米国発の画像共有サービス「ピンタレスト(Pinterest)」の日本語版が開始してから4か月余り。世界に約5,740万人のユーザーを抱えるサービス(comScore 調べ)だが、「使ったことがない」「楽しみ方がよくわからない」という人もいるだろう。実は筆者も、画像を眺めるばかりで「活用しきれていない」と感じているユーザーだ。

今回、日本法人であるピンタレスト・ジャパン代表取締役社長の定国直樹氏とコミュニティマネージャーの山口結花氏に、同サービスの特徴や魅力をうかがう機会を得た。また具体的な楽しみ方を、ユーザーの事例を通して紹介する。

きれいな画像だけじゃない--“発見と実現”をサポートするピンタレストの真の魅力を紹介
ピンタレスト・ジャパン代表取締役社長の定国直樹氏(右)
コミュニティマネージャーの山口結花氏(左)
 
■未来の夢や目標を“発見”し“実現”する場


画像共有サービスといわれるピンタレストだが、そもそも何を目的としたサービスなのだろうか?定国氏はその特徴について、「未来に対して何かを発見するためのプロダクト」と説明する。Facebook や Twitter が「過去に起きたことを人に伝える」場であるのに対し、ピンタレストでは自分の興味(インタレスト)ごとにデータ(画像)をストック。そのデータを元に、「未来の夢や目標を発見し、実現」できるのだという。

「IT 企業らしからぬセリフですが、私たちはユーザーに『ピンタレストで何かを発見したら、PC を閉じて、携帯電話もしまって、外に出てそれを実現してほしい』と願っています。行きたいと思った場所に実際に行く、作りたいと思った物を実際に作る。そのような行動を起こすことで、ピンタレストはより楽しむことが出来ます」(定国氏)。

自分の夢を“発見”し、“実現”するための場というピンタレスト。とはいえ、具体的なイメージは浮かべにくい。ユーザーは実際どのようにピンタレストを楽しんでいるのだろうか?ピンタレストを愛用しているという2人のユーザー、鎌倉知香さん(ユーザー名:Chika Kamakura)と野村健二さん(ユーザー名:Kenji 08)にお話をうかがった。

■きっかけは「米国で流行っているサービスがある」

TV 局に勤務する鎌倉さんは、2010年にピンタレストの利用を開始。知人から「米国の女の子の間で流行っているサービスがあるよ」と聞いたことがきっかけだったという。最初は「写真ばかり並んでいて、よくわからなかった」が、新しいものを試すことが好きで、使い続けるうちにその楽しさに夢中になったそうだ。

ピンタレストでは好きなユーザーやボード(カテゴリー別の画像)をフォローすることができ、鎌倉さんは主に海外のデパートやブランド、スタイリストなどをフォローしている。ピンタレストでつながっている友人もおり、音楽業界やデザイン業界、インテリア業界などで働く“感度の高い”人が中心だという。

一方、デザイナーとして働く野村さんがピンタレストを使い始めたのは2010〜2011年頃。海外のニュースサイトで知り興味をもったという。当初はユーザーごとにフォローしていたため、タイムラインに様々な画像があふれてしまったそうだが、ボードごとにフォローするようにした結果、自分のニーズにあった画像を楽しめるようになったそうだ。

野村さんも、企業から個人まで幅広いユーザーのボードをフォローしており、「ユーザー同士のつながりを通して、自分の好きなコンテンツを次々と見つけだすことが出来る」と話した。

■やりたいことや作りたい物のイメージを探す場所

食べ物やファッション、乗り物など幅広いコンテンツを揃えているピンタレストだが、2人は集めた画像をどのような場面で役立てているのだろうか?

鎌倉さんはピンタレストを利用する場面について、「仕事からプライベートまで全部」と説明。彼女にとってピンタレストとは、「やりたいことや作りあげたい物のイメージを探しにいく場所」なのだという。

鎌倉さんのピンタレストページ
鎌倉さんのピンタレストページ
 
エンターテインメント事業を担当する鎌倉さんは、イベントや映画のポスターを作る時、「あの映画のポスターの、あの感じに仕上げたい」といったイメージをもとにピンタレストを検索。見つけた画像を、企画書の作成やデザイナーとの打合せに役立てている。

映画や雑誌のイメージを集めた「Book, Poster, Film」
映画や雑誌のイメージを集めた「Book, Poster, Film」

プライベートでも、ピンタレストのコンテンツをフルに活用。理想の家具や小物を見つけてインテリアの参考にしたり、好きな俳優やアーティストの画像をコレクションしたり、モデルの画像を眺めてダイエットの意欲を高めたりしているという。「ディズニー風」や「中国風」というテーマで集めたイメージをもとに、友人とパーティーを企画することも多いそうだ。ピンタレストが、人生を楽しく豊かなものにしている様子がうかがえる。
 
インテリアの参考にするための画像を集めた「Home」
インテリアの参考にするための画像を集めた「Home」

最近行った自身の結婚式では、ピンタレストで集めたイメージを“完璧に再現”。ゲストへの招待状も、ピンタレストで見つけた画像と全く同じ物を作るため、遠方の店まで素材を探しにいったそうだ。鎌倉さんの話からは、ピンタレストを楽しむためには「外に出て足を動かす」ことも大切であることを感じさせられる。

野村さんも、幅広い場面でピンタレストを役立てている。ピンタレストを機に写真のおもしろさに目覚めた野村さんは、昨年夏に一眼レフカメラを購入。撮ってみたいと思った画像を「Photography」のボードに集め、インスピレーションを得たり、構図を研究したりしている。

野村さんのピンタレストページ
野村さんのピンタレストページ
 
そのほかにも、ガジェットやデザインのノウハウを集めて実務に役立てたり、将来の目標をリスト化したり、好きな猫の画像を眺めて“癒し”を得たりしているという。鎌倉さんと同様、集めた画像を元に行動を起こすという“発見と実現”のプロセスを楽しんでいるようだ。

ガジェットの使い方やデザインの手法を集めた「Tutorials-Tips」
ガジェットの使い方やデザインの手法を集めた「Tutorials-Tips」
 
愛らしい猫の画像を集めた「Cats」
愛らしい猫の画像を集めた「Cats」

■ストック型で一覧性の高さが魅力

昨今は様々なソーシャルサービスや画像共有サービスが普及しているが、ピンタレストならではの良さとはなんだろうか?

鎌倉さんは自身の経験から、「“リアル”から“Web”へ移行できた」ことを挙げる。以前は仕事の資料として、映画のチラシやポスターを大量にストックしていたが、それらをピンタレストでデータ化した結果、仕事を効率化できたそうだ。データストック型で、コンテンツが豊富なピンタレストらしい活用例だろう。

野村さんも、データストック型で「一覧性が高い」点を気に入っているそうだ。情報が次々と流れていってしまうフロー型と異なり、ボードごとにストックできるピンタレストは、必要な情報を見返しやすいという。また言葉ではなく画像主体のサービスであるため、海外のユーザーとつながることができる点も魅力と話した。

■まずはブランドのイメージや世界観を

ところで企業にとっては、ピンタレストがマーケティングに役立つのか気になるところだろう。E コマースの機能は備えていないが、ピン(スクラップ)された画像は購買活動を生んでいるのだろうか?

鎌倉さんは「ピンタレストでは日本にはない商品が見つけられる。気に入った物は海外からでも買う」と説明。なかでも米国のハンドメイド専門サイト「Etsy(エッツィー)」がお気に入りで、アクセサリーなどを購入しているそうだ。一方野村さんは、リンク先の記事を参考に“もの作り”をすることがあるといい、ユーザーが様々な方法で、ほしい物を柔軟に手に入れている様子がうかがえる。

ハンドメイド専門サイト「Etsy」のピンタレストページ
ハンドメイド専門サイト「Etsy」のピンタレストページ

企業としての使い方について、野村さんは「自社製品だけを載せているのは、ピンタレストのユーザーに合わないと思う。まずはユーザーが楽しめるコンテンツを提供することが大切ではないか」と指摘。鎌倉さんも、「商品の売り込みではなく、そのブランドのイメージや世界観を伝えると良いと思う。例えばスターバックスのボードでは、コーヒーのイメージビジュアルや世界中のおもしろいショップなどを紹介していて、見ているといつの間にかスターバックス自体を好きになっている」と話した。

■海外に向けて日本のコンテンツを発信

ピンタレストの利用歴は既に3〜4年に及ぶ鎌倉さんと野村さん。日本におけるサービスの本格展開についてはどう感じているのだろうか?

鎌倉さんは「インテリアやパーティーなどは米国発のコンテンツが多いが、アニメなど日本が強みとする分野もある」と指摘。エンターテインメント業界で働く1人として、国内のユーザーがピンタレストを活用すれば、漫画やアニメなどのコンテンツを広く世界に発信できると期待を寄せる。

一方野村さんは、昨年11月に実装された地図機能「プレイスピン」に着目。同機能を用いると、画像と地図が連動したガイドマップのようなボードを作ることができる。外国人観光客が増加する中、「国内の観光スポットや施設をまとめたボードを作れば、良い情報発信ができるのでは」との展望を示した。

「プレイスピン」の使用例(空き部屋シェアサイト「Airbnb」のボード)
「プレイスピン」の使用例(空き部屋シェアサイト「Airbnb」のボード)
 
■“発見と実現”をさらに良い体験に

2013年10月に設立され、11月に日本語版サービスを開始したピンタレスト・ジャパン。日本市場の可能性について定国氏は、「和食がユネスコ無形文化遺産に登録されるほど、奥深い文化をもつ国。“発見と実現”をサポートするピンタレストとの相性は良いはず」と自信を見せる。実際、アクティブユーザーは過去4か月間に1.5倍まで増加したといい、着実に裾野を広げているようだ。

本格展開の要として、同社はユーザーのコミュニティ作りにも力を入れている。山口氏を中心にユーザーを集めたオフ会などを展開し、各自の使い方や発見の共有を促進することで、ピンタレストで得られる体験をさらに向上させていくそうだ。

今まで「楽しみ方がわからない」と感じていたユーザーの方は、今後“発見と実現”を意識しながら、自分の夢や興味を Pinterest のボードで表現してみてはいかがだろうか?何気なく流れていく日常では得られない夢やつながりが、そこには隠れているかもしれない。