本コラムは、これだけは知っておきたい中国の SEM 事情について、9回目の連載となる。スマートフォンやタブレットの普及で、日本でもようやく動画サービスが浸透してきた感があるが、アドテクノロジーの面で米国が一歩先を行っており、隣国の巨大市場、中国においても日本を上回るスピードでビジネスでの活用が進められ、メディアのマネタイズが本格化し始めている。今回は、このように変化している中国の動画市場について、マーケットから最新プロモーションの状況を分かりやすくまとめてみた。

■本格化する中国動画マーケット

2013年6月末時点で、中国のインターネット人口の総数は5億9,100万人といわれる。そのうち65.8%の約3億8,861万人が動画サイトを利用しており、今ではゲームや SNS を超えるユーザー数を誇っている。

市場規模としては、日本の2012年の動画配信規模の推定約1,016億円を上回り、中国の動画マーケットは2012年で前年比47.6%増の92.5億元(約1387.5億円 1元=15円換算)。さらに最新の2013年の第1四半期では、前年比39.5%増の24.2億元(約363億円)と、通年ベースでは100億元(約1,500億円)を超えてくると見込まれている。

これだけは知っておきたい中国 SEM 事情 Vol.9 <拡大する動画プロモーション>
図1-本年度100億元の大台突破が見込まれる中国オンライン動画市場

■多様化が進む動画メディア

ご存じの方も多いと思いうが、中国では YouTube やニコニコ動画など、海外著名動画サイトが中国グレートファイヤーウォールのアクセス制限の対象となっていることから、ガラパゴスに近い、独自の環境下でローカルサイトのみが急成長を遂げてきた。

特に成長過程では、著作権の課題を抱えながらも人気アニメや映画などが無料で見られる投稿型プラットフォームがマーケットを牽引し、その後、各地の暴動や隠蔽されそうになった鉄道事故など情報統制を打ち破り、真実を知るためのニュースツールとして幅広いユーザーの支持を得て成長してきた。

現在では、最大手2社の合併により誕生した巨大動画サイト「優酷土豆(YoukuTudou)」や、検索の百度(Baidu)が出資した「愛奇芸(Aiqiyi)」や「PPS」、そしてソフトバンクグループが出資した「PPTV」など、まさにレッドオーシャンと化している。

こうした熾烈な競争を勝ち抜くため、多くのユーザーを獲得した動画大手は、企業やテレビ番組とのタイアップや本編再生前のインストリーム広告、検索など広告メニューを整備するだけでなく、コメント枠を設けてソーシャル化したり、ゲーム、アプリの実況動画からダウンロードまでシームレスで繋ぐプラットフォームを構築したり、動画サイト内の企業ページから EC サイトに誘導したりと、急速に多様化とマネタイズを進めてきた。

図2
図2-中国大手動画サイト左から、優酷網(Youku)土豆網(Tudou)、愛奇芸(Aiqiyi)、PPTV

■一歩先を行く動画プロモーション

YouTube の視聴課金型 TrueView や、Facebook でも動画広告がローンチされるほか、米国では動画を DSP に乗せてリアルタイムで入札、配信管理ができる RTB も活用されはじめているが、中国においてもすでに様々なメディアで、ユニークな動画広告や動画を絡めたプロモーションが稼動し始めている。

検索大手の百度では、検索結果画面にリスティングのテキスト広告だけでなく、動画もクリック課金型で入稿、掲載できる VideoAD や、BIG ワード検索に連動したブランドマーク広告での動画配信がローンチされている。92dp.com という動画レビューサイトでは、ユーザーが企業から商品サンプルをもらい、そのレビューを動画で投稿するユニークなサービスも活用されている。

さらに、中国版ツイッターの新浪微博(SinaWeibo)では、新たに始まったユーザーのタイムライン内に配信する Feed 広告で動画フォーマットもサポートし、新浪動画や他の動画サイトにアップされたコンテンツを拡散することができるようになった。

こうした中国独自のサービスは、ブランディングやリテンションなど、目的に応じて配信メニューや動画ストーリーを使い分けることで費用対効果をより高めることができるため、サービスを横断的に熟知した担当者やパートナーと連携して進めることをお勧めしたい。

特にブランディングが課題だった日本企業の海外戦略にとって、言葉の壁を超え、ユーザーにイメージや理念を伝えやすい動画プロモーションの活用は、知名度を一気に高める効果が期待でき、失地回復のチャンス到来とも考えられるだろう。


図3
図3-百度のブランドマーク動画配信、92dp.comの動画レビュー、微博(Weibo)のFeed広告

出典:CNNIC「第32次中国互換網発展状況統計報告
iResearch「中国在線視頻行業監測季度報告簡版
DCAJ「一般財団法人デジタルコンテンツ協会

執筆:株式会社アイレップ グローバルビジネス本部グローバルマーケティンググループ 熊倉淳
記事提供:アイレップ