フォトシンスは、サムターン付きドア錠をスマートフォンで操作可能な“スマートロック”に進化させられるデバイス「Akerun(アケルン)」を発表した。既存のドア錠に後付けしてスマートロック化できる製品は、これが世界初だという。現在、購入予約の受付を Web サイトで行っている。発売は4月23日の予定。税別販売価格は3万6,000円。

既存のドア錠がスマホ“鍵”で開閉可能に、合鍵はメールや LINE で送信
スマホを鍵にする Akerun 発表するフォトシンス代表取締役社長の河瀬航大氏

Akerun は、対応アプリケーションをインストールした iPhone/ Android スマートフォンと Bluetooth 4.0 Low Energy 経由で連携し、ドア錠の開け閉めを物理的な鍵を使わずに行えるデバイス。ドアへの取り付けは、付属している強力な粘着テープで張り付けるだけの簡単な作業で、工具などを使う必要はない。サムターンの周囲が平らで空間的余裕のある形状のドアなら、問題なく設置できるだろう。電源として、本体が単三形電池を4本、ドア開閉状態を検知するドアセンサーが CR2032 を1個使う。これで約2年の使用が可能という。

左:取り付けはサムターンの上に貼り付けるだけ 右:内側にサムターンを回す機構が見える
左:取り付けはサムターンの上に貼り付けるだけ 右:内側にサムターンを回す機構が見える

ユーザーは、認証済みスマートフォンを持ってドアに近づけば開錠できる。本体表面がタッチパネルになっており、外出の際などは触れるだけで解除が行えるので、サムターンを回す手間もない。オートロック機能も備えているため、意識的に鍵をかける操作を省き、鍵のかけ忘れを防止できる。

もう一つの特徴は、仮想的な“合鍵”をオンラインでやり取りできること。家族や友人などに対して、メールや「LINE」を介して鍵を開ける権限を送信できるのだ。離れている相手との鍵のやり取りが直接会ったり郵送したりせず行えるので、利便性が高い。さらに、合鍵を勝手に複製される心配もなく、開錠可能な時間を制限した合鍵も発行可能なため、セキュリティも物理的な合鍵より向上する。

スマートロック化でさまざまな応用が可能に (出典:フォトシンス)
スマートロック化でさまざまな応用が可能に(出典:フォトシンス)

このオンライン合鍵機能は、家族/友人との鍵共有だけでなく、家主の不在時に訪問する家事代行者やペットシッターなども利用できる。さらに、ホテルや不動産仲介のような事業分野にも応用可能だ。具体的には、NTT ドコモ・ベンチャーズ、ネクスト、三井不動産がフォトシンスと提携し、チェックイン時の鍵の受け渡しを不要とするホテル向けシステム「39HOTELS Project」、鍵なしで不動産物件の内見を可能にするサービス「スマート内覧」、貸しオフィスの管理をスマート化する「どこでもオフィス」(仮称)といった取り組みを始める。

左から 井上高志氏(ネクスト代表取締役社長) 河瀬航大氏(フォトシンス代表取締役社長) 栄藤稔氏(NTTドコモ・ベンチャーズ代表取締役社長) 光村圭一郎氏(三井不動産ビルディング本部 法人営業統括部 主事)
左から 井上高志氏(ネクスト代表取締役社長) 河瀬航大氏(フォトシンス代表取締役社長)  栄藤稔氏(NTTドコモ・ベンチャーズ代表取締役社長) 光村圭一郎氏(三井不動産ビルディング本部 法人営業統括部 主事)

なお、Akerun はインターネット接続していないので、IoT(モノのインターネット)デバイスとは言い難い。本体に開錠や入退室の情報を履歴として記録できるものの、スマートフォンと連携させないと確認できないためリアルタイム性はなく、「外出中に意図していない開錠があった」などのセキュリティ チェックには使えない。

タッチするだけで開錠できる機能の悪用にも用心が必要だ。ドアに穴を開ける不正侵入手段“サムターン回し”と同様、ドアの穴から指やスタイラスのような道具で“タッチ”されると錠が開いてしまう。このような手口で攻撃される確率は低いだろうが、現状ではユーザーがタッチ開錠機能を使わない設定にしておくしか対策はなさそうだ。

また、スマートフォンを置き忘れた状態でオートロックがかかってしまった場合や、外出先でスマートフォンを失くしたりした場合には、一般のドア錠と同じく開けるのに手間がかかる。フォトシンスの電話サポートで鍵をすぐに無効化できるので他人に侵入される恐れは排除できるが、リモート操作で開けられるわけではない。そのため、オンライン合鍵を持っている人に来てもらったり、物理的な鍵を使ったりすることになる。

Akerun を取り付けると、ドア開閉の負担が減り、合鍵管理の簡素化が図れることは確かだ。フォトシンスが公開している Akerun のコンセプト動画にはスマートウォッチで開錠するシーンも挿入されており、実現したら便利だろう。ただし、“Akerun が真の IoT デバイスとなってネットワーク対応していれば……”という惜しいところも目に付く。

しかし、現モデルの仕様でも十分実用になる分野は広い。さらに、フォトシンス取締役副社長の渡邉宏明氏は、将来 Akerun の機能を最初から組み込んだドア錠を開発したい、と話しており、さらに応用範囲が広がりそうだ。今後の製品開発やモデル/サービス拡充に期待したい。

フォトシンスが Akerun で狙う市場はスマートロックだけにとどまらない
フォトシンスが Akerun で狙う市場はスマートロックだけにとどまらない