●顧客が知りたいことを探す

このコラムは、前回の“「雑誌編集者」視点で考えるコンテンツ戦略〜SEO とコンテンツマーケティング(前編)”の続きとなる。まだご覧になられていない方がいたら、先に目を通していただけると幸いである。

後編となる本稿では、いま検索マーケティング、とりわけ SEO の世界で求められる「コンテンツ」について、具体的な顧客のニーズの探し方について解説をしたい。よく相談者より「何を書いたらいいのか」と質問を受けるのであるが、これは外部の人間にとってピンポイントで回答するのは容易ではない。当然ながら正解はないわけで、商品やサービスの性質や特性によって、書くべき内容は異なるからだ。本稿では、目の付けどころを学ぶためのヒントとして、いくつか定番の方法論と、私のやり方もあわせて紹介したい。

●専門書や雑誌の「目次」を見る(旬な商品の場合)


もし皆さんが取り扱っている商品やサービスが旬なもの、テレビ番組の特集などで紹介・言及されるような商材であるならば、とりあえず近所のコンビニや書店などに足を運んで、雑誌コーナーに並んでいる雑誌に一通り目を通して、該当商材を扱っている記事を探す、という方法がある。一通りの雑誌を手にとって、その目次を見て、商材に関連する記事があるかどうかを探して、各誌がどんな切り口で言及しているのかを把握しよう。大抵の雑誌は、プロの編集者が時間をかけて記事を書いているはずで、読者が知りたそうな物事にフォーカスして書いていることが多いので、複数の雑誌が共通して言及している話があれば、それは顧客が知りたい事柄である可能性がある。

また、この方法は、実際に当該商品に興味関心のあるユーザーが検索する時に利用するであろうキーワード(やその組み合わせ)、それぞれのインテントをあらかじめ予想することも可能である。なぜなら、人が検索する時に入力する言葉(クエリ)は、過去に経験・接触した言語によって規定される。たとえば、仮にある新商品 A が登場した時に、その製造元メーカーが YYY という名称を用いていても、メディアがそれを紹介する時に ZZZ という言葉を多用していると、生活者はそれを検索する時に ZZZ という言葉を使う傾向が強いことがわかっている(2008〜2010年 SEM 総合研究所調べ)。

また、ある商材が口コミで拡散してそれが検索にも反映された場合、それぞれの検索利用者が検索時に使用する言葉は、その話をした友だちや知人が会話時に使用した言葉によって決定される(同調べ)。従って、あるメディアによって紹介されたことで検索数が増えている時に、その検索を誘発したメディアを特定できれば、検索の背景にあるインテント(意図)もより精緻に特定できるようになるため、それに適合したクリエイティブやランディングページを用意すれば成果を高めることも可能である。

すこし話が脱線してしまったので話を戻すと、雑誌や書籍でその話題について他の人がどんな風に編集しているかを知ることは、自分が何を書くべきかを考える上での参考になる、ということである。

●図書館で関連する書籍を探す(一般)

先の話と共通するが、図書館で関連商材のことに言及している書籍、雑誌や新聞記事を探すのも良い。その領域の専門家が書いた書籍であれば、きっと普通の人は知らないけれど、それに触れた読者は価値があると感じるような事柄に言及していることもあろう。「よくわかる」系や「上手に○○○する」系の書籍があれば、あまり的外れな(読者が無関心な)項目立てはしないので、どこがコンテンツとして面白いのかある程度は絞り込めるはずだ。

上記2つの方法はいずれも「他の人のコンテンツを真似ろ」という話ではなく、言及しているポイントから「読者が知りたがっているであろうこと」を考える上で、参考にするための方法であるので注意してほしい。

また、「上記の方法は、Google でキーワード検索してサイトをピックアップするだけでいいのでは?」と思われる方もいるかもしれないが、書籍や雑誌という体裁で発行される以上は無駄な情報は排除されている(そうじゃないケースもあるが)ことが多いので、今回の「コンテンツの切り口のヒントを探る」という目的であれば、実は Web で検索するより書籍と雑誌で絞り込んだ方が短時間で済む。

●Web 解析で、リファラ―数の少ないキーワード情報を見る

Web 解析のレポート画面で、検索時に利用したキーワード(参照キーワード)情報が閲覧できる。このレポートの、参照数が少ない方のキーワードは、検索者が知りたいことを考えるヒントになる場合がある(※最近は Google 検索の SSL 暗号化により参照できないキーワード数が増加してしまったので、以前ほど活用できる方法ではないことを予めお断りしておく)。

なぜ流入数が少ない方のキーワードを見るかというと、少ない方のキーワードは3〜7語程度の多数のキーワードの組み合わせで訪問しているケースがあり、そうした組み合わせキーワードは意図が想像しやすいことと、その意図は得てして皆さんが意思決定をする時に悩んでいる事柄かもしれないことがあるからだ。たとえば、6語で検索してくるユーザーは、きっとどうしてもある事柄について知りたかったのだろう。でも、その数を入れるということは、普通のキーワードでは探しきれなかったコンテンツかもしれない(検索リテラシが非常に高くてピンポイントで情報探索しているケースもある)。だから、そうしたキーワードから検索意図を想定し、それに該当するコンテンツが競合他社にないのであれば、それを用意する価値はあるかもしれない。

●Q&A サイトを見る (Yahoo! 知恵袋、OKWave、はてな、など)

これは定番中の定番の方法で、もし知らない方がいるのであれば是非参考にしていただきたい。Yahoo! 知恵袋や OKWave(MSN 相談箱や教えて! goo)などには、ユーザーからの質問と回答が詰まっている。ここで、自社が扱う商材のキーワードで検索して、皆さんが何を質問しているのかを探していけば、自分が何のコンテンツを自社サイトで用意しておくべきかわかるはずだ。ここで質問している人は、いくつかの EC サイトを回ったけれどよくわからなくて質問をしたに違いないのだから、それは EC サイト内で解決できるように回答となるコンテンツを提示してあげることは、Web サイトとして果たすべき役割の1つだろう。

●商材に関連するフォーラム(掲示板)を見る

その商材について集う掲示板やフォーラムなどを覗くというのも1つの方法だ。中には濃い議論をしているような場所もあるが、こうした場で目を通すと、皆さんが知りたがっているであろうヒントはつかめるはずだ。

●検索クエリ=質問に対して回答=コンテンツを提示できる Web サイトを

以上、コンテンツ作りを始めるための、ヒントを得るための方法論について紹介してきた。ある程度の商材は、上記の方法のいずれかの組み合わせによって、おおよそ「自社に足りないコンテンツ」は探せるのではないだろうか。相談者の話をよくよく聞いていて私が感じることは、皆さんがその業界で働いており、その商品について詳しすぎるが故に、本来知りたい事柄が、「当たり前の情報」と思い込んでしまっているためにコンテンツの切り口がわからない人が多いように思う。たとえば自分が全く興味関心のない商品を今から購入して来いと言われてあれこれ調べ始めたら、絶対にわからないことの1つや2つは出てくるはずであり、それは皆さん自身が扱っている商品についても同じである。業界の人間だから身近で当たり前だけれど、きっと外から見ればわからないことだらけである。だから、意思決定の時に絶対に必要な情報だけれど、わからないこと」は何なのかをよく探っていけばよいのだ。

検索エンジンというのは、ユーザーが投げた質問(検索クエリ)に対して、回答を返すサービスでもある。サイト運営者は、その質問に対する適切な回答を用意して、検索エンジンを通じてその質問者に渡す意識で取り組んでいけば、適切な回答を得られる検索者も、来訪を促せるサイト運営者も、そして検索サービス事業者も皆がハッピーとなる。SEO というのは検索エンジンと戯れるゲームではなくて、世の中の検索利用者、サイト運営者、検索エンジン会社それぞれが幸せになるには、サイト運営者として何をすることが良いのか、という姿勢で考えてもらえれば、このパンダアップデートの話に限らず、上手く検索エンジンとつきあっていけるはずだ。

執筆:株式会社アイレップ 取締役 SEM 総合研究所所長 渡辺隆広
記事提供:アイレップ