1月8日、中国における通信事業を管轄している工業情報化部が MVNO 事業に関するパブリックコメントを募集し、ついに中国における MVNO が本格的に始まるだろうとの観測が広まっています。このパブリックコメントの募集は2月6日で締め切られているため、3月の全人代の全体会議(第12期全国人民代表大会第1回全体会議)後となる4月から5月には当局の具体的な動きが見える可能性が出てきました。

今回のパブリックコメントの募集では、中国が MVNO 事業の試行を推し進めることの布石としてそのプロセスと期間まで言及しており、「2年間の試行期間を設けること」、「少なくとも通信事業者はそれぞれ2社以上の試行事業者との協力関係を持つこと」など、実際の通達の際に具体的な条文になるだろうと想定される文言も含まれています。

中国の MVNO 事業の開放は、これまでこれを推し進めたい立場である蘇寧電器(SUNING)、国美電器(GOME)といった家電量販店や、中国最大の携帯電話販売店である逓信通といった民間企業と、市場での独占的な立場の維持や携帯電話料金のコントロールをしたい立場である3つの通信事業者(中国電信、中国聯通、中国移動)とのバランスで決着がつかないままでした。

通信事業者の立場からすれば、市場が順調に拡大している間は、あえて安い料金で MVNO 事業者に対して回線を卸す必要性は薄く、積極的になる理由はありません。一方、大量の携帯電話を販売する立場からすれば、自社で携帯電話料金の設定ができる MVNO 事業は魅力的で、自社の販売力をもとに安定的な収益源とすることが期待できます。

さらに、日本のように NTT ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスといった複数の通信事業者の競争環境下では、いち早く投資した通信設備の投資回収を行おうとする際に MVNO 事業者の販売力は魅力的です。しかし中国ではこれら3社は 3G のシェアにおいてほぼ均衡しており、かついずれも国の管理を受ける立場であることから、「抜け駆け」する存在もいませんでした。

その上で、ここにきて MVNO 事業を認める動きが出てきたことにはいくつかの背景があると見られます。一点目は、3G の普及率が携帯電話の総契約数の2割を超え、かつスマートフォン化も急速に進む中、それでも残る 2G の約8億の契約数を 3G に持っていくためには、騰訊(Tencent)や百度(Baidu)、捜狐(SOHU)など、スマートフォン向けのアプリやコンテンツ、サービスを持っている企業を MVNO 事業者として巻き込むことが得策であるとの思惑が想像されます。

二点目は、携帯電話の販売窓口となる家電量販店などにとって、より販売を推し進めるインセンティブになるよう仕向ける動きです。高すぎもせず安すぎもしない卸価格で回線料金をコントロールできれば、通信事業者にとって不都合は無いでしょう。

三点目は、LTE の準備状況です。2013年中に LTE のライセンスが通信事業者に対して認められることになるとの観測がありますが、世界で遅れをとっている LTE の普及を早く軌道に乗せるためにも、MVNO による初速の確保が期待できそうです。

執筆:株式会社クララオンライン 家本賢太郎
記事提供:株式会社クララオンライン