学校教育の現場において、Twitter や Facebook などのソーシャルメディアをどのような形で活用できるか。

現在東京都内で開催中の「Social Media Week 2013」で2月19日に行われたセッション「教育におけるソーシャルメディアのリスクとリターン」において、西武学園文理高等学校の教諭と現役の高校生が登壇し、学校教育の現場におけるソーシャルメディアの可能性について様々なアイディアを発表した。

現役高校生が考える教育現場でのソーシャルメディア活用法とは―Social Media Week 2013
ソーシャルメディアの可能性についてアイディアを発表する西武学園文理高等学校の生徒

本来、学校教育の仕組みや理想は学校や行政など“大人”が考えるもの。だが今回は、あえて生徒自身に考えさせるという意欲的な試みとなり、生徒たちからは、「連絡・交流」「共有」「見える化」「学習」などを目的とし、ソーシャルメディアならではの特長を活かした活用案が紹介された。

■なぜ、生徒自身にアイディアを考案させたのか

西武学園文理高等学校教諭の加藤潤氏がセッションの冒頭で紹介した、高校生の携帯電話およびソーシャルメディア利用に関する実態調査(埼玉県内の私立高校2年生100名を対象に実施)の結果によると、スマートフォンを所持する割合は約6割。スマ―トフォンのメリットとして「手軽に Twitter や Facebook、LINE で友人とやり取りでき、手放せない」との意見が挙がったという。

また、9割以上がソーシャルメディアを利用していると回答。利用の多いソーシャルメディアは、YouTube や LINE、Twitter、ニコニコ動画、Facebook、mixi などで、Facebook をよく利用するという高校生からは「(実名制による)リスクはあると思うが、友人の違う側面や近況を知ることができて楽しい」との声も。利用に大きなメリットを感じているようだ。

 
「利用しているソーシャルメディア」を聞いたところ、 上位から YouTube、LINE、Twitter、ニコニコ動画、Facebook、mixi などが挙がった
「利用しているソーシャルメディア」を聞いたところ、
上位から YouTube、LINE、Twitter、ニコニコ動画、Facebook、mixi などが挙がった

一方で、教育現場ではスマートフォンやタブレット端末などスマートデバイスを導入するケースが増加傾向にあるが、ソーシャルメディアに関しては、利用に対するリスクの観点などから制限が多く、教育現場での活用が進んでいないのが現状だという。

このようにソーシャルメディアは、生徒の間で利用が浸透しているのに対し、教育現場では活用できていないのが現状だ。今回の取り組みの狙いは、ソーシャルメディアの利点とリスクを実感している生徒からアイディアを引き出し、今後の教育現場での活用のヒントを模索することにある。

■「連絡・交流」「共有」「見える化」「学習」などを目的とした活用

今回の発表に向けて、西武学園文理高等学校の生徒らは「教育現場においてソーシャルメディアはどのように活用できるか」というテーマでグループ研究を実施。そこで生まれたアイディアをグループごとに発表した。

生徒らから発表されたアイディアは、「連絡・交流」「共有」「見える化」「学習」と大きく分けることができる。

「連絡・交流」としては、「グループ管理による一括連絡をする」「(LINE などで連絡を回し)生徒の既読/未読状況を把握する」ことで学校から生徒への連絡時の効率を向上しようとの意見や、「卒業生や他の学年、他の部活の人などとコミュニケーションを取る」ことで、直接的な友人の輪を超えた、幅広い交流の実現に着目した活用法を提案。また、「教員が授業内容の関連情報(動画など)を補足する」「部活で撮影した写真や動画をメンバー間でチェックし、練習に活かす」など、クラス単位、部活単位でグループに属する全員がリアルタイムに同じ情報を「共有」することで、授業や部活を充実させようという意見も挙がった。

「教職員会議の見える化」や「学校運営の透明化」など、生徒が普段見ることができない“大人”の現場の様子を撮影した動画を、ソーシャルメディアに投稿し「見える化」してほしいとの声も。さらに外部からは伺えない学校のありのままの姿を、ソーシャルメディアを通じてオープンにしていくことで、学校の PR にもなるのではという大人顔負けの意見も飛び出していた。

「学習」では、「授業などの Q&A をアーカイブ化し振り返りに活用する」「教員とオンラインでコミュニケーションを取り、課題提出や進路相談をする」など。また、その場で共有された動画教材を即時に閲覧できるため、視聴覚教室に移動するなどの時間の無駄を省き、授業内容を濃くできるとの指摘もあり、生徒も学校の授業時間でいかに効率よく学習できるかという“生産性”を意識している様子が垣間見えた。

そのほか、印象的だったのは「スマートデバイスやソーシャルメディアで学校運営や授業の全てを完結してしまっては、通信制高校と変わらない」というある生徒の意見。つまり、スマートデバイスやソーシャルメディアは、それだけで学習を完結させるのではなく、教室の授業をより充実させるための “補助ツール”として活用することが理想だという考えだ。これは、リアルとデジタルそれぞれの価値の違いを踏まえた、鋭い指摘だと言えるだろう。

日常的にソーシャルメディアを楽しんでいる生徒らが真剣に考えた様々なアイディアは、大人ではなかなか思いつかない斬新なものばかりで、会場に集まった人々も、熱心に耳を傾けていた。また、生徒らが生み出したアイディアから教育現場における様々な課題が見えてきたことは、学校関係者にとっても有益なものとなったはずだ。

今後は、生徒らの意見を生かした研究が進み、教育現場での実践に繋がることを期待したい。