前回「自然検索流入の KPI 指標とユーザーモチベーションに沿ったコンテンツ設計」の前編後編において、自然検索流入の KPI 設計について触れた。今回はより踏み込んで自然検索流入拡大のキーであるコンテンツ施策の KPI 設計について述べたい。

現在、Google 検索のアルゴリズムの更新にみられるように、検索エンジンが Web サイトの順位を決定する要因では、Web サイト内に網羅されたコンテンツの構成要素における評価が非常に重みを増していることだ。外部の Web サイトから受ける被リンクなど外的要素の評価も、「このページを紹介したい」というユーザーの行動から自然に発生したものかどうかを重視し、リンクを掲載する外部サイトのコンテンツ構成そのものに対する評価も、より一層厳密になっている。検索結果表示順位の決定要因において、ユーザーの検索モチベーションに対するテーマの網羅性や、情報そのものの「質」がより高い精度で評価されるよう、検索アルゴリズムは日々確実に進化している。

■高まるコンテンツニーズとコストから見た効果証明の難しさ

自然検索流入による集客を拡大するにあたっては、質の高いコンテンツをどれだけ網羅できているかが大きな鍵となる。だが、そもそもここで間違えるべきではないのは、「コンテンツを網羅さえすれば良い」という話ではない。Web サイトにおけるコンテンツの網羅とは、「ユーザーにとってどれだけ有益な情報」が「定期的な更新性をもって日々アップデート」され、「さまざまなユーザーシナリオ(ニーズ)ごとに確保」「アーカイブ」されているか、ということである。

コンテンツ施策の貢献を証明する KPI 設計
(図1)

コンテンツ設計の詳しい内容は SEO 関連の別項に譲るが、これらを満たすべくコンテンツの質を高め、ラインナップを増やそうとすると、投入される制作コストと運用コストが肥大化してくる。いざ成果獲得効率という話になると、どうしても集客経路(広告)の投資対効果と単純に比較されてしまいがちになり、見た目の予算効率的に分が悪い。また、コンテンツ制作費がサイト運営上の固定費として計上され、通年予算でしか獲得できず、臨機応変な予算獲得が難しいケースもある。コンテンツは限られた予算の中で投資に対する判断が厳しく、プロモーション予算の優先順位は、どうしても広告予算に取られてしまうというのが実情ではなかろうか。

しかし、Web サイトはコンテンツがあってこそはじめて成立し、たとえ広告が集客の中心であったとしても、ランディングページの情報がユーザーにとって不満足な場合は、決して Web サイトの集客は成果に紐付かない。コンテンツには、ユーザーに情報と価値を提供する Web サイトのインフラであるという側面とともに、プロモーションシナリオの一部であるという側面がある。特に後者は、コンテンツがアーカイブされることで、長期にわたってユーザー自らに検索し発見してもらえる可能性があり、息の長いプロモーション施策でもある。

■コンテンツと Web サイトに対するユーザー関心度の指標化

コンテンツ制作の運用が進むことで網羅性の高まり、つまりコンテンツがアーカイブされ続けるサイクルがもたらす集客価値は、テーマ別の集客面(ユーザー層)の広がり、他のコンテンツを探求したくなるような体験価値を演出する入口としての機能、サイトブランド指名検索と再訪問(ユーザーの期待値)の誘引、ユーザーの行動や決断を促す背中押し、といった役割が考えられる。今回は「集客面の広がり」「ユーザーの期待演出力」「サイトブランドに対するユーザーの期待値」を簡単に指標化できる例を紹介しよう。

・「not provided」ではなく観測可能な検索キーワードの変化に目を向ける

さて、ユーザーの集客「面」の変化をもっとも顕著に観測できる指標が、自然検索流入キーワード群であるのだが、現在 Google 検索エンジン経由のサイト訪問者の検索キーワードは、Google アナリティクスの表記で言う「(not provided)」として SSL 通信により秘匿されている。しかし、日本国内の場合、市場シェアの大きな Yahoo! 検索による検索キーワードはいまだ取得可能な状態にあり、リスティング広告の成果観測とともに、依然として、訪問ユーザーのモチベーションを仮説立てる重要な指標であることに変りはない。また、「Google ウェブマスター ツール」と AdWords、両者のアカウントを紐付けることで、Google 検索の自然検索キーワードを観測できる。

ただし、Yahoo! 検索と Google 検索のユーザー層が異なり、行動特性に差が出ることが多く、運営するサイトのビジネスモデルによっては、特に回遊状況や直帰、再来訪の特性において、顕著に差が出ることもある点には注意したい。

またスマートデバイスからのサイト流入が半分以上というサイトも増える中、観測できるリファラー情報の変化にも目を配り、観測可能なキーワードの種類や表記の偏り具合を把握し、分析の際に考慮しておく必要がある。

・集客面の広がり

では、現在「計測可能な検索流入キーワードの変化」を指標とする観点で紹介して行こう。図2はコンテンツのディレクトリや階層ごとの検索流入キーワードのバリエーション数増加を示している。例えば商品Aのリリース記事を掲載した後、ファーストインプレッションやユーザーレビューの掲載、「価格から商品を選ぶ」「色から商品を選ぶ」「商品の選び方」など、導線の入口となる扉ページの拡張を行うことで「商品A ×価格」「商品A×色」「商品ジャンル×選び方」といった具合に、「欲しい」以前のニーズの検索キーワードのバリエーション獲得によってサイト流入が拡張する。

(図2)
(図2)

これは、検索結果表示順位の変動に左右されやすい、偏った検索キーワードに依存した危うい集客を改善し、順位変動に左右されず常に広いユーザーモチベーション(指向性)に対応した接触面積を確保できているかどうかの指標となる。

また自サイトだけではなく、競合サイトのコンテンツも常に増殖を続けるため、ラインナップを競わなければならない。図3に示すように、現状のコンテンツラインナップとユーザーの消費行動の段階ごとに、ユーザー検索行動との接点を確保できているのかを可視化できるマッピングを行うと良い(同時にキーワードごとの自サイト検索結果表示順位を観測する)。そうすれば、自分たちのコンテンツ対応力が弱い検索モチベーション、強い検索モチベーションが判明し、ボトルネックの解消と勝ちパターンの拡張が行える。
 
(図3)
(図3)

当然、強いコンテンツ群でも成果貢献が低い場合(行動喚起や訴求不足)、弱いコンテンツ群でも成果貢献度の高い(ユーザーの行動喚起力が高い)場合も頻繁にあり、さらに深い Web 解析で要因を探り、改善すると良い。これらの工程は、コンテンツ拡張は単に必要なインフラというだけではなく、広告による集客を含めた立派なプロモーション戦略の一環である。

繰り返しなるが、これらの観測は、ユーザーがサイトに訪問するデバイスのシェア変化にも影響される部分があるため、参照ドメインやリファラー情報の変化を考慮しつつ、観測の基軸となる検索流入キーワード表記の変化に細かく目を向けたい。

・ユーザーの期待演出力

これら、広い面積で集客を確保できたとして、次にそれらコンテンツが入口となった場合、もっとこの Web サイトについて知りたいと思わせるような、ユーザーの Web サイト内探究心を煽ることができているかどうか、を観測する必要がある。図4はそれらを示す指標の一覧性をもって検証できる KPI シートの例である。

一般的な Web 解析ツールである Google アナリティクスで取得可能な、ページビュー、訪問数、直帰率、平均滞在時間、新規訪問率、獲得成果といった、シンプルな指標と自然検索流入キーワードとランディングページを掛け合わせて集計し帳票化したものであるが、ここでは、ページビューを訪問回数で割った PV/訪問と、新規率を重視したグラフも併せて示している。

(図4)
(図4)

単純な入口→成果貢献の評価だけではなく、新規の訪問者をどれだけユーザーの Web サイトに対する探求行動(PV/訪問)を喚起できる訴求力を持っていたのか、成果に至るべき必要な誘導ができていたのかを、Web サイト内回遊アシストの観点で評価する(成果に至らぬ場合は回遊導線上のコンテンツを見直す)。広告による集客であっても、ランディングページがユーザー体験を訴求できるようなコンテンツでないと成果効率を最大化できない。プロモーション観点のランディングコンテンツの必要性は、ここでも垣間見ることができる。

一方、直帰率も気になる指標であろうが、検索ユーザーはさまざまな検索モチベーションを持っているため、関心がないユーザー層の直帰率を気にしだすときりがない。本来留まって欲しいはずのモチベーションについての検索キーワードに対象を絞り、改善をおこなうと良い。直帰に至ったとしても、後述のようにユーザーがブランドを認知して再来訪に結びついているかどうかがポイントである。

(図5)
(図5)

また、図5示すように、ページごとの閲覧開始数、訪問数、直帰数、離脱数、成果数(正確には閲覧による成果貢献数)を集計、訪問数から直帰数と離脱数を引いた数値を仮説的に「回遊数」とみなし、訪問数から閲覧開始数を引いた数を仮説的に「内部からの遷移数」とみなして計算する帳票を作れば、コンテンツ軸ごとのランディングページ能力、回遊促進と成果貢献を可視化できる管理シートとして運用できる。

・サイトブランドに対するユーザーの期待値

初回の訪問時に入口として触れたコンテンツが、回遊後にブランドを認知したうえで再訪問を獲得し、成果に貢献する場合も多い。次はコンテンツそのものがサイトブランドの認知を勝ち取り、成果をアシストする役割も可視化してみたい。

図6は Google アナリティクスの「マルチチャネル レポート」機能を使い、コンバージョン経路のプライマリディメンションに「参照元」、セカンダリディメンションに「ランディング ページの URL パス」を指定し集計したものである。
 
(図6)
(図6)

コンバージョン(成果)に至った履歴を自然検索流入のランディングページの起点に絞り、その後のノーリファラを(必ずしも直接流入とは限らないが)直接流入とみなすことで、ブランド認知シナリオの貢献度を示すことができる。

ただし、初回訪問時の検索流入キーワードとその他コンテンツの回遊傾向、2回目以降の訪問時の検索流入キーワードなど、さらに深堀りをしないと正確な成果シナリオは検証できず、かなり仮説や推論的なWeb解析であるものの、少なくとも成果シナリオの起点としての貢献は可視化できる。さらに、セカンダリディメンションに検索キーワードを指定した集計と併用すれば、おおよそのブランド認知に至るシナリオやランディングコンテンツとしての貢献度もより鮮明になってくる。

■コンテンツが本来もつユーザーへのブランド価値訴求力

筆者は2005年〜2010年の間、数億ページビュークラスのサイトを含む3つのメディアサイトの運営にたずさわっていた。ある Web サイトでは編集責任者として、ユーザーにとって価値があると信じるコンテンツシナリオ設計を行うと同時に、Web マスターとして制作コストの管理がつきまとい、やはり決済者への成果効率の証明は課題であった。そこで、なんとかコンテンツへの投資を決済者が許容できるよう、Web 解析による KPI 設計を詳細に行ない、コンテンツがユーザーにもたらすブランド価値を上記以外にもさまざまな手法で仮説立て、ブランド価値創造への予算投下を獲得することができた。

もちろん、いただいた予算の効果証明もさらに厳しいものであるが、良質なコンテンツを供給する価値をWeb解析で証明し続けることが、「真のユーザー体験の創造につながるコミュニケーション施策の実行権利を勝ち得る証明」であると考えれば、コンテンツ制作サイドのモチベーション向上にもつながる。

機会があれば、そのコンテンツによるユーザー体験が、成果を生む行動喚起に貢献している、というシナリオの可視化にも触れてみたい。

執筆:株式会社アイレップ Web 解析グループ SEO グループ グループマネージャー 床尾一法
記事提供:アイレップ