昨今、“動画広告”という言葉を耳にする機会が増えてきた。

2013年に「動画元年」と言われてから現在に至るまで、動画広告市場は急激な拡大を遂げている。スマートフォン・タブレット端末の普及や通信速度の高速化により、動画をどこでも快適に視聴できる環境が整備されてきた。

また、動画広告に関連するアドテクノロジーが発達し、従来のインバナー型(Web 上で配信される動画再生中にディスプレイ型バナーが表示されるタイプ)、インストリーム型(動画コンテンツの前後もしくは中間に挿入されるタイプ)だけでなく、インリード型(テキスト記事の間に表示されるタイプ)や Facebook、Twitter などの SNS、キュレーションメディアなど動画広告を配信できる枠が急速に増えた。

このような環境の整備とアドテクノロジーの発達の結果、ユーザーが動画広告に接触する機会は大幅に増えたといえる。

これらの変化に伴い、動画広告を活用する企業も増えている。しかし、「動画広告って CPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)高いでしょ?」「何を KPI(Key Performance Indicator:重要業績指標)として見るの?」などの声を聞くことは少なくない。TVCM や通常の Web 広告と比較すると、最適な KPI を設定できていない企業が依然として多いように感じる。

そこで今回のコラムを通して、動画広告に期待する広告効果を最大化するために、設定すべき KPI と評価方法について説明していこう。

(1)認知拡大・商材理解の促進

認知拡大を目的に動画広告を活用する企業は多い。その場合は“認知”の方向性を明確にし、その方向性に合わせて KPI を設定する必要がある。

ひとつは、企業名やブランド名の認知拡大といったリーチ数を重視する場合である。サービスの具体的な内容ではなく、TVCM のように企業名やブランド名を広く認知させたい場合、動画広告の KPI は「視聴 UU 数」(ユニークユーザー数)に置くと良いだろう。視聴 UU 数を見ることができない場合は、再生数に設定する。動画広告を視聴したユーザー=認知したユーザーとしてカウントすると、どれだけのユーザーに認知させることができたのかを評価する目安となる。

もうひとつは、サービス内容などについて、深い認知・理解を重視する場合である。この場合は「各視聴割合(25%、50%、75%、100%)の視聴率」を KPI に置くと良いだろう。例えば、動画の内容と動画の視聴割合や離脱率を照らし合わせると、企業名・サービス名・価格など訴求内容をどこまで認知させることができたのか評価する目安となる。このように期待する“認知”の方向性別に KPI を設定することをお勧めしたい。

動画広告を視聴したユーザーの認知度を確かめる方法として、有効な施策の一つがアンケート調査だ。ユーザーに対してアンケート形式のバナーを配信することで、ユーザーの理解度や購入意欲を調査できる。この方法により“認知”したと自覚したユーザー数を実数で確認することができるだろう。

(2)態度変容(Web サイト誘導・Web サイト内行動の変化)

ただ認知させるのではなく、ユーザーの態度変容を期待して動画広告を活用する企業も多い。この場合も KPI を2つに分類して設定すると効果的だろう。

ひとつは、動画広告経由での新規ユーザーの誘導を目的とする場合である。動画広告をクリックしたアクション自体を、動画による認知・興味喚起がもたらした態度変容のひとつとして捉えることができるため、KPI は「クリック数」に置いてみると良いだろう。クリック数を増やすためには広告運用以上に、動画の質が重要になってくる。動画広告の内容や構成、Call-to-Action ボタンやアノテーション(動画広告上に表示されるクリック可能なテキスト)の利用など、動画の内容を工夫するとより高い効果が期待できる。

もうひとつは、他の Web サイト施策への影響や、Web サイト内行動の変化など、動画広告による間接効果を期待する場合である。動画広告を視聴した後の検索を促したり、Web サイト内での PV 数の増加や直帰率の減少を実現するためには、ユーザーがサービス内容や商品について強く認知し、興味喚起する必要がある。そのため動画広告の KPI は「完全視聴率」にすると良いだろう。

動画広告の間接効果を評価する方法としては、第三者配信や Google アナリティクスなどの解析ツールを利用することで精緻に評価することができる。第三者配信を利用すると、ユーザーが動画自体をクリックしなくてもトラッキング可能となるので、リスティング広告やディスプレイ広告から CV(コンバージョン)した場合でも広告効果計測を実施できる。また、Google アナリティクスを利用した場合は、CV に至るまでのスピードなど、動画広告の間接的な CV 貢献度も評価できるようになる。またユーザー単位で動画視聴前後での検索キーワードの変化を見るサービスなど、解析ツール以外の方法もある※。

※弊社限定サービス

ここまで、動画広告に期待する広告効果ごとに、設定したい KPI とその評価方法について述べたが、上記のKPI以外に稀にあるケースとして獲得を目的とするケースが挙げられる。

動画広告による直接獲得を目的として動画広告を活用する企業は少ない。現在、主流になっているプレロール型(動画コンテンツの再生前に挿入されるタイプ。インストリーム型の一種)の動画広告において、ユーザーのモチベーションは「コンテンツが見たい」ことにあり、コンテンツを見るために動画広告を視聴する場合が多い。動画広告の内容によるが、ユーザーが見たい動画コンテンツの前に差し込まれた動画広告を視聴、動画をクリック、そして CV にまで至るのはハードルが高いと考えられる。

そのため、CV を直接の目的として動画広告の KPI を立てたい場合(CV を間接的な目的として KPI を立てる場合は、上述の(2)態度変容に含める)、KPI の設定はやはり「クリック数」となるだろう。動画広告経由で流入するユーザー数を見ることで CV に至る可能性のあるユーザー数の目安になるからだ。

以上、動画広告の広告効果を最大化するために、設定すべき KPI と評価方法を述べた。

動画広告に期待できる広告効果は様々だが、どの広告効果を期待する場合も“動画広告を最後まで見せる”ことが重要であると考えられる。今後 CV 獲得を目的とした制作方法・配信方法、更には新しい活用方法など広告としての可能性が発展し続けていく領域であることは間違いない。今後も更に、注目度の高まるであろう動画広告に興味を持ち、情報をキャッチアップしていっていただきたい。

執筆:株式会社アイレップ コミュニケーションプランニング本部 アドインテグレーショングループ VIDEO インテグレーションチーム 須藤晃史

記事提供:アイレップ