2014年 SEO 業界 予測と展望
 
■ 旧来型の外部リンク構築の時代は終わった

「SEO 終了のお知らせ」といったタイトルの記事を定期的に見かけるが、検索を通じた情報の発見性を高めるための Web サイト構築技術である SEO は今後も必要である。インターネットにおける情報探索のインフラ的な存在であり、ユーザーが必要な時に、必要な情報を、即座に探し出す手段としての検索は必要不可欠だ。

検索エンジンはより優れた検索結果を提示できるように検索技術を進化させていく一方、サイト運営者は自社が発信した情報を必要な人へと効果的・効率的に届ける手段として、検索エンジンの可読性(マシンリーダブル)や、Web サイトへと蓄積されていく信頼性や重要性といったデジタル資産の蓄積を意識していく必要がある。

さて、「SEO は終了しない」といったが、個別の施策については終了していくものがあるのは事実だ。旧来型の外部リンク構築施策は「終わった」と言っても言い過ぎではないだろう。

「旧来型」とは、数多くの Web サイトを作り、順位を上げたい目当ての Web サイトに向けてリンクを張る行為や、多数の Web サイトを協調・連携(シンジケーション化)させてリンク発信元として利用するといった行為、すなわち『リンクを設置できる場作り自体が目的になった外部リンク施策』のことだ。

本質的に、外部から張られるリンクとは自分で張るものではなく、他人が自然に張ってくれるものであり、金銭で購入するリンクや、リンク増幅目的のプラットフォームやシステムは今後、ますます廃れていくことだろう。

■ 外部リンクの構築ではなく、関係性の構築へ

SEO が向かう先は外部リンクの構築ではなく、関係性の構築だ。関係性の構築とは、自分自身の事業領域に関心を持つインターネットユーザーと交流し、理念や思想を理解・支持してもらい、関係性を深めていくこと。今日のインターネットにおいて企業が発信した情報を共有し、より多くの人たちに届けてくれるのは、ソーシャルの場にいる人たちだ。

一部の業者が販売しているフォロワー数やいいね数、リツイート数といった、見かけだけの影響力は一切不要だ。必要なものは、あなたの発信した情報にコメントしたり、共感したり、他の人にも共有してくれる、そんなユーザーとの絆を深めようとすることである。そうした関係性を構築していく過程で、自然なリンクは増えていくし、今日の SEO の世界で求められているものは、それをいかに自分の企業で実践させていくかである。

とはいえ、いきなり旧来型の外部リンク対策をバッサリと切り捨てることが現実的でないこともまた事実だ。米国では、数年の歳月をかけて、緩やかにコンテンツ提供と交流を通じた自然リンク獲得施策へ移行してきている。2014年は、日本企業の間でも、その移行が(今までリンク購入一辺倒だった)企業の間でも少しずつ始まっていくのではないだろうか。

■ Content is King - コンテンツマーケティング

ソーシャルの場にいるユーザーと交流し、関係性を構築していくためには、彼・彼女らにとって役立つコンテンツを継続的に発信していく必要がある。2013年は、日本の検索エンジンマーケティング(SEM)関連のブログやニュースメディアにおいても、SEO におけるコンテンツの重要性について言及されるようになった。

熱心に情報収集をしているウェブマーケティングの担当者も、コンテンツの重要性そのものは認識し始めたことだろう。2014年は、より多くの企業が、SEM の中にコンテンツの施策をどのように取り込んでいくのかを真剣に考えていくと同時に、こうしたコンテンツ戦略の企画や制作を支援する企業やサービスも増加していくことだろう。

Google が検索に SSL 暗号化を導入して、参照キーワードを全く閲覧できなくなったことも、キーワードレベルでの戦略立案から、コンテンツレベルの戦略立案を後押しすることになるはずだ。

■ ペンギンアップデート3.0? いや、もっと強化・進化するウェブスパム対策

Google のウェブスパム対策が年々強化・進化してきていることは、業界関係者の間では周知の事実だ。毎年の展望で必ず言及しているので、今更説明するまでもないとは思うが、重要なことでもあるので改めて述べよう。2014年は昨年より更に一歩進んだ対策をしてくることは間違いなく、そうしたブラックハットな SEO が正義だと勘違いしている企業は、ますます肩身が狭くなることだろう。

外部(スパム)リンク対策を例にとると、2013年は「シンジケーション型の低品質リンクネットワークを無効にした」と表現出来る。ディレクトリのネットワーク、プレスリリースのネットワークと、いずれも多数のサイトと協調してリンク発信源のためのネットワークとして稼働してきたが、Google のガイドライン違反指摘によりほぼ壊滅状態となり、一部の SEO 業者は事業から撤退をしたほどだ。

今年は、記事体広告(アドバトリアル)は厳しく対処されていくことが予想される。また、一部の団体が運営する、自然発生的なリンクを装ったポータルサイトのネットワークなど、昨年は Google から制裁を受けなかったリンクネットワークも、標的になっていくことだろう。

ペンギンアップデートは昨年 2.0 だった。今年も実施されたらペンギン 3.0 となる。しかし、パンダアップデートが通常の検索アルゴリズムに統合されたように、ペンギンも通常のアルゴリズムに統合される可能性もある。

■ スマートフォン対応サイトの検索ランキングアルゴリズム

昨年は Android 端末や iOS 端末では閲覧できない Flash コンテンツや、転送設定に致命的な誤りがあるサイトなど、ユーザー体験を損ないうる技術的な問題を抱えるサイトの検索順位を下降させる措置を発表した Google。同社はマルチスクリーン時代における検索順位決定のあり方において、試行錯誤を続けている。

「マルチスクリーン時代において、検索結果はどうあるべきか、何が理想形なのか」という明確なビジョンが描き切れておらず、まだ細かな仕様が定まっていないために、今後もサイト運営者は Google が発表する新仕様に、大慌てで対応を迫られる可能性は出てくるだろう。

急速に成長したマーケット故、Web サイトのマルチスクリーン対応もまちまちであり、こうした過渡期において Web サイトを(アルゴリズムで)どのように評価すべきかは数多くの課題があることは事実だ。それ故に、今年もスマートフォンのランキングシグナルに関する新しい発表や、マルチスクリーン対応をするための新たなアノテーションやタグが登場する可能性がある。

Web サイトも、検索トラフィック獲得の観点から、Flash や Silverlight ではなく HTML5 の活用が広がっていくことが予想される。

■ 信頼性を評価するシグナル:オーサーシップとオーサーランク

2013年は Google Authorship(オーサーシップ、著者情報)や AuthorRank(オーサーランク、著者の権威性に基づく順位付け)の議論が活発になされた年だった。信頼性を評価する上で、著者のプロファイルを使うことは合理的な発想であり、向こう3年以内に必ず、SEO を検討する上で大きな影響を及ぼす要素となるだろう。

今すぐに取り組むことで大きなメリットが享受できるものではない。しかし、今のうちに取り組んでおかなければ(始まった時に)手遅れになる公算が高いことも、また事実だ。なぜなら、「信頼」という要素は簡単に作ることができない指標だからだ。前半で関係性の構築の話に言及した通り、著者や Web サイトの信頼性を醸成する上でも、Google+ は大きなカギになるはずであり、少し先の未来を見据えて取り組むのであれば、2014年がその良い年になることだろう。

■ ナレッジグラフ

Google の検索技術の進化の観点から注目したい動きの1つは、ナレッジグラフだろう。特にカルーセル(Carousel)表示は、人物から映画、ローカル(地域情報)や自動車など、表示対象領域が拡大しており、検索需要が高い領域を中心に、今年も広がっていき、検索がより便利に進化していくことは間違いない。

ナレッジグラフの情報が充実してくると、音声検索による会話型(Google が音声で回答する)検索の利便性も高まってくるに違いない。SEO 担当者にとって基本的に特別な対処ができない機能ではあるが、検索の未来を考える上で、動向は押さえておきたい技術だ。

■ モバイル端末とローカル検索

日本は、市場規模の違いやインターネットマーケティングに全く取り組んでいない事業者が多い故に、あまり話題にならないものの、特に実店舗を持つ企業や事業者は、ローカル検索結果枠への取り組みの重要性を認識できる年になるかもしれない。米国で先行している Local Carousel(ローカルカルーセル)が日本でも導入されたり、Google+ ローカルページと検索サービスとの融合が進んでくることで、リアル店舗を持つ企業も、登録・運用・最適化の取り組みニーズが生まれると予想する。

そう遠くない未来に、検索サービスと Google+ の連携・融合が緩やかに進んでくるだろう、というのが、業界人の多くが同意するところだ。事実、米国内で Google で検索した時の検索結果は、日本で目にするものとは異なり、Google+ を意識せざるを得なくなるものになっている。この画面を目の当たりにする機会が極めて限られる日本において、この重要性は認識されづらいため、2014年にマーケットの需要が高まるとは考えづらいが、一足先に進んでいる米国の検索市場動向の1つとして捉えておきたい。

執筆:株式会社アイレップ 取締役 SEM 総合研究所所長 渡辺隆広
記事提供:アイレップ