約272ヘクタールを誇る千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」。スマートシティの実現に向けて、動きが加速している。三井不動産は、太陽光発電や蓄電池などの分散電源エネルギーを街区間で相互に融通するスマートグリッドを、2014年7月から段階的に運用を開始。分散電源や送電線を使い公道をまたいだ街区間で電力相互融通を行う、日本初のケースとなる。

またそれに先駆け、日立やシャープら4社が共同開発したエネルギー管理システム「柏の葉 AEMS」と「柏の葉 HEMS」が5月から段階的に運用を開始、スマートシティの中核となる。

「柏の葉スマートシティ」、スマートグリッドの実現に向けて段階的運用開始―5月にエネルギー管理システム、7月には電力を融通しあうスマートグリッド
柏の葉スマートシティ全体エリア

電力融通のイメージ (柏の葉キャンパス駅周辺の空撮写真に一部CGを合成)
電力融通のイメージ (柏の葉キャンパス駅周辺の空撮写真に一部CGを合成)

柏の葉スマートグリッドは、「ららぽーと柏の葉」や「ゲートスクエア」などに設置された太陽光発電/蓄電池と、分散するオフィスやホテルなど各施設を、日立らが開発した「柏の葉 AEMS(Area Energy Management System)」で一元的に管理することを中核とする。「柏の葉 AEMS」の中央管理拠点はゲートスクエア内の「柏の葉スマートセンター」に設置され、電力融通量の調整や各施設のエネルギー利用傾向などが分析される。

三井不動産らはその他にも、街区間で電力を融通する際に、電力会社の系統電力と混ざらないように制御する「電力融通装置」、大規模蓄電池と組み合わせ、電力量の安定性を確保する太陽光発電などにも取り組んでいる。

柏の葉スマートグリッドの全体イメージ <平常時>
柏の葉スマートグリッドの全体イメージ <平常時>

柏の葉スマートグリッドの全体イメージ <非常時>
柏の葉スマートグリッドの全体イメージ <非常時>

また「柏の葉 AEMS」と連携し、電力使用状況などを見える化する「柏の葉 HEMS(Home Energy Management System)」が各集合住宅に設置される。省エネ達成度に応じてたまり、買い物などで利用できる「柏の葉ポイント」や地域の防災情報なども、専用のタブレット端末で確認できる。シャープらが開発し、ゲートスクエア内の賃貸住宅「パークアクシス柏の葉」などに導入される予定だ。

柏の葉AEMSと柏の葉HEMSのシステムネットワーク図
柏の葉AEMSと柏の葉HEMSのシステムネットワーク図

AEMS オフィス・商業テナントユーザー向け画面イメージ
「柏の葉 AEMS」 オフィス・商業テナントユーザー向け画面イメージ

「柏の葉HEMS」の画面イメージ
「柏の葉HEMS」の画面イメージ
 
これらの取り組みにより、地域レベルで約26%の電力ピークカットや、電気料金削減によって両施設で年間約1,000万円の経済的なメリットなどが見込めるという。加えて、非常時に停電した際の防災力の強化にもつながる。各地域の発電/蓄電設備の電力が、生活に必要なエレベータや共用照明などに供給される。

今回さらに特筆すべきは、大規模工業団地などで敷地内の施設に電力を供給する際に用いられてきた電気事業法上の「特定供給」制度の許可を経済産業省から得たことだ。「特定供給制度」には、供給先となる場所の電源需要に対して50%以上を満たす「発電設備」の保有などが条件があり、莫大な設備投資が必要となる課題があった。また柏の葉スマートシティに設置された太陽光発電などは、気象条件により出力が不安定なため、「発電設備」と認められていなかった。

これらの課題は、協議の結果、解決された。柏の葉スマートシティでの集合住宅街区への非常時の電力供給に関しては、供給先をエレベーターなどの共用設備に限定することで、「非常時に需要家が必要とする共用設備部分の電力」を基準に算出され、供給許可を得た。また蓄電池などの安定的な供給を確保できる設備と組み合わせることで、発電出力の安定性も認められることになり、特定供給の発電設備として太陽光発電設備が許可されたという。

今回の認定は過大な設備投資負担を抑えてスマートグリッドを実現することにつながるという。今後、全国の既存都市においてもスマート化の取り組みが加速すると予想されている中、柏の葉スマートシティのスマートグリッドの運用の様子に注目が集まる。