大規模サイトのSEO運用ノウハウ「問題発生を察知するための検索順位の見方」(前編)
 

「Google で検索順位が落ちるサイトは、何かやましい SEO を実施したからだ」
「優れたコンテンツを発信し続けている限り、ある日順位が突然落ちることなど決してない」…こんな認識をお持ちの SEO 担当者がいるかもしれないが、それは大きな勘違いである。

特に大規模サイト(以下、10万ページ以上のサイトを目安とする)であるほど、適切な SEO が継続運用されるように、企業全体や事業部単位で各種 SEO ガイドラインの策定および遵守ルール徹底をする一方で、リスクをきちんと認識し、早期に問題発見できるような体制を整えておくことが必要となる。

本稿では、比較的大きなサイト運用に携わる SEO 担当者を前提に、検索順位の変化から問題発生の検出と対策を素早く行えるようにするための助言を行う。前編(本記事)は大規模サイト故の SEO の課題について、後編(2月下旬を予定)では問題解決のために、比較的実践しやすい基本的な検索順位の見方について述べていく。

■ 大規模サイト故の検索順位下降リスクを認識する

日本有数のポータルサイトやショッピングモールの Web サイトを思い浮かべて欲しい。こうした Web サイトは、膨大で複雑な情報アーキテクチャ(IA)のもと、性質が異なる多種類のコンテンツを、様々なフォーマットで保有している。例えば、用語集やサービス紹介のような基本的に永続公開を前提としたコンテンツもあれば、3か月経過すると自動的に削除されるニュース記事もあろう。同じニュースカテゴリでも、永続公開のオリジナルニュースアーカイブもあれば他社にも配信される通信社のニュースもあり、先に述べたように一定期間経過後に削除される記事もある。ユーザーの感想や意見が書き込まれるスペースもあれば、ユーザー投稿クチコミもあり、それらは特定の情報アーキテクチャのもと、性質や属性が異なるコンテンツに紐付けられて掲載される。

こうした多岐にわたる性質・形式・情報を持つ Web ページが日増しに増加していくことは大規模サイトだからこそであるが、同時にまた、それ故に、予想外の検索順位下降という問題が発生することもある。

なぜ、大規模サイトで想定外の問題が発生することがあるのか。いくつか理由を挙げてみよう。

■ 理由1. 来訪者のことを第一に考えて行った施策の結果

「世間一般に流通する SEO の一般知識やノウハウは、大規模サイトには必ずしも当てはまらない」という大前提を、まず頭に入れておきたい。個人サイトを3年運営していました、という程度の SEO のスキルで、大規模サイトは決して運用できない。大規模サイトには通用しないセオリーは多々あるし、その規模故のノウハウが要求され、SEO の意思決定基準やプライオリティも異なる。

サイト運営者は、優れたユーザーエクスペリエンス(UX)を来訪者に提供するために、ナビゲーションやコンテンツ、レイアウトを設計する。例えば Yahoo! JAPAN や MSN といったポータルサイトを見るとわかる通り、1ページあたりに多数の情報を複雑なレイアウトに納めているが、複雑さゆえに、検索エンジンのアクセシビリティ(情報の読み取りやすさ、理解のしやすさ)を妨げる遠因となりうる。

「ちょっと待て、それは結局、正しい SEO ができていなかった、という話に過ぎないのではないか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれない。結果論としてはそうなるが、大規模サイトにおいてそれを事前に予想することは極めて難しい。

例えば、通販サイトのような主たるカテゴリにおいては、「大規模サイトの一般セオリー」のノウハウを有し、かつ運用経験がある優れた SEO の専門家であれば、事前に予測できる。しかし、先述した通り、大規模サイトには得てして、一般サイトには見られない構成や機能を有していることが必然的に多く、どの要素の組み合わせが問題を生み出すかは、実際のところサイト運用を継続しないと判断がつかないことが多い。

■ 理由2. 過去の遺産と SEO 運用ルールの欠如

大規模サイトは、複数のチームが、それぞれの担当コンテンツを独立して運用していることが多い。理想は、各チームが横断・連携して SEO を実施する、あるいは定期的に相互に情報を共有することで、協調したり相乗効果を生み出す共同 SEO キャンペーンを実施できる体制をとることが望ましいが、日本国内の企業でそうした取り組みができているところはまだ一部に限られている。むしろ、企業組織内の1つの事業部が SEO の重要性を認識して最近取り組み始めたか、異なる事業部がそれぞれ独立して全く異なる(一方は正攻法、他方はブラックハット)施策をしている事例を目にする。

さて、大規模サイトは、その Web サイトの大きさ(≒総ページ数)、コンテンツの豊富さ(≒総文字数)、時間経過により蓄積された全般的な権威性(General Authority:オーソリティ、ある分野における権威性)、評判性、信頼性といった Web サイト全体の総合評価は、小〜中規模な Web サイトよりも勝っていることが多い。それ故に、5、6年前であれば、SEO の実行が拙くとも、検索順位に及ぼす影響はそれほど大きくなかった。つまり、Web サイトの運用時間と規模という絶対評価が、芳しくないクローラビリティやアクセシビリティの問題を凌駕していたのであろう。

しかし、この5年の間に Google は進化して、より詳細に、適切に Web サイトの評価を行うようになった。General Authority は Topical Authority(特定領域や分野における対象サイトの権威性を表す指標。対義語は General Authority)、キーワード単位からページ単位の内容分析へ、そして段落分析へといった具合に進む分析深度、発/被リンクの詳細分析など挙げればキリがないが、要は単純に Web サイトの規模だけで SEO が解決するわけではなくなったということだ。

誰もが知る大手企業なのに、「サイト内コンテンツの統廃合でリダイレクトをしない」「URL 構造を頻繁に変更する」「ページごとに固有のタイトルタグを設定していない」「ソーシャルメディアで共有・情報拡散しやすい設計を導入していない」「コンテンツが空っぽのページを大量生産している」「アーカイブ記事を検索で発見できない」といった問題は、いずれも SEO においては基本中の基本の話であり、Web サイトの規模を問わず実施すべきセオリーである。

塵も積もれば山となる。1つ1つの小さなベストプラクティスの欠如が積み重なると、検索順位にも影響してくる。Web サイトの規模が大きい故に、影響範囲も多くなり、結果として検索トラフィックレポートを見ると、検索経由の来訪者数がある日突然、大幅に減少している、という自体に直面することとなる。

(後編に続く)

執筆:株式会社アイレップ 取締役 SEM総合研究所所長 渡辺隆広
記事提供:アイレップ