春節の中国人観光客の爆買いのニュースも記憶に新しく、中国人の消費者を取り込みたいと思っているマーケティング担当者も増えているかと思う。観光庁(国土交通省)の「訪日外国人の消費動向 〜訪日外国人消費動向調査結果及び分析〜 平成26年 10-12月期 報告書」にもある通り、日本旅行へ出発する前の情報元として検索エンジンが挙がっており、訪日中国人の消費者を取り込むには、リスティング広告が有効な手段と見てとれる。

参考資料:「訪日外国人の消費動向 平成 26 年 10-12 月期 報告書」、国土交通省

このように中国市場における SEM のニーズが年々増加していることから、同国最大の検索エンジン「百度」(バイドゥ)におけるリスティング広告対策は必須となってくる。言語の違いや異なる文化背景のために、広告施策を決定するのは難しい側面もあるが、検索動向を把握することで意思決定に繋げることもできる。中国国内のネットユーザーが8割以上使用しているという、圧倒的シェアを誇る百度。今回のコラムでは、そんな百度独自の検索キーワードツール、“百度指数(バイドゥインデックス)”を紹介したい。

■百度アカウントを作成しよう

百度指数は基本的に無料で、使用するには百度のアカウントを作成する必要がある。百度アカウントは、メールアドレスを登録し、簡単なメール認証をおこなえば使用可能になる。ただし、中国語のみのインターフェイスなので、不安がある場合は、中国語が分かる人とアカウント作成作業をしたほうが安心だ。

参考:百度指数の URL

参考:百度アカウント登録用の URL

■百度指数の主な機能紹介

百度指数を使用することで取得可能となる、4種の機能とデータを紹介しよう。下記の4種のデータを抽出することで、リスティング広告の予算配分や予算投下する際の目安にできるだろう。

1.キーワードの検索トレンド(上昇・下降)の傾向値
2.複数のキーワードを設定した際の、それぞれの検索ボリューム
3.指定したキーワードの、地域ごとの検索ボリューム
4.指定したキーワードのユーザーの属性(性別、年齢、興味)

例えば、訪日旅行者を集客しているホテルのマーケティング担当者には、上記4項目それぞれに対し、下記のような活用を推奨したい。「日本 ホテル(実際の検索は、ホテルを意味する中国語“酒店”。以下、日本語の“ホテル”と記載)」「日本旅行(中国語の“日本旅游”)」と検索した場合を例として、説明していこう。

page 1.キーワードの検索トレンド(上昇・下降)の傾向値を確認

キーワード「日本 ホテル」が、1年間のどの時期に検索数が伸びているか確認し、予算配分を確定しよう。中国の長期休暇は、春節(旧正月。毎年変動)と国慶節(10月第1週目)である。旅行の予定を立てるのは一般的に3か月前といわれているので、2015年の春節は2月中旬だったことを考えると、上半期に比べ、春節・国慶節それぞれの時期に応じて検索数が伸びていることが分かるだろう(図1)。

図1は、年間トレンドのデータだが、月間や週間などで細かくデータを区切って傾向値を表示させると、平日に検索数が伸び、週末に下がっていることが分かる。図1で激しいアップダウンがあるのは、そのためである。

これだけは知っておきたい中国 SEM 事情 Vol. 10 〜百度指数〜
図1:検索トレンド結果画面

2.複数のキーワードを設定した際の、それぞれの検索ボリュームの違いを確認

キーワード「日本旅行」「北海道旅行」「東京旅行」など、複数のキーワードを設定して比較してみよう。図2から分かるように、「日本旅行」の検索数が一番多く検索されているが、地域を絞ったキーワード「北海道旅行」と「東京旅行」と比較すると「北海道旅行」が多くなっている。日本全国のホテルや観光地の情報を扱っている旅行サイトであれば、北海道関連のキーワードへの予算配分の増加、Webサイト内のコンテンツに北海道関連の情報を拡充するなどの施策を実施できる。

図2:複数キーワードで検索した場合の検索ボリューム比較
図2:複数キーワードで検索した場合の検索ボリューム比較

3.指定したキーワードの地域ごとの、検索ボリュームを比較

キーワード「日本 ホテル」が中国本土でどの地域から検索されているか確認し、重点地域を絞り込もう。図3の場合、特に北京・上海で検索ボリュームが高いと分かる。エリア別にターゲットを絞った広告配信が可能なので、予算配分を決定する際の一助となる。またエリア別にユーザーのデモグラフィックも確認できる。

図3:エリア別検索ボリューム結果画面
図3:エリア別検索ボリューム結果画面

百度指数は、ある程度の検索ボリュームがあるキーワードでないと調べることができないツールなので、中国である程度の認知がある商品(サービス)に限られるが、自社や競合のサービス名・ブランド名でも検索してみてほしい。図4は、某自動車メーカーの車種とその競合他社との、エリア別の検索指数の比較だ。このような調査をおこなうことで、自社のサービスがどの地域で強く、どの地域が弱いかが分かる。地域ごとの認知度を数値として把握すると、広告キャンペーンやプロモーション施策を効率的に実施することができる。さらには、リスティング広告施策のみならず、マス広告を含め、オンライン以外のサービスプロモーション計画にも活かすことが可能だ。

図4:某自動車メーカーの車種と競合他社とのエリア別検索指数比較
図4:某自動車メーカーの車種と競合他社とのエリア別検索指数比較

page 4.指定したキーワードのユーザー属性を確認

キーワード「日本 ホテル」で検索しているユーザーのプロファイル情報を確認し、ユーザー向けイベントなどを企画し、ホームページ内で告知をしよう。

百度指数の場合、ユーザーの興味がある項目はあらかじめ固定で設定されており、その中から自動的に注目度の高い項目が表示されるようになっている。図5の場合、大きい点になっている「映画」の項目が特にユーザーの興味が強いジャンルというわけだ。中国では、日本の映画・アニメ・ドラマなどがかなり人気の高いコンテンツなので、この結果は特筆すべきものではないが、この場合、アニメ関連のノベルティーの提供やホテル周辺の映画・アニメ・ドラマの撮影場所の地図を用意するなどの施策を講じたい。

図5:ユーザー属性(年齢・性別・興味)結果画面
図5:ユーザー属性(年齢・性別・興味)結果画面

ここまで、百度指数の主な機能を紹介したが、一言でいえば中国版 Google トレンドと理解していただければ問題ないだろう。ただし、中国の検索エンジン事情の特異性を鑑みても、中国市場に広告出稿する際は、百度の提供するこの百度指数の使用を推奨したい。

また、百度指数は基本的に無料ツールだが、日本の大手広告代理店(さらに言えばその中国子会社)は百度指数の有料ツールも保持しているため、分析の精度も上がる。業種別やブランドごとのより細かな分析結果を取得できるなど、分析軸も増えるのである。中国の人口は日本の10倍かつ地域ごとの違いが大きく、そこに世界中からブランドや商品が集まり、激しい競争を繰り返している市場なので、中国の市場調査を一から始めなければならない企業などは、思い切ってそういった代理店にコンサルティングを任せるのも1つの有効な手段といえる。

執筆:株式会社アイレップ  北京アイレップ 高木祐輔
記事提供:アイレップ