前回「集客施策のユーザーコミュニケーションシナリオに沿った KPI 設計」で、文末に「Web 解析の KPI シートは、ビジネスモデルを俯瞰しつつ全体戦略に沿った施策要件を整理、ユーザーの流入状況(⇒集客施策の狙い)、回遊状況(⇒コンテンツ施策の狙い)、成果状況(⇒各施策の目論見達成状況)を一元的に可視化できるレポーティングが望ましい」という点に触れた。

自然検索流入の KPI 指標とユーザーモチベーションに沿ったコンテンツ設計(前編)
図1

同時に、Web 解析は「数値を見える化」し、Web サイトとユーザーがつながる糸を紡ぎだす「手法」でもある。ページビューや訪問者数といった指標単独での絶対量やピーク数値の観測にとどまらず、データという事実と仮説の合わせ技でユーザー行動の物語を読み解き、ユーザーシナリオを可視化することで、成果獲得拡大を実現する次なる施策のイマジネーションを加速させるための手法ともいえる。

今回はそれらを分解して解説し、検索エンジンでキーワード検索してユーザーが来訪する「自然検索流入」の KPI 設計の一例と、自然検索流入数を拡大させるコンテンツ戦略のシナリオ可視化について触れたい。

自然検索流入数を拡大させる SEO 施策の KPI 設計では、特定の検索キーワードにおける自社 Web サイトの検索結果表示順位、あるいはそれら検索キーワードからの流入数(または訪問数)と成果獲得数が一般的な指標となる。

それらに加え、「検索キーワードのグルーピング(属性分け)ごとの流入数」「キーワードバリエーション数(網羅性)」「ランディングページからのユーザー回遊度合い」を併せて計測する簡単な KPI 設計の例を紹介する。

■自然検索流入キーワードの属性グループ

まず、Web 解析で計測される自然検索流入キーワード群を、検索連動型広告(リスティング広告)の運用現場で行われるキーワードグルーピングのように、ユーザーの欲求する情報に応じた属性でグループ分けを行ってみる。例えば「○○ 価格」「△△口コミ」といった、メインの商材名×比較調査のグループ、または「デジカメ 選び方」「旅行 カメラ」といった悩みの相談や知識を求める調査系のグループなど、運営する Web サイトのビジネスモデルと訴求要素に合わせて設計すると良いだろう。

Web 解析で行う自然検索流入キーワードグループは、広告の入札や予算を考慮する必要がないので、検索連動広告とは比べ物にならないぐらいシンプルなグループ設計で十分である。ただ、いわゆる「ビッグキーワード」と呼ばれるような、検索市場でクエリ数が巨大で競合サイトとの戦いが激しいキーワード群の流入状況の観測は、広告と同じく重要なポイントだ。検索連動広告の運用に倣ってこのビッグキーワードをグループで定義し、関連検索の流入をどれだけ獲得できているかで、Web サイトの集客状況が大きく異なる。

■検索ユーザーのニーズ単位に応じた流入獲得状況の把握

図2は、それぞれのユーザー行動のステージに応じて設計した検索キーワードグループに狙いを定め、それぞれの検索ユーザーが流入した際のニーズ、あるいはモチベーションに応じたコンテンツのラインナップがなされているか、SEO として適切な内部施策が行われているかの観測例を示したものである。

図2
図2

Web 解析ツールで自然検索経由訪問のキーワードを抽出し、それらを各グループのごとに訪問数とツール上で計測された検索キーワードバリエーション数を観測対象とする。そのグループごとのバリエーション数が示す「幅の広がり」度合いは、コンテンツによる内部施策に対して示唆に富んだ有効な KPI となる。

■どの検索ユーザーニーズの「面」で集客を獲得しているのか

キーワードをグループ別に集計する目的は、単体のキーワードの流入獲得で一喜一憂するのではなく、いかにユーザーの情報ニーズの属性全体で流入を獲得しているのかを可視化するためである。キーワードのバリエーション数は、そのグループの検索ユーザー獲得幅の目安となる。

加えて、単体のキーワードにフォーカスしてしまうと、競合サイトがひしめき、激戦区となっているものも非常に多い。もちろん SEO 施策を行うからには、検索結果表示順位で1位表示の獲得を目指すのだが、その分野は SEO 担当ディレクターに任せ、Web 解析の担当者としては、狙いのキーワードと同じモチベーションの関連キーワード群で、いかに流入を獲得しているのかを可視化する必要がある。

Web 解析が Web サイトとユーザーとの対話の最適化となる材料を提供することで、ユーザーの気持ちに応えるコンテンツづくりに注力し、ひいては獲得したユーザーを自社サイトのサービス利用に誘導できるのかをアシストする必要がある。

■獲得できているユーザーの検索「面」を観測する KPI

さて、あるユーザーモチベーション属性を示すキーワードグループで、検索流入キーワードのバリエーション数が増加したとする。その数値は該当する検索モチベーションを持つユーザーの集客幅が広がったことを示し、さらに流入数(訪問数)÷バリエーション数(以下「流入数/KW」)は、1キーワードあたりの集客能力を示す。この「流入数/KW」は、検索市場における対象キーワードの検索クエリ数が変動したり、あるいは計測対象の Web サイトの検索結果表示順位が変動すれば、必然的に検索結果画面上でのユーザークリック流入数も変化し、影響を受ける。

つまり、キーワードバリエーション数も「流入/KW」も上昇という状態は、各検索キーワードでの検索結果表示順位も上昇し、検索結果にインデックスされる面積も拡大しているという理想的な状態といえる。逆に、キーワードバリエーション数が減少し、「流入数/KW」の値も下降という状態の場合は、特定の検索キーワード群における自社 Web サイトの検索結果表示順位の低下、あるいは検索結果に自社 Web サイトがインデックスすらされてない状態が発生しているという可能性を示唆している。

一方、キーワードバリエーション数が増えて「流入数/KW」の値が下がった場合、それが決して悪い状況だとは限らない。観測対象となるキーワードのグループが、ユーザーの情報嗜好ごとに細分化されやすいものである場合、細分化され広がった多数の検索キーワード群に対して接触する面積が広がり、検索ユーザーが流入する機会が増えることで、1キーワードあたりの集客依存度が下がる=「流入数/KW」の値が下がるという状態を示している可能性が高い。

例えば「クルマ 選び方」という流入キーワードがあった場合、自然検索流入の集客を増加させる SEO 施策を行い、コンテンツの充実によって検索キーワードの対策範囲が適切に広げれば、「クルマ 選び方 性能」「クルマ 選び方 馬力」「クルマ 選び方 コツ」……と、検索クエリ数が絞りこまれた、流入母数の少ないキーワードの流入獲得バリエーション数も増加し、相対的に「流入数/KW」は下降する。

また、インターネット上の何かしらのトレンド、マスメディアの影響やソーシャルメデイアによる急激な伝播をきっかけに、ユーザーの検索するキーワードが一気に細かく分散した状態とも考えられるが、これらはキーワードトレンドを把握できる Google のサービスが充実しているので、現象の発見と検証は容易であろう。

このように、「流入/KW」という割り算は、検索エンジンにおける検索結果表示順位とはまた違った、流入数(訪問数)を基準とする SEO 施策の「集客の幅の広がり度合い」を示す KPI であるといえる。

■ユーザーシナリオとコンテンツシナリオの連動性

それら自然検索流入キーワードのバリエーションを広く獲得するための SEO 施策の一つに、コンテンツラインナップの拡張整備がある。ただし、SEO 施策のためだけのコンテンツ施策に意識が向かいすぎると、ユーザーの行動目的に反した Web サイトになってしまうというケースも考えられる。Web 解析の担当者は、流入するユーザーのモチベーションや動きを把握し、検索ニーズに応えることができる有効な情報の網羅性と、回遊しやすいユーザビリティが確保されているかを示唆できる状態を作る必要がある。

すなわちコンテンツに対する興味や関心を示す指標、ページビュー(以下 PV)÷訪問(平均 PV)、滞在時間、ユーザーのページ遷移を追うパス解析、コンテンツやディレクトリ単位の直帰率(ユーザーが来訪してすぐに立ち去る確率)、離脱率(ユーザーが最後に閲覧して去る確率)の観測である。

ただし、これら Web サイト内の回遊性を示す指標にこだわり過ぎると、直帰率や離脱率を改善したいがための施策に特化し、今度は Web 解析の指標発信による過度な施策自体が、ユーザーのモチベーションを低下させかねない。

図3
図3

図3で示すように、ユーザーが商材やサービスに関心を持ってから利用に至るプロセスは、必ずしも1度の訪問によるコンテンツ回遊だけで到達するものではない。本当に自分が利用すべきサービスなのか、今必要なサービスなのか、競合となるサービスと比較検討したり、口コミの情報を取得しながらネット上で回遊を続ける。となれば、直帰率や離脱率が高い状態、低いページ遷移率を受け入れて、次の訪問を促すための「またここに来れば新しい発見(在庫)があるかも?」という、ユーザーの行動シナリオに沿って Web サイト体験やブランドの記憶を育成するコンテンツ展開や、再訪問シナリオのモチベーションに沿ったクリエイティブ訴求へ特化するという方法もある。

検索キーワードのグルーピングと同様に、並列して流入経路の入口となるコンテンツの属性や訴求の要素を位置づけ、「商材の優位性」「競合とのサービス差別化」などコンテンツの訴求属性区分を厳密に定義し、それらコンテンツの流入経路別あるいは検索キーワードのモチベーショングループ別に新規訪問と再訪問、それぞれの PV/訪問や滞在時間、回遊と離脱の状況を並列して把握すれば、ユーザーの関心が高い情報、サービス利用に至る決断に必要としている情報網羅性の仮説が立てやすい。

検索ユーザーのニーズにマッチした情報を網羅したコンテンツを定義し、これまで述べた KPI を元にコンテンツを改善するサイクルを構築できれば、自ずとユーザーが必要とする情報を備えた優良なコンテンツに近づくことになる。優良なコンテンツは検索エンジンの評価も連動しやすくなり、SEO 施策の効果とユーザビリティを兼ねた両輪の改善サイクルへと進化していくことだろう。

■広告経由の流入と自然検索流入のユーザーシナリオ

図4
図4

今回は自然検索エンジンからの流入の計測について述べたが、次回は広告流入と自然検索流入のユーザーシナリオの連続性、Google アナリティクスのマルチチャネルレポートに代表される訪問履歴の取得、間接効果について述べたい。

執筆:株式会社アイレップ Web 解析グループ グループマネージャー 床尾一法
記事提供:アイレップ