前回「自然検索流入の KPI 指標とユーザーモチベーションに沿ったコンテンツ設計(前編)」において、自然検索流入の KPI 設計について述べたが、後編ではオンライン広告と自然検索流入の連携から見るユーザー行動仮説について触れてみたい。

自然検索流入の KPI 指標とユーザーモチベーションに沿ったコンテンツ設計(後編)
(図1)

■広告配信によって呼び起こされるユーザー行動

オンライン広告は、運用手法や掲載面の違いなどで様ざまな種類があるが、概ね図2のような「商材やライフスタイル提案の認知⇒調査行動の喚起⇒商材の絞り込み⇒消費の背中押し」と、それぞれのユーザー行動のステージに応じた訴求や配信の設計をすることが一般的であると思われる。

(図2)
(図2)

これら「狙い」ごとの広告による成果獲得状況は、各広告の訴求内容、サービスの優位性、差別化ポイントとクリエイティブ、広告が掲載されるメディア面、配信方法との相関関係を中心に効果の分析が行われることだろう。

その際、前編でも述べたように、その広告におけるページビュー(PV)÷訪問回数=PV/訪問を観測することも奨めたい。狙いのユーザー層への広告による提案が響き、サイト内の回遊行動の喚起が実現できたかどうか、直帰率や滞在時間と同様にユーザーの興味の深度を「簡易的に」比較することができる。次回の広告施策では、クリエイティブや訴求面での設計に役立つことだろう。

そして、成果獲得の分析と同じく重要なのが、プロモーション予算を投下したあとのユーザー行動の分析、広告施策後のユーザーの再訪問の状況と、その後の間接的な成果獲得に至る道筋の可視化である。

仮に広告経由の訪問で直接的な成果獲得が想定ほど見込まれなかったキャンペーンであったとしても、Cookie に広告コードを保持した再訪問数やリピート率が他の施策の再訪問よりも高かった場合は、その広告の入口となったページ(ランディングページ)や到達したコンテンツ情報が、ユーザーに再訪したいと思わせ、サービスに対する関心を高めた効果を検証できる。

この場合、再訪問の経路は、検索エンジンからの自然検索による流入であるケースも多い。広告で商材やサービスを認知したユーザーは、一度の気付きや提案だけでサービスの利用に至るとは限らない。ユーザーは自分のライフスタイルにあったサービスや情報を求め、Web 検索で回遊し、広告で一度来たことのある Web サイトに、意識せず再度訪問することが頻繁にある。

■広告と自然検索流入が連続した訪問履歴に見るユーザー行動仮説と戦略

Web サイトのアクセス解析ツールに Google アナリティクスを利用している場合、成果に至ったユーザーが Web サイトを訪問した履歴を時系列で観測できる「マルチチャネルレポート」を活用すると、広告から成果に至った勝ちシナリオの再訪問状況を観測できる。(図3)

(図3)
(図3)

残念ながら無限に履歴を取得するわけではないため、成果に至らなかった集客の「負けシナリオ」が計測できないという欠点があるものの(負けの定義を「○○履歴まで」あるいは後述の「履歴の組み合わせ」で限定する手法もある)、参照元やランディングページ、流入キーワードなど、履歴に表示する指標を可変させて観測することができる。

図3は参照元となるドメインと検索キーワードを掛けあわせた集計例だが、表示したい履歴の指標(プライマリディメンション)と、掛けあわせたい指標(セカンダリディメンション)を併せてダウンロードし、表計算ソフトで合成すれば、間接効果の直感的な観測やユーザーシナリオごとの収益性の可視化も容易である。

では可視化をした後、広告をきっかけとした行動と自然検索流入の関係をどのように分析すればよいのか?

(図4)
(図4)

図4は、成果に至るまでによく見られる履歴の組み合わせを示したものである。履歴Aは非指名キーワード検索(ブランド名称を指名しない調査目的の検索)のリスティング広告で初回訪問し、ブランド指名による再訪問を獲得するに至ったが、最終的には非指名の自然検索で成果を獲得したケース。履歴Bは履歴Aと同様だが、最終的な成果はディスプレイ広告で成果を獲得したケース。履歴Cは非指名検索のリスティング広告の初回訪問から、提供サービス名称の認知と成果を獲得したケース。履歴Dはディスプレイ広告でサービス認知を得たが、非指名の自然検索による多数の再訪問を繰り返した後、ブランド指名で成果を獲得したケース。履歴Eは提供するサービス名称検索のリスティング広告で初回訪問し、その後は数度の非指名の自然検索で成果を獲得したケース。これら例には、施策上の課題がそれぞれ見受けられる。

例えば、履歴Cで言えば、リスティング広告によるサービス名称認知のアシスト効果が見られるものの、ブランド指名による再訪問ではないため、ランディングページや訴求の内容に課題があったのではないかと考えることもできる。

より具体的に例えると、オークション落札代行サービスサイトが履歴Cで『カメラ 中古』の検索によるリスティング広告、『オークション落札代行サービス』の自然検索による訪問2回で成果を獲得していたとする。

ユーザーは「中古カメラを探していたら広告でオークション落札代行サービスという存在を知った」⇒「では他に『代行サービス』は?」という検索によって「以前広告クリックで来たことがある Web サイト」のサービスの利用に至った形となる。記憶に残るアシスト効果はあったにせよ、Web サイトのブランドを指名して利用した訳ではない。

また、履歴Aや履歴Bの場合、早期の訪問でブランド指名の自然検索流入やブックマークなどの直接的な流入を獲得していながら、非指名検索の再訪問やディスプレイ広告での再想起で成果を得ている。ユーザーの行動を仮説立てると「利用したいサービスにはブランド認知済みのサイトでは満たされない(もっと良い Web サイトがあるはずだ)が、結局は再び訪問し利用した」という、ブランド想起力や信頼の獲得、競合との競争力に課題があると考えられる。
 
(図5)
(図5)

これら個別のケースから考えられるユーザー行動の分析は、図5に示すように、コンテンツ構成や商品レコメンド機能など、Web サイトの機能や構造的側面の改善、施策の拡張に役立つ。

履歴Aは、自社サイトで取り扱っている商材ラインアップとユーザーの認識している商材ラインアップに“ズレ”があり、解消する必要があるのではないか? 履歴Bは利用に至るユーザーの背中押しをブランド指名獲得の段階で実現できなかったのか? 履歴Cはブランド固定化で次の利用を促進できないのか? 履歴Dは競合との比較状態を早期に解決するサービス差別化提案が必要ではないのか? 履歴Eは履歴Cの延長線上にあり、繰り返し利用がありつつも、いつまでもブランドを認知されない状態を解消する必要があるのではないか?

理想的には、ここからさらに間接効果による広告運用コストの最適化まで行うべき、となるだろう。しかし、そこまでいかなくとも、ユーザー行動の顕在化した自然検索流入キーワードを中心に訪問履歴の前後を追い、自社サイトで扱う商材やサービスの利用に至るユーザーの選考プロセスと、成果に至った訪問履歴を照らし合わせることで、おおまかな Web サイト改善目標の洗い出しに役立つ。

自社サイトの理想的な勝ちパターン履歴の解析は、コスト面でも直接的な成果獲得の効果測定ほどの分かりやすさはない。だが、ユーザーのブランド想起力で競合に勝るためには、数値目標と並行し、勝ちだが効率的とは言えない(あるいは負けパターンの)成果シナリオを理想的な勝ちパターンへと磨き上げる状態の定性的な目標を示す必要もある。

ユーザーと Web サイトの理想的な対話のために、「コンテンツ施策」「ランディングページ設計」「広告の運用拡張」などの戦略設計で、各施策の担当者へ数値にとらわれない「ユーザーのための」定性的な目標による役割分担を提示すれば、担当組織間で集客拡大に向けた共通の目的意識を持つ効果も期待できる。

■「Google アナリティクス リマーケティング」活用のすすめ

最後に、これらのユーザーの訪問履歴と Web サイト内での行動を連携させた施策を具現化したといってもいい、Google アナリティクス リマーケティング機能を紹介したい。
 
(図6)
(図6)

ポピュラーなユーザーターゲティング広告である Google AdWords のリマーケティング広告は、ご存知の通り Web サイトに訪れたことのあるユーザーに狙いを定め、訪問履歴に応じて Google ディスプレイネットワークへ広告を配信し、再度の訪問やサービス利用の継続を促進する広告である。図6のように、想定したユーザーのページ閲覧シナリオに合わせてリマーケティング専用のタグを設置し、ユーザーのリストを収集して広告を配信する。

一方、2012年に実装された「Google アナリティクス リマーケティング」機能は、AdWords のアカウントと紐付けることで、Google アナリティクスによって計測されたアクセス解析数値を元に、詳細なユーザー行動とセグメントに応じたリマーケティングリストの作成を可能としている。
 
(図7)
(図7)

例えば図7のように、「自然検索の商品名Aで訪問、1週間以内に3回再訪問し、購入フローで離脱したユーザー」と、トラフィック数値と Web サイト内の遷移データを元とした、詳細なセグメント設計に対しリストを作成し、配信対象と訴求内容を細かく設計できる。

(図8)
(図8)

図8の例のように、トラフィック計測できる様ざまな指標を際限なく掛け合わせることができるが、もちろん細かく設計すればするほどユーザーリストの数は少なくなり、管理するリマーケティング広告の運用数が増えれば工数も肥大化してしまう。効率の良いリスト収集を設計するには、先述の理想的な勝ちパターンとそれに近いシナリオのパターンが、トラフィック計測数値を元にどこまで仮説立てられるかが鍵となる。

繰り返しになるが、ユーザーが商材やサービスに関心を持ってから消費に至るプロセスは、必ずしも1度の訪問によるコンテンツ回遊だけで到達するものではない。本当に自分が利用すべきサービスなのか? 今必要な商材なのか? 競合となるサービスと比較検討しながら Web 上で回遊を続ける。サービス選考途中のユーザー回遊を競合に先んじて押さえるには、自然検索流入で観測されるキーワードから垣間見えるユーザーの心理、そしてその前後の訪問状況にも着目したい。

「またここに来れば新しい発見(在庫、情報)があるかも?」というユーザーの期待値を満たすためには、SEO 施策、コンテンツ施策、広告施策の連携が必要になる。検索キーワードごとの最適なランディングページの選定と設計、再度訪問したくなるコンテンツや情報の網羅性、ユーザーの行動をより成果に近くショートカットさせる広告運用の組み合わせで Web 回遊への先手を打てば、ブランドの記憶と「あの Web サイトで」という想起の育成を狙うことができる。

執筆:株式会社アイレップ Web 解析グループ グループマネージャー 床尾一法
記事提供:アイレップ