映像と音声による効果は人の感性を動かす上で最も効果的である。テレビドラマを見て感動したり、はたまたテレビ CM を見てその商品に興味を持ち、探しにいった経験を誰もが持っていると思う。ではそのような映像をみなさんはどこで見ているだろうか。

自宅にいればテレビはもちろん、PC、スマートフォンといった動画を見られるデバイスに触れており、移動中でもスマートフォンやタブレット端末を持ち歩き、動画を閲覧できる時間や環境は圧倒的に増えてきている。

実際に、スマートフォンで音楽と動画サービスを利用している人へ行った調査によると、スマートフォンに動画アプリをダウンロードする理由のうち「家や外出先、移動中に簡単に動画が見られるから」が52%と半数を超える調査結果も出ており(※1)、動画を移動先や移動中で見るという行動がスマートフォンの普及につれて当たり前のようになってきていることがわかる。

これは、動画をいつでもどこでも視聴できるユーザー主導の視聴行動となっているということだ。動画コンテンツがさらに普及し、かつ、多様な側面で利用されていくのは確実だろう。その状況下における「動画広告」はインターネット広告において、非常に大きな可能性を感じる。

今までの動画と呼ばれるものは、ある特定の場所で特定の時間でないと見られないものだった。例えば、自宅に帰って20時からテレビを見るといった行動や、六本木の TOHO シネマズで19時40分からの映画を見る、などがあげられる。動画広告は人が集まる場所や時間帯を考慮した上で出稿することにより、広告到達単価が安くなり、結果的にコストパフォーマンスがよくなる傾向があるが、その出稿額は高額なものになるため、出稿に対して二の足を踏んでいる広告主も多いだろう。

それが今や、スマートフォンやタブレット端末で好きな場所で好きな時間に好きな番組を好きなだけ見られるというユーザーの行動に対して、小額の予算でコアなユーザーのみを狙った広告としてインターネット動画広告の配信が可能となり、出稿方法によってはインターネット動画広告のみで AIDMA を形成できる可能性を持っている。

今までの動画広告はどちらかと言うと、ユーザーに商品やサービスを注目してもらう「Attention」のプロセスに寄与していたと思われる。

だが、インターネット動画広告においては、1st-party Cookie(※2)や 3rd-party Cookie(※3)データを使うことにより、体感、共感してもらうユーザーへのクリエイティブや、再訪問してもらうためのクリエイティブを出し分けることが可能である。実際はスタティック(静的)バナーでも行っていたことだが、それをインターネット動画広告でアプローチすることでマーケティングの幅が広がることを意味する。

例えば、ダイエット器具の広告主がバナークリエイティブでスリムになったことを表現するために、タイトなスカートをはいている女性の画像を使用していたとする。その広告を見たユーザーがタイトなスカートに興味を持って流入した場合、ダイエット器具の広告と気づくのはサイトに訪問した時になる。それに気付いたユーザーの多くは、恐らくすぐにサイトを離れるだろう。ユーザーがこの広告主に対して「紛らわしい広告を出す企業」と思ってしまったら、ネガティブな印象を与えてしまい、企業イメージのダウンにも繋がりかねない。

一方、動画バナーで表現した場合、ダイエット器具を使った結果、タイトなスカートがはけるようになった一連の状態を表現できる。そのため誤認してサイトに訪問するユーザーもおらず、ネガティブな印象を与えずに済むので、企業イメージやブランドイメージを保つことができるであろう。つまりインターネット動画広告を見て興味をもって訪問したユーザーであれば、広告主にとってはロイヤリティの高いユーザーとなりうる。

また、第三者配信サーバーを組み合わせれば、動画広告を見たユーザーがその後にどのような検索行動をしたのか、あるいは再訪問したのか等のデータを取ることができる。

それにより、確実にその動画広告を見たユーザーの行動が可視化でき、詳細な分析も可能となる。それゆえ、ターゲットユーザーのペルソナ分析(※4)も可能となり、新たなクリエイティブ、ターゲティング施策を練ることも可能であろう。

例えば、インターネット動画広告を見たユーザーの検索行動レポートを見て、その中にリスティング広告で入札していないキーワードを発見した場合、そのキーワードを検索したユーザーの属性や趣味趣向を参考に、今まで出稿したことのないカテゴリへの広告配信が可能となる。

これは、広告主にとっての新しいマーケティングの場所となり、市場の開拓へもつながることとなる。仮に、飲料メーカーの広告主がダイエットをしたい人をターゲットとする燃焼系飲料水の動画広告を第三者配信サーバーを使って実施し、閲覧ユーザーの中で「ダンス」や「筋トレ」などのキーワードの検索行動があったとする。これらのキーワードを当初想定していなかった場合、この動画広告が新しいターゲットを創出したと考えられる。

日本において、「インターネット動画広告へ今後取り組みたい」などの課題を抱える企業がまだまだ多い中、米国ではすでにテレビ CM の広告費が積極的インターネット動画広告に流れきている。米国 eMarketer が昨年2月に発表した市場予測(※5)によると、動画広告のシェア予測は2012年7.9%から2016年は15%、成長率にすると5年で18.9%まで成長するとまで予測されている。そのような情勢のため、日本でもインターネット動画広告が今後伸長していく、ということが予想できるだろう。

冒頭で紹介したとおり、インターネット上の動画コンテンツというのは、時間や場所を選ばすに視聴できるサービスということが特徴である。そのため、広告主や代理店も「配信時間」「配信内容」「掲載場所」「クリエイティブ構成」といったそれぞれの要素を掛け合わせてアプローチしていき、ユーザーの新たな気付きを刺激する事にチャレンジしていけば、企業のビジネス拡大に貢献できるだろう。

※1:2012年7月 楽天リサーチ調べ(音楽・動画に関する調査)

※2:1st-party Cookie:
メールログイン時に入力するWebサイトのセッション情報、または EC サイトにおけるカートの中身の情報等、ユーザーがアクセスしたWebサイトが直接読み書きし、ユーザーごとに識別するために保存している Cookie。

※3:3rd-party Cookie:
通常のCookieは、ユーザーがアクセスしたサーバーとユーザーが使用したブラウザ間で情報を送受信されるのに対して、3rd-party Cookieは、第三者となるサーバー上にあるファイルから呼び出されている第三者のサーバー上のコンテンツより、ブラウザに対して送られるCookie。

※4:ペルソナ分析
仮想のユーザー像を詳細に設定してプロフィールを作成し、ユーザー像への理解を深めてマーケティング方針を統一する手法。

※5:2012年2月3日 米国 eMarketer 発表

執筆:株式会社アイレップ 第一サービスマネジメント本部 矢田彰仁
記事提供:アイレップ