■ユーザーの回遊行動をトレースした広告の拡張

コンテンツを中心にユーザーの回遊を解説した後編-1に引き続き、最終回となる後編-2では、ユーザーの回遊とターゲティング広告について見てみよう。

ユーザーの回遊を想定した集客施策のプランニング(後編-2)
図8

ところで、コンテンツ資産は、ユーザーの自然検索や直接訪問に依存した集客だけではなく、広告運用にも有効に活用できる。例えば、コンテンツによって接点を持ったユーザーの Cookie 情報を元に広告を配信するリターゲティング広告や、特定のユーザーセグメントに配信するオーディエンスターゲティング広告のランディングページとして活用することもできる。予算的にも広告運用担当者は難色を示すだろうが、R&D の要素としては得られる知見が多い(図8)。

図9
図9

かつて行ったことがある試験的な広告運用の事例を紹介しよう。ユーザーが生涯で3度ほどしか購入しないような高額商材を扱う販売サイトXで、あるアドネットワークを利用し、ユーザーの興味関心のある Web サイトごとにターゲティングして、広告配信をおこなった例だ(図9)。

まずアドネットワーク上で、販売サイトXと重複する Cookie を持つユーザーが多いサイトを抽出し、同じ商材関連の情報を扱うメディアサイト、金融系サイト、ニュース系サイト、生活情報(暮らしの情報)サイトなど、特性にアタリを付けグルーピング。そして、それらのサイトでリターゲティング広告運用をおこなうのではなく、シンプルな純広告枠としてバナー広告の配信を行った。つまり、アドネットワーク上での Cookie 重複で純広告の掲載面をセグメント化し、買い付けをおこなったという形になる。

結果は、通常のディスプレイ広告の運用と比較して10倍以上の CVR を記録し、一方でそのほとんどが、営業現場での商談効率が悪いというものであった。また、販売サイトXへの訪問履歴を見ると、成果獲得に至った訪問のほとんどは販売サイトXに初めて来た、初回訪問であった。一方、成果に至らなかった訪問を含めると2訪問目が一番多く、一度は販売サイトXに来たことがあるユーザーが大半であった。

ここでの商談効率の悪さは、新規ユーザー層へアプローチした試験的な運用のため、しかたがない結果だろう。改善のために、今後は商談のバリエーションを増やす必要がある。この広告の試みが、実際に本格的な広告運用に組み込まれるには、まだまだ検証の時間を要する。

図10
図10

注目すべきは、自社サイトと Cookie が重複したメディアへの純広告運用から初回訪問で高い CVR を獲得したという点。これは、まだ接点を持てていないユーザー層が回遊し、広告配信対象となるようなメディアの巡回コースがまだまだ眠っているという可能性を示している。

また、成果に至らなかった訪問を含めると、一番多かった2訪問目のユーザーは、その後別の流入経路で販売サイトXのコンテンツ群に再訪問する傾向が見られた(図10)。一度は販売サイトXに訪問したが、サイトブランドへの関心を持たず離脱していたユーザーに対して、さすがに直接的なサイトブランド指名検索やブックマークによる再訪問を誘引できなかったものの、間接的な再訪問と回遊を促すブランディングに繋がった可能性は高い。

■ユーザーの回遊訪問周期を可視化する

最後に、ユーザーの訪問周期について考えてみよう。図11は、いくつかの大規模サイトで Adobe Analytics(旧 Site Catalyst)を利用し、ユーザー一人ひとり(Visitor ID)の訪問履歴を追って分析をした傾向を示したものである。

図11
図11

ユーザー個別の動きに日時と訪問日の間隔を付与し、期間と訪問回数ごとに累積して俯瞰すると、概ね1週間毎の周期でユーザー行動に特徴が現れる。もちろん訪問回数を重ねるごとに訪問母数は極端に減少していくのだが、平均ページビューや商品詳細の表示率、CVR など、ユーザーの関心や行動のモチベーションを表す数値が、1週間毎の周期で盛り上がるのだ。また、訪問回数を重ねるに従って、自社サイトブランドに関心を持つユーザーのみが残っていくため、ユーザーのモチベーションを示す値はさらに上昇する。

また、EC サイトなどでは7・14日間隔ではなく、8・15日間隔というケースもあり、扱う商材や利用するユーザー層の生活習慣によって多少の差が見られる。時間帯も加味すると、日曜深夜の駆け込み需要 → 月曜早朝の利用傾向も強く見られるケースもある。さらに、不思議なことに28日(4週目)を過ぎると周期の傾向が薄まり、分析対象の母数もかなり減少するため、個別にバラバラの動きをするよう見える。

余談だが、全ユーザーが月初から活動しているわけではないことを考えると、(Cookie の精度の問題もあるとはいえ)人は月単位での周期にも影響を受けるようだ。

■コンテンツからのリターゲティング

こういったユーザー行動周期を示す Web 解析データの反映をもっともイメージしやすい施策がターゲティング広告、とりわけリターゲティング広告だろう。ユーザーの行動をトレースして、消費シナリオの「続き」を促す広告だ。

図12
図12

図12は、先述の例に挙げた高単価商材を扱う販売サイトXでおこなった、リターゲティング広告運用の結果を運用周期ごとに示した例だ。人気コンテンツへの訪問をきっかけとし、自社サイトの離脱から、1日、3日、7日、14日、30日、60日と、経過日数ごとにユーザーをセグメントして、リターゲティング広告を配信する運用である。

このコンテンツ群は、ユーザーの知識欲を満たすような読み物的な記事が中心で、メディア的要素が強く、必ずしも消費を促す内容というわけではない。しかし、その商材に関心が強いことは明白で、高単価な商材ゆえに、ユーザーはサービスの利用に至るまで長期間にわたって商材を選考する。結果は14日後と60日後の配信が好成績を収めた。

なぜ7日後や30日後でないのかは、さらに深く検証しないと一概に言えないが、競合サイトの存在や、リアル店舗での見積もり商談を考えると、限られた休日の中でさらに商材の調査範囲を広める時期が来るのだろうか。14日後のユーザーは最初の休日にリアル店舗での商材探しがうまくいかなかった人が多いのかもしれない。60日後のユーザーは、もう休日を何度も最適な商材探しに費やしてしまって、あきらめていたのかもしれない。

少なくとも配信結果からユーザーの消費に対する気持ちの昂ぶりの周期が、業態や商材ごとにいくつかのパターンとして存在する。Google アナリティクスのマルチチャネルレポートに代表される訪問履歴の解析とともに、リターゲティング広告運用の結果検証で、自社サイトのユーザーの求める課題や行動周期をつかみ、接触するタイミングと、その時々でユーザーに行動を促すクリエイティブ訴求の改善を図ろう。

■回遊するさまざまなユーザーをもてなしデータで対話する Web サイトづくり

以上、4回にわたってユーザーの回遊を意識した施策について述べたが、自分たち自身も含め、日々の通勤のスマートフォンでニュースチェック、オフィスや自宅の PC で一息、今日のランチや今夜の飲み会の店選び、などなど、日々回遊するオンラインユーザーの行動を把握し、しっかりと棚卸しすることをおすすめする。

自分たちが、どのタイミングでどのような情報を欲しがるのかを理解できていないと、ユーザーの訪問数を成長させ続ける施策の継続は難しい。また、ユーザーが訪問したとしても、コンテンツで十分にもてなすことができない可能性すらある。

もちろん自分の行動だけではなく、社内外でアンケートをとったり、通信キャリアや SNS サービスがリリースする利用実態調査データ、マーケットリサーチデータなど、他にも材料はたくさんある。それらと Web 解析データと照らし合わせれば、見いだせる施策の可能性は広がる。施策の結果から得られるデータと向き合って、ユーザー行動の仮説を見出し、データを介して積極的に対話しよう。

執筆:株式会社アイレップ 嘱託 デジタルマーケティングプランナー 床尾一法
記事提供:アイレップ