Web サービスやアプリ開発を依頼できるグローバルソーシングプラットフォーム「セカイラボ」が、急成長を遂げている。サービス開始から5か月間で依頼案件総額は約3億円に到達。同プラットフォームに登録する海外のエンジニア数も増加中だ。

アプリを中心とした開発の需要が高まる中、セカイラボはどのような点が評価されているのだろうか。運営する Sekai Lab Pte. Ltd. の代表取締役 COO 大熊一慶氏に、急成長の背景やグローバルソーシングの魅力をうかがった。

一大プラットフォームで世界中から最適な人材を--セカイラボに聞くグローバルソーシングの魅力
代表取締役 COO 大熊一慶氏
 
■世界中から最適な人材を見つけ出すセカイラボ

Sekai Lab Pte. Ltd. は、モンスター・ラボのグループ子会社として2013年12月に設立。Web サービスやアプリの開発を希望する企業や個人が、海外の開発チームに日本語で見積もりを依頼できるプラットフォーム「セカイラボ」を2月より展開している。

セカイラボでまず目を引くのが、開発コストの安さだ。中国やベトナム、ミャンマーなど人件費が安い国の開発チームに依頼することで、トータルコストを国内の1/2から1/3程度まで抑えることも可能だという。だが大熊氏はコスト削減以上に、各案件に最適なリソースの提供を重視していると説明。その実現を支えるのが、世界各国に広がる“優秀な”エンジニアたちのネットワークだ。

日本を含む10か国20社以上の開発企業と提携するセカイラボには、1,500名以上のエンジニアが登録。Web サービスやスマートフォンアプリ、サーバー構築/運用など、様々な開発案件に応じることができる。有名アプリの開発実績があるエンジニアチームも多く、その能力は国内のエンジニアと比べても遜色ないそうだ。また、一定のマンパワーをもつ開発企業と提携しているため、数千万〜数億円以上の大規模案件に対応できる点も強みとしている。

有名アプリの開発実績がある登録チームも多い
有名アプリの開発実績がある登録チームも多い
 
たとえエンジニアが“優秀”でも、懸念されるのがコミュニケーションの問題だ。同社は、日本語に堪能なブリッジ SE がいて、日本向けの開発実績がある企業を提携先として選定。オフショア開発に不慣れのクライアントでも安心して利用できる条件を整えている。

また仲介をするだけでなく、要望に応じて仕様書作成や企画、デザイン面のサポートといったサービスも提供。クライアントからは、「開発の全体像が見えやすい」「企画や品質のサポートが充実している」といった高評価を得ているそうだ。

■グローバルソーシングの普及は必然の流れ

様々な業界から案件が寄せられているというセカイラボのグローバルソーシングサービス。国内外の状況を見れば、その急成長ぶりにも納得がいく。

スマートフォンの普及による開発案件の増加に伴い、国内のエンジニア不足が深刻化する一方、アジアをはじめとする新興国は IT 教育を受けた学生を毎年多数輩出。日本の年間2万人に対しインドは200万人、中国は100万人とされており、リソースの差は歴然としている。日本企業としては、目を向けずにはいられない人材の宝庫といえるだろう。

受託する新興国側にとっても、日本からの案件は魅力的なようだ。例えばセカイラボも取引があるベトナムの大手オフショア開発企業では、日本市場向けに約5,000名のエンジニアを配置。エンジニア向けの日本語教育に力を入れている大学もある。欧米企業では既に当たり前とされるグローバルソーシングだが、日本企業にとっても活用しやすい条件が整いつつあるようだ。

■一大ネットワークで多様な案件に対応

エンジニア不足に悩む日本企業のニーズに応えたセカイラボ。今後はどのような展開をしていくのだろうか?大熊氏は「当面は利潤よりもネットワークの構築に注力する」と説明。年内に登録エンジニア数を1万名まで増やし、3年後には年間流通額100億円を目指すという。中長期的には10〜20万人の規模にまでネットワークを広げることで、より多様な案件への対応を可能にするそうだ。

また大熊氏は、経済成長が目覚しいアジアの新興国について「今後5〜10年で『開発拠点』から『マーケット』へと変化する」と予測。マーケターやディレクターとも連携することで、日本企業のアジア進出、アジア企業の日本進出をも支えるプラットフォームにセカイラボを育てたいと意気込みを見せた。

■ブログメディアを通して世界の情報を発信

同社はグローバルソーシングに対する理解を広げようと、ブログメディア「SEKAI LAB TIMES(セカイラボ・タイムス)」を5月にリリース。アジアの国々をはじめとする各国の IT 業界の動向を幅広く発信している。

編集長を務める布井佑佳氏は、「グローバル化は止めることはできない流れ」と指摘。「SEKAI LAB TIMES」を通して読者が海外の市場に目を向け、日本人としてどう対応すべきかを考えるきっかけをつくっていきたいと抱負を話した。

セカイラボが展開するブログメディア「SEKAI LAB TIMES」
セカイラボが展開するブログメディア「SEKAI LAB TIMES」
  
SEKAI LAB TIMES 編集長 布井佑佳氏
SEKAI LAB TIMES 編集長 布井佑佳氏

世界中に広がる有能な人材の活用を実現するグローバルソーシング。最適なリソースを素早く見つけて活用する仕組みが国内でも整えば、厳しい国際競争にさらされる日本企業にとって大きな弾みとなりそうだ。