ベネッセコーポレーションは、同社が展開している通信講座『進研ゼミ 中学講座』の2013年4月号の副教材として、オリジナル学習用タブレット端末「チャレンジ タブレット」を導入する。

同社は、1960年代から児童・生徒向け通信教育で業界をリードするトップ企業。教育のプロフェッショナルが考案したタブレット端末はどのようなものなのだろうか。そして、同社が考える子どもの教育におけるデジタル端末の在り方とはどのようなものなのだろうか。同社にて実機をレビューさせていただくと共に、株式会社ベネッセコーポレーション 中学生事業部 部長補佐 兼 戦略商品・基盤ユニットリーダーの谷杉 貞季氏と、同じく中学生事業部 営業開発セクション 課長の宮木 良治氏にお話を伺った。

左から、株式会社ベネッセコーポレーション 中学生事業部の谷杉 貞季氏と宮木 良治氏
左から、株式会社ベネッセコーポレーション 中学生事業部の谷杉 貞季氏と宮木 良治氏

●中学生の学習シーンを考え、デザインから全てベネッセが開発

この「チャレンジ タブレット」は、ハードウェアデザインから全てベネッセが企画・開発を手掛けたという。液晶サイズは7インチで、端末を立てても寝かせても違和感なく使えるよう背面にはスタンドが付いているのが特徴だ。
 
「進研ゼミ 中学講座」の副教材となる「チャレンジ タブレット」
「進研ゼミ 中学講座」の副教材となる「チャレンジ タブレット」

背面にはスタンドがついており、中学生が見やすい角度を実現する
背面にはスタンドがついており、中学生が見やすい角度を実現する

宮木氏によると、このデザインについては、子どもが学習の際に使いやすい角度などを実際に中学生の身体的な特徴や部屋、机のデザインなどの統計から設計したという。「中学生の学習時間の使いやすさを徹底的にこだわった。立てれば動画コンテンツの閲覧が快適にでき、寝かせればテキストの傍らで見やすい角度で使用できる」(宮木氏)。

動画コンテンツの視聴などを想定してタブレットを立てた状態
動画コンテンツの視聴などを想定してタブレットを立てた状態

テキストの傍らに置くことを想定して、寝かせても見やすい角度が付くようになっている
テキストの傍らに置くことを想定して、寝かせても見やすい角度が付くようになっている

ちなみに、このタブレット端末は背面にスタンドがあるお蔭で手に持って視聴するには少々不便に感じるデザインとなっている。ただ、これはこのタブレット端末が「机の上で使うこと」に最適化されたデザインを追求しているからだという。「このタブレットは、テキストの傍らにあることを想定している。モバイル性を損なっても、机の上でどう使うかを徹底的にこだわり、デザインした」と宮木氏は語る。

ところで、ベネッセはなぜ副教材としてタブレット端末の導入を決めたのだろうか。

宮木氏によると、同社は2008年からインターネット学習コンテンツの展開を行っているが、リビングなどに据え置かれていることが多い家庭のパソコンでは、起動に時間が掛かったり、家族の目が気になったりなど、中学生の「今すぐ知りたい」というニーズに応えられないという課題があったという。そこで、より勉強中の中学生のそばに情報端末を用意することにより、彼らの学ぶ意欲に応えようと考えたのだ。「無線 LAN環境が家庭に整ってきたことも背景のひとつ。中学生のいる家庭の半数は無線 LAN が整備されており、タブレットが活用できる環境が整ってきたことも大きい」(宮木氏)。

●学習はあくまでテキストで タブレットは学習を手助けする存在に

次に、「チャレンジ タブレット」を通じて提供される学習コンテンツについて伺った。

宮木氏は、「進研ゼミ 中学講座」における「チャレンジ タブレット」の位置づけについて、「タブレット単体で利用するのではなく、テキストとの併用を前提にしている」と説明する。「チャレンジ タブレット」を通じて実現したいのは、"教育のデジタル化"ではない。「学習は、あくまで本人が紙のテキストを読んで、自分の手で答えを書きながら行うことが大切だ」と宮木氏。その学習をサポートする存在として「チャレンジ タブレット」を活用してもらおうと考えているのだ。

そのひとつが、「動く!答えの本」というコンテンツ。これは、英・国・数・理・社の5教科について、各テキストに即した内容で、疑問やつまずきが起きやすいポイントを動画によって解説。生徒がテキストで学習している際に感じたわかりにくさを放置することなく、疑問を解決しながら学習を進めることができる。また一方、生徒の中で苦手意識を持ちやすい数学に関しては、週に1度「ライブ授業」を実施。授業を視聴するだけでなく、その場で回答に参加することも可能で、学習意欲の向上が期待できる。長期休み期間には5教科すべてで特別講座を予定しているのだという。

テキストの解説を動画で視聴できる「動く!答えの本」
テキストの解説を動画で視聴できる「動く!答えの本」

このほか、受講生の学習状況を把握する担当コーチが受講者に直接メッセージを送る「メッセージサービス」も用意しており、受講生の学習状況を踏まえた適切なアドバイスが届いたり、受講生を励ますメッセージが届く仕組みとなっている。もちろん、タブレットならではの機能として進研ゼミの辞書なども用意し、電子辞書として活用することもできる。

担当コーチから受講生にアドバイスやメッセージが届く
担当コーチから受講生にアドバイスやメッセージが届く

●「チャレンジ タブレット」を通じて、人の温かみを伝えたい

これらのコンテンツを視聴していて気が付くのは、通信講座でありながら多くの"先生の存在"を感じることができるということ。これは、この「チャレンジ タブレット」開発の狙いでもあるのだという。

「テキストと1対1で向き合う中学生の学習時間に先生の姿を見せることで、彼らの学習をより豊かなものにしたいと考えた。デジタルコンテンツではなく、人を介して伝えるコンテンツにこだわり、彼らの学習の習慣づけやモチベーションの向上をサポートしていきたい」と宮木氏。テキストに向かってひとりで学習する中学生にまるで"傍らに家庭教師がいる"というシチュエーションを提供することで、人の温かみを伝えようと考えたのだ。

「私たちは、毎月1度受講生にテキストを送るだけでなく、よりきめ細かなサポートがしたいと以前から考えていた。受講生は、このタブレットを学習するときの"私だけのパートナー"にできる。タブレット端末を通じて受講生とベネッセがつながることで、進研ゼミが"赤ペン先生"の時代から貫いてきた"先生が教えてくれる通信講座"という理念がより具現化したと感じている」(谷杉氏)。

ちなみに、保護者の中にはインターネットにつながるデジタルデバイスを教育に活用することに消極的な意見もあったのではないだろうか。宮木氏は、「実際に、保護者からは不安の声もあった」としながら、「だから独自端末を開発した。パスワードロックや利用時間の制限、インターネット視聴のフィルタリングなど、子どものタブレット利用を管理できる機能を搭載している」と説明する。あくまでも学習用デバイスとして安心して子どもに使わせることができるよう設計されているのだ。

●人の力で子どものやる気を引き出すことが、教育の役割


最後に、谷杉氏にこれからの子どもの教育に求められているものをどう受け止めているか、そしてベネッセが様々な学習コンテンツを通じてどのような価値を提供していきたいかを伺った。

谷杉氏によると、いま教育に求められているのは「子どもをやる気にさせること」なのだという。子どもたちの中には、いろいろな"やる気の種"がある。ただ、その種を育てるきっかけがなければ子どもたちの学習意欲は高まらない。同社は、それを各講座のテキストやタブレットを通じて提供するコンテンツを通じて実現しようとしているのだ。

「人のやる気を引き出せるのは、人。テキスト教材やタブレットはそのためのツールにすぎず、ベネッセの各スタッフが子どものやる気や成長意欲を引き出し、"自立自習型"の子どもを育てるためにどれだけの努力ができるかが重要だと考えている。学習するのも、夢を叶えるのも、最終的には本人の力だ。子どもが夢に向けて努力したいと思う気持ちをサポートするのが、私たちの役割だ」(谷杉氏)。