一方で、CRM の成果を損ねてしまいかねない問題も浮上してきている。CRM の基本は、個別識別である。過去、どの商品を購入したか、どのサービスの資料を請求したかなどの履歴を一元管理できて初めて、優良顧客かどうかの判断が可能になる。ところが、顧客管理が十分にできていないと思われるケースが増えているようなのである。

 保険や証券など、口座開設のために厳しく個人情報を確認する業態もあるが、商品を販売するサイトでは、必ずしも購入時に身元を証明しなくてもよい場合が多い。

 通常、顧客データベースにおいて、同一人物と判別するキーとして使われるのがメールアドレスであるが、言うまでもなく最近では複数のメールアドレスを使い分けている人が増えている。かといって、名前と住所をキーにして、機械的に同一人物を判別できるかといえば、結構難しい。注文の際に平気でハンドル名を使う人もいるし、様々な理由で家族の名義で注文する人もいる。住所についても、政府の大合唱で自治体の合併が全国で進行していて、転居したわけでないのに表記が変わったりする。

 顧客数が百人単位の小規模サイトでは問題ないだろうが、万単位の顧客を自動的に処理するサイトでは、意外に識別の漏れがあるのではないだろうか。極端なたとえをすると、同じサイトで5回目の注文をしたにもかかわらず、「優良顧客のリピート注文」ではなく、「新規顧客の初回注文」と認識されているかもしれない。まあ、それはそれで新規顧客を一人獲得できたと喜ばれているかもしれないが。(記事提供:有限会社ピアニッシモ

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